グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
ロンドン(過去)
「こ・・・ここがロンドンだと!?」
レティシアは大きな声をあげ、
何度も周りを見る。
「・・・あ! エリザベス・タワーがない!」
「それどころか、道も舗装されていない。
ビルもない・・・! だが、そこの川は確かに
テムズ川だ・・・。」
なるほど、だからか・・・。
「卿らは・・・このような景色を見てきたのだな・・・
裏世界か・・・。」
「町並みからして、ロンドン大火の後、
産業革命以前。すなわち・・・17世紀後期から
18世紀初期なのは間違いない。」
「ふふふ・・・もっと時代を狭められるわよ。」
「なんじゃと・・・ん? あれは・・・。」
アイラは目を細める。
「まっ・・・まさかあれは・・・!」
何かを見つけたアイラは
空を飛んで見に行く。
「・・・あら・・・誰かに見られたら
どうするつもりかしら。気持ちはわかるけどね。」
「朱鷺坂、ちょっといいか。」
「あら、ロウ君。どうかした?」
「ここが17世紀のロンドンっていうなら、
俺らの恰好、変に目立つんじゃないか?」
「ああ・・・確かに。まだミストファイバーも
見つかってないし・・・。私の幻覚魔法でみんなの
服をこの時代に合わせちゃいましょうか。」
にこりと笑う。
「ああ、頼む。」
「えっと・・・君はまた、女の子がいい?」
「全力で拒否する。」
「にしても、ロンドンだってよ、ここ・・・。
この前来たばっかだぜ?」
「全然違うじゃん。地面は土だし、なんか
すっごい閑散としてるし。ブティックも
スイーツショップも全然見えないし!」
「1700年って言ってただろ? そんなの
あるのか? ・・・にしても、すげー静かだな。
昔のロンドンって田舎だったのか?」
律の言葉通り、人の姿が見えない。
「きっと早朝だからだと思うわ~。太陽が顔を
出したばかりなのね~。これから賑やかになる
はずよ~。」
「・・・ホントだ。だからちょっと寒いのか。」
「で? うちらここで、何すれば言いわけ?
調査っていっても、街中だし。うち英語
わかんないよ?」
「あたしだってわかんねーよ。なんか、
できることはなさそうだな・・・・・ん?」
律は遠くにうごめく何かを見つける。
「・・・お、おい、あれ・・・まさか・・・。」
「ちょ、ちょっと、変な脅かし方しないでよ!」
「脅かしてなんかいねーよ! 後ろ、後ろ見ろ!」
「ヤダ! 絶対見ないからね!」
「・・・! あれは・・・魔物か!」
ロウは刀を構える。
「あらあら・・・とりあえず、倒してから
後の考えましょう?」
「だな。『ROOM』!」
青色のサークルを作る。
「『
突きによって、魔物を攻撃する。
魔物は倒れ、すぐに霧散する。
「なんだ、弱いじゃんか・・・。」
「ほ、ホント! ビビって損したじゃん!」
「・・・街中だからかしら? それとも・・・」
「過去だからだ。」
レティシアとエミリアがロウたちに近づく。
「ここが過去、それも貴嬢らのいうように
1700年ならば・・・いや・・・魔物が
出るのなら1723年以降だろうな。納得だ。」
「納得・・・って、どういうこと?」
「今では第1次侵攻と呼ばれる、最初の魔物の大発生。
我らがいるのは、その第1次侵攻直後の時代という
ことになる。」
「日本で江戸に魔物が発生したように、イギリスは
ロンドンが襲われました。まだ魔法使いも少ない時期。
多くの人が犠牲になったと聞いています。」
「なるほど。どうりで人が少ないわけだ。」
ロウは周りを見る。
「ここまでいないのは、ミス・エビナの言う通り、
早朝だからもある。」
「イギリスでは、第1次侵攻後に一時的だけ
治安が悪化しました。ですから、人々はしばらく
夜間の外出をやめ・・・明かりも落とし、完全に
太陽が昇るまで外に出ませんでした。」
「そういうことですか~。魔物が弱いのは
出現直後だからですね~。」
「・・・・・? だめだ、わかんねぇ。」
律は頭を抱える。
「ちょ・・・常識でしょ!?」
「ったく・・・昔は魔物は弱かったんだ。
だが時間が経つにつれてだんだん強くなるんだよ。」
「・・・あー! なんか聞いたことある!」
「授業でやったじゃん!」
なんで俺の方が知ってんだよ・・・。
「・・・そういうことです。ですから、魔物の
心配はしなくていいですね。それよりも・・・
私たちの目的です。私とレティはイギリスだから。
でも東雲さんと朱鷺坂さんが指名されたのは・・・?」
「・・・あら、お帰りなさい。」
どこかへ飛んでいたアイラが
戻ってきていた。
「・・・くそ、見えたわ。宍戸め、知っていて
黙っておったな。言われずとも、今回の目的が
わかってしもうたわ。」
「念のためだけど・・・何を見たか、
教えてくれる?」
「再建されたセント・ポール大聖堂じゃ。わずかに
風化が見られたゆえ、もう少し経っておる。魔物が
現れたのは1723年。であるからそれ以降の
どこかじゃ。・・・それに1つ確かなことがあるわ。」
「宍戸さんが、私たちを選んだ理由。」
「ああ。奴は星の位置で年代を計ったはず。とすれば、
おそらく1727年より後ということはあるまい。」
「私たちがここに来るなら、関係の深い人物が
生きているはずだから。」
「「・・・つまり」」
「ここロンドンに、アイザックがおる。」
アイラとチトセはさっきの
話をロウたちに話した。
「・・・サー・・・」
「アイザック・・・」
「ニュートン?」
「って誰だ?」
「ええ!? ウソでしょ!?」
さすがにな・・・。
「重力の概念を唱えた物理学者だ。リンゴが
どうたらって、聞いたことあるだろ?」
「あ! リンゴが落ちるのを見て、ユリイカって
なったやつか!」
手をパンとたたく。
「ちょっと・・・ちょっとだけ違うと思うわ~。
あらあら~。じゃあ、アイラちゃんが言ってた
アイザックって、本当にニュートンのことだったのね~。」
「いまさら!? 前に言ったじゃろ!?」
「今までの言動じゃ、ギャグに思われても
仕方ねぇな。おばあ。」
「だらがおばあじゃ!! ・・・まあ、とにかく。」
「今のところ、私と東雲さんにはアイザック以外の
手がかりがないわ。彼は魔法使いでもあった。
今が何年にしろ、覚醒しているはずよ。探しに
行こうと思うのだけど、ほかに何か探すべきものは
あるかしら?」
「いや・・・さすがに思い当たらないな。だが、
ニュートンを探してどうする? まだこの時代は
魔法も魔物も生まれたばかりだ。我らの役に立つ
重大な事実が明らかになるとは思えないが。」
「・・・会いたいんだろ、お前ら。」
「・・・・・。」
図星なのか、チトセは黙る。
「東雲さんは、『アイザックと約束した』って
言ってました。約束を果たすために300年
戦い続けてきたって。・・・だから、ですよね?」
「ええ・・・本当は会うべきではないかもしれない。
もしかすると、私たちは『あい』に会ってしまうかも
知れないしね。」
「・・・え? あいって・・・。」
「ふふ・・・でも、会いたいの。あとハミルトンさん、
あなたは1つ間違っているわ。」
「なに?」
「アイザックか規格外よ。彼が何かを発見するのに、
時代は関係ない。私は彼に会ったら私の『今の知識』を
渡そうと思ってる。長い間、戦い、検討し、収集した
知識を得れば・・・アイザックは奇跡を起こす。」
「・・・・・。」
「・・・でも・・・それは賭けよね。
もしかしたら・・・歴史が変わるかも・・・・。」