グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
アイザックの提案により
ロウたちは歩きながら、自分たちの
ことを説明した。
「では、お前たちはもう1つの世界から
やってきて・・・2つの世界がゲートという
不可思議な代物で繋がっているというのかね。」
「ああ。」
「到底信じられることではない。魔法の腕前は
卓越していると見えるがな。」
「じゃよな! お主の言う通りじゃな!」
アイラはうれしそうな顔を見せる。
「・・・あなたね・・・。」
「アイザックの言うことじゃぞ。間違っている
はずがあるか。」
「少し頭冷やせ。ったく・・・ブルームフィールド。
お前が来い。」
「あ、あたしあたし! あたしがいい!」
律が勢い良く手を上げる。
「アンタもうちも英語わかんないでしょ。
何しゃべってるかわかった?」
「ハートでわかるぜ!」
「黙って魔物退治。」
「私がアイザック・ニュートンとお話しを・・・!?
よ、よろしくお願いします!」
丁寧に頭を下げる。
「私を知っておるのかね。どうやらイギリス人の
ようだが。よくわからん言葉遣いだ。老いぼれには
つらいな。」
「彼女は300年も後の魔法使いよ。私たちの
英語の方が古いの。」
「そうかね。町娘の使う流行語と同じように
聞こえるがね。」
「・・・私たちのことを信じてもらうには
どうしようかしら?」
「こ、これはどうですか?」
そう言って、デバイスを取り出す。
「なんだね、これは。」
「これはデバイス・・・携帯電話といって・・・」
「ダメよ。まだ電話すら生まれていないのだから。
10年程度ならともかく、昔過ぎて理解できないわ。」
「ふん。理解できないときたか。だが・・・これは
わからんな。宝石か? 何かの役に立つのかね。」
デバイスを様々な角度から見る。
「これを使えば、世界中の文献を読むことが
でき・・・遠くの人と話ができます。」
「・・・この板でか? 仕組みは?」
「え、し、仕組み・・・? ええと・・・」
答えられない質問にエミリアは慌てる。
「こっちじゃあ、仕組みを知らなくても
それらを扱える。」
「キカイ・・・これは歯車で動いているのか。」
「歯車細工のもっともっと高度なものよ。
中を見てもわからないわ。」
「ふん。魔法みたいなものだろう・・・別に、
お前たちが未来から来たとか・・・そういうのは
どうでもいいのだ。大事なのは幻の魔法を使えることだ。
その術式はどのようにして見つけた?」
「私たちの時代では命令式と呼ぶわ・・・ある程度、
手順が確立されている。その起源はあなたの作った
数式よ。『キミアの方程式』。」
「おお、キミア・・・! ・・・なぜお前が
キミアの方程式を知っている? あれはこれから
私が作る予定のものだ。まだアイデアしかないというのに。」
驚いた表情で見る。
「これで、未来から来たと信じてくれる?」
「キミアの方程式・・・歴史の授業で聞いたこと
あるな・・・。確か、ニュートンが作ったとされる
最初の命令式の見つけ方・・・。」
「もうキミアの方程式は使われていないわ。
古いからね。いくつもの改良が施された、
精度の高いものを使用しているの。」
「・・・らしいことを言う。私の作る方程式は
まだ穴だらけだろう。万有引力と同じように
時間とともに先へと追い抜かれてしまうのだな。」
アイザックは自嘲気味に笑う。
「・・・キミアは錬金術をあくまで科学の分野と
みなす知の概念。それがなければ、魔法を科学とみなす
魔導科学も、またなかったわ。あなたの研究は
生き続けている。万有引力も微積分もスペクトルも・・・
あなたの偉業は私たちの時代に欠かせないものになっている。」
「待て。」
アイラがチトセの話を止める。
「お主もアイザックをほめるだけになっておるではないか。
頭を冷やしてきたぞ。我らの目的は同じじゃろうが。
後は任せておけ。」
「ふふ・・・・ええ。」
「・・・アイザックよ。妾は、もしやと
思っているのじゃ。」
「いかなることを考えている。」
「もしや知っていることをすべて話せば・・・お主が
終わらせてくれるやもとな。魔物の駆逐も、妾に
かかっている魔法の解き方も・・・なにもかも。
全て終わるのではないかと。」
「馬鹿を言うな。この歳まで生きて、ほんのわずかだ。
大いなる自然の、ほんのわずかな部分を理解したに
すぎん。世間で何と言われているか知らんが、
わたしは老いぼれ魔法使いだ。」
「・・・その老いぼれ魔法使いに問いたい。
霧とはなんぞや。」
アイラはアイザックの目をじっと見る。
「霧、とは化け物が生まれる前の状態でよいのかね。」
「ああ。まだ化け物じゃったか。さよう。化け物が
生まれる前の状態。濃度が濃くなれば紫色から
黒に染まる・・・霧じゃ。」
「なるほど、的確な名前だ。自然現象とかぶるのは
いただけないが。お前たちの話が本当なら、
300年後も正体がわかっていないのか。」
「・・・じゃよ。」
そのころ
「・・・ニュートンに会っても、話が
できねーんじゃなー。英語、勉強してみよっかな。」
「あんた、意外と早く覚えられそうでイヤだ。」
「あらあら・・・千佳さんも勉強してみれば
いいのに。」
「そんなことする暇があるなら彼氏探すし。
・・・・・ん?」
少しずつ地面が震え始める。
「・・・あれ? なんか・・・・・・。」
「お前たち! 戦闘態勢をとれ!」
慌てた様子のレティシアがやってくる。
「私たちは見当違いをしていた! 住民が
夜に出歩かないのは・・・今が第1次侵攻の
最中だからだ!」
「・・・だい・・・・」
「いちじ・・・・・」
「・・・・侵攻?」
そして、その魔物はロウたちのもとにも
現れていた。
「出たか・・・化け物め。今日もまた懲りずに
大地の底より湧き出すか。」
「・・・なに、この量・・・これはまるで・・・。」
「ニュートン、今年は何年だ!」
「年が明け、1724年になったところだ。」
「な!?」
「なんですって!?」
アイラとチトセはそれぞれ驚く。
「どうした、なにを知っている・・・?」
「・・・せ、1723年末から1724年初頭は
第1次、侵攻が起きた時期です・・・。」
「第・・・1次・・・・?」
「少年! レティシアのところへ行け!
あやつが最も魔力を消費しておる!」
「ああ。『ROOM』!」
青色のサークルを広範囲に張り、
ロウは一瞬で姿を消す。
「アイザック! なぜこんな時期に、1人で
のこのこと出歩いておるのじゃ! 魔物が
弱いとはいえ、まだ魔法使いも未熟じゃ!
下手すると死ぬではないか!」
「私は魔法使いだ。化け物に尋常の武器は効果が
薄い。魔法が有効なのだから、魔法使いが戦うのは
当然だろう。それに・・・魔法使いが未熟だと
言うではないか。ならばこれはできるかね。」
指をパチンと鳴らすと
地面に巨大な魔法陣が描かれる。
そこにいた魔物は動きを止める。
「すべての魔物の動きが・・・まさか、
こんな大規模な?」
「わ、妾と研究を重ねる前から、このような
技術を持っておったのか・・・。おのれ、
アイザックめ。妖方じゃった妾のメンツを
つぶさないように黙っていたか。」
「魔法で糸を作り出し、魔物をがんじがらめにした。
魔法陣はあらかじめ描いておくことで、範囲を
明確にできる。さあ、今なら女子供でも簡単に
化け物を殺せる。頼んだぞ。」
「くっ。魔物の退治が先か・・・。」
動きが止まっている魔物に
次々と攻撃を浴びせる。
「・・・いや、私のような老いぼれでも
戦えるのだ。魔法使いに性別も年齢もないのだな。
これで、世界は大きく変わるだろう。・・・遥か
先から来た人間・・・・か・・・。」