グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
校門前
「センパイ、センパイ!」
元気な声が響く。
「ん? 円野か。どうした?」
「突然すみません! お願いがあるんです!」
「お願い? なんだ?」
「僕と一緒に、クエストに出てください!」
「クエスト?」
少し首をかしげる。
「はい。この前の大垣峰攻略で、僕は
精鋭部隊と一緒に戦いました。これまでも
ずっとエレン教官やメアリー師匠に鍛えてもらいました。
そして、2年前の・・・第7次侵攻の時、センパイに
見せたあの未熟さ・・・・・。」
もうあれから2年か・・・・。
「あのふがいなさを乗り越えた僕を見てほしいんです!」
「そういうことか。まぁ、いいぞ。
どうせ暇だったしな!」
「あ、ありがとうございます! センパイ、
準備は・・・。」
「この刀あれば十分だ。」
刀を地面をカンカンとたたく。
「そうですか! 僕ももう準備できてるので、
すぐに出発できますよ!」
「本当か?」
「嘘じゃないですって!」
そう言って、カバンを開ける。
「えっと、討伐対象のデータでしょ、携帯食料に・・・
万が一デバイスが壊れたときの方位磁針と紙の地図!」
「確かにしっかり準備できてるな。」
「エレン教官に叩き込まれたんです! クエストに
出るときに一番気を付けなければならないこと、
それは・・・絶対に生きて帰ることです!」
「大前提なんじゃないのか?」
「そ、それはそうなんですが・・・。魔法使いには
単独で魔物と戦える力があるけど、数は少ない。
一般の軍隊がデクや武器、人命を大事にするように、
魔法使いも自分を貴重な武器と考えろと言われました。」
確かにそういう考えもあるか・・・。
「センパイは僕よりずっと貴重な力を
持っています。だから僕も生きて帰りますし、
センパイも生きて帰りましょうね!」
「ああ、当然だ。」
「では出発しましょう! 成長した僕を
見ててくださいね!」
<ロウ、真理佳、移動中>
山奥
「ところで・・・」
「はい?」
しばらく歩いたところでロウが
真理佳に問いかける。
「今回の討伐対象、結構弱い方だったぞ。
それで生きて帰るって言われてもな・・・。」
「あ、あはは・・・そうですよね。クエストの
討伐対象は弱いですよね。でも、学園で死人が
出るときは、討伐対象が不意に強いことが多い・・・
って、そう聞きました。だから油断はしません。」
「ああ、いい判断だ。確かに少し成長してるな。」
「教官たちから、前線で戦っている軍人のことを
聞いたんです。強い兵士ほど油断をしないって。
自分が強いって自惚れてるんじゃなくて・・・
強くなりたいからです。」
「そうか・・・。」
「あ、じゃあ、僕からも聞いていいですか?」
そう言って、軽く手をあげる。
「なんだ?」
「センパイって、エレン教官から普段どんな
ことを教わってるんですか?」
「なんだ、そんなことか。戦略の立て方だ。
どうやって効率よく魔物を倒すかとか。」
「へぇ・・・。」
「あとは軽く模擬戦闘だな。腕が鈍らないように。」
手をパキパキと鳴らす。
「まあ、ほかにもいろいろ教わってる。
雀には中国武術、東雲には簡単な防御魔法、
風紀委員の連中から逮捕術・・・」
「お、多いですね・・・。」
「まあ、大半は目で見て盗んだけどな。」
「さすがです! ・・・・!」
真理佳が気配に気づいた。
「円野、お前も気づいたか。」
「はい。」
2人の前に魔物が現れる。
「『ROOM』!」
青色のサークルを張る。
「やぁ!」
魔物を思い切り殴る。
地面に強くたたきつけられる。
「『タクト』!」
地面を隆起させ、魔物を宙に
放り出させる。
「これで・・・どうだぁ!!」
浮かんできた魔物を再び地面に
たたきつけた。
魔物はうめき声をあげ、霧散した。
「よし・・・。」
<ロウ、真理佳、移動中>
「そういえば、円野。」
「はい?」
「お前、始祖十家にあったことあるのか?」
「はい。浅梨ちゃんの家で、話させてもらったんですけど・・・
みんな、アニメみたいな戦い方はできないって
言ってました。」
「まあ、そりゃそうだ。」
できたらできたでそれもな・・・・。
「苦手なこともあるし、タイコンデロガと
戦うときは怖い、とも。・・・あ、あのですね・・・。」
「?」
「正直、聞いたときは、なんだって思ったんです。」
「なんだ、がっかりしたか。」
「ち、ちがっ! そ、そうじゃなくて!」
勢いよく首を横に振って否定する。
「なんだ・・・僕と一緒だって。」
「一緒?」
「はい。始祖十家も、怖くて、ケガをして・・・
死ぬ人もいて・・・どこも特別じゃなかったんです。」
「特別ねぇ・・・。」
「僕、ずっと、始祖十家やヒーローはすごく才能に
恵まれた人たちだって・・・アニメに出てくるような
人たちだって思ってたんです。でもやっぱり、努力して
毎日鍛えて、体調管理をして・・・だから戦い続けれるんです。
僕、やっと理解できたんです。」
「円野・・・・・・やっとって、さすがに・・・。」
「うぅ・・・。」
しゅんとうなだれる。
「まあ、確かにどんな才能があろうが
努力しなきゃ衰えるしな。それに気づいたってことで
お前の言うヒーローってのに一歩前進なんじゃないのか?」
「そ、そうですよね!」
「・・・・・! さて・・・そろそろだな。」
「! ・・・はい!」
「『ROOM』! 『シャンブルズ』!」
隠れていた魔物の集団が
2人の前に出現する。
「これ片づければ、討伐完了だな。
行くぞ、円野。」
「はい! センパイ!」
「『ラジオナイフ』!」
魔物数体を一気に切り裂く。
「はぁ!!」
真理佳は地面を砕き、魔物の体勢を崩す。
「やぁ!!」
そこに一気に叩き込む。
それによって、魔物は次々と消えていった。
「・・・あ!」
真理佳のわきを通り、1体の魔物が
ロウに襲い掛かる。
「そう来るか・・・円野。魔法の準備しておけ。」
「! わかりました!」
そう言った真理佳の後ろの魔物も
攻撃を仕掛けようとしている。
「ちょうどいいな・・・『シャンブルズ』!」
ロウと真理佳、それぞれの場所を入れ替える。
「はぁぁ!」
「『カウンターショック』!」
真理佳はロウに襲い掛かろうとした魔物を、
ロウは真理佳に攻撃しようとした魔物を
それぞれ倒す。
「よし・・・Mission Complete・・・だな。」
「センパイ、大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。」
「す、すみません・・・僕がもうちょっとしっかり
してたら・・・。」
「人間、一度くらいは失敗するもんだ。気にするな。」
肩をポンポンとたたく。
「・・・はい、ありがとうございます。
あ、あの!」
「ん?」
「センパイ・・・と、パーティ組めて僕、
嬉しいんです! ずっと子供っぽくて、わがまま
だったのに・・・今もお願い聞いてくれたり、
とっても感謝してるんです! いつか、
恩返ししたいんです!」
「お、おう・・・。」
急に言われると少し照れるな・・・。
「・・・もっと僕が女の子らしかったら、
別の方法もあるかもしれないんですが・・・」
「? なんか言ったか?」
「・・・な、なんでもないです! ぼ、僕・・・
ヒーローになりたいって思ってて・・・自分が
女だってことが好きじゃなくて・・・でも、
今は女だったことに感謝してるんです。」
「?」
「男だったら、覚醒できなかったかもしれない。
そうするとセンパイや教官に会えなかったし・・・
そ、それと・・・。」
「円野、どうした、さっきから。」
「あ、こ、これからもよろしくお願いしますね!」
「それだけか? ならとっとと帰るぞ。」
「は、はい!」