グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・ふぅ。もう少しちゃんと訓練
しておけばよかった・・・。」
絢香は魔物に苦戦を強いられていた。
「せっかくグリモア代表として来たのに、
これじゃあ・・・・・。 ・・・?
今の声・・・・・。」
きょろきょろと周りを見る。
「絢香さん!」
「・・・え? 越水さ・・・」
ソフィアが絢香を押す。
「あ!」
接近していた魔物の爪にソフィアが
捕まり、空に飛んで行ってしまう。
「うきゃー!」
「こ、越水さん!」
「へるぷみー!」
じたばたと暴れる。
「ちょっと! なにやってんのよ!」
「ご、ごめんなさい・・・! 気がそれて・・・。」
「くそ・・・!」
ロウは銃を構える。
「・・・だめだ。このまま撃っても越水も巻き込むぞ。」
「こうなったら、ちょっとくらいケガさせてでも・・・!」
「ま、待ってください! ここはあたしが・・・!」
「皇・・・なにか策があるのか?」
「うん。ロウ君の力を借りれば・・・!」
「? 俺?」
自分で自分を指さす。
「ロウ君、魔力ちょうだい!」
「しばらく流し続ければいいか?」
「うん、お願い! 初めてやるけど・・・・
できるはず! MAGIC☆STAR、絢香の
応援ソング!」
「「・・・・は?」」
ロウと天から素っ頓狂な声が出る。
「『キミのための服』いっくよ~!」
そう言って、絢香は歌い始める。
「あ、絢香さん~! 歌ってないでへるぷみ・・・
・・・おっ? おお? おおおお~!?」
ソフィアが空中で魔物に対抗し、
そのまま倒す。
「ぶべ!」
着地が決まらず、顔から落ちる。
「あ、アンタ、何が起きたのよ!」
「あいたたた・・・いえ、絢香さんの歌を聴いてたら
すごく元気が出て・・・あっ! 危ないです!
やぁ!」
炎が魔物を包み込む。
「な、なんだか疲れが吹っ飛んじゃいました!
あいむふぁいん! 魔物はワタシに任せてください~!」
「まさか・・・あの歌、魔法? 声に強化魔法を
載せてるんだわ・・・でもあの子、確か・・・。」
「・・・はぁ! う・・・やっぱきつい・・・。」
絢香はその場に座り込む。
「大丈夫か?」
「ごめんね、ロウ君。もうちょっと魔力・・・。」
「ああ。」
魔力を渡す。
「・・・ありがと。」
何とか立ちあがる。
「随分疲れてるな。」
「うん、いっつも心の声聞く魔法で魔力垂れ流してる
から・・・今みたいにちょっと規模の大きい魔法
使うと、一気にね・・・。でも、越水さんが無事で
よかった・・・あたしの気が散ったせいだから・・・・ん?」
「? どうした?」
「また、今の声・・・。」
「ソフィアさん! 大丈夫ですか!?」
葵が駆け寄る。
「おー・・・のーぷろです。ちょっと痛かった
だけです。まだまだぜんぜん大丈夫ですよ!」
「越水、無理をするな。また魔物が来るまで、少し
時間がある。一度後ろに下がり、傷を見てもらえ。」
「はい。あいしーです。」
ソフィアが治療に向かう。
「ちょっと乱暴に扱いすぎたわね。少し
冷やさないと・・・。」
デウス・エクスをそっとなでる。
「・・・ふぅ。ロウ君、迷惑かけちゃってごめんね。」
「気にするな。やれることをやっているんだ。
謝る必要はない。」
「あ、ありがと・・・。それでも・・・・あ。
ロウ君、ちょっとこっちに来て。」
「?」
<ロウ、絢香、移動中>
国連本部
「・・・ん?」
ロウと絢香は国連本部内に入る。
「あ、会長・・・会長って、あたしの魔法のこと・・・」
「・・・む、あー、なんというか・・・。」
ロウをちらっと見る。
「ああ、俺なら知っている。問題ない。」
「そうか・・・ならいいだろう。アタシも
知っている。だが、こんなときにどうした?」
「声が、聞こえたんです。不穏な声が。
これから、誰かが爆弾を仕掛けるつもりです。」
「それは確かか?」
「うん。でもあたしじゃ場所までわからなくて・・・。
範囲が広い魔法じゃないので、近くにいると
思うんですが・・・。」
「よし、アタシが行こう。ロウ、悪いが
会計に伝えてくれ。しばらく皇を借りるぞ。」
「ああ。了解した。」
そう言って、ロウは戻っていった。
「さて、相手の特徴はどんなだった?」
「声は現地の言葉なので、日本語以外はほとんど
わからないんです。でも、あたしはずっと声を
聞き続けてきました。心の声は嘘をつけない。ボムという
単語、その時の邪悪な意思・・・間違いないはずです。」
「場所が分からないといったな?」
「戦闘や会議のこともあって、心の声がいつもより
多いんです。」
申し訳ない顔をする。
「なるほど・・・なら、アタシが考えていることは
わかるか?」
そう言って、目を閉じる。
「え・・・? ・・・・任、せろ・・・ですか?」
「そうだ。お前の魔法も万能じゃない。その分は
アタシが埋める。声を聞き逃さないよう集中してくれ。
その間、アタシが守る。判別できるぎりぎりまで
近づくぞ。」
「・・・は、はい。わかりました。よろしくお願いします!」
数時間後
「・・・以上を国連決議とし、国連軍は世界平和のため
この決議に示された信念のもとに行動することを
お約束します。最後に、本会議開催のきっかけとなった
私立グリモワール魔法学園・・・トラチヨ・タケダ。
この決議に対し、申し出ることがあればどうぞ。」
ショインカ事務総長が促す。
「あ、アタシか・・・? あ、いや、失礼・・・。
んん・・・台本なしで話すのは苦手なんだが・・・。」
壇上に立つ。
「新年早々、こうして世界が集まり、この星の未来に
ついて話し合えた。アタシの知らないこともたくさん、
お聞きすることができました。ここに集まった方々の出した
結論はもっとも尊重されるものです。我が私立グリモワール
魔法学園も国連決議を遵守し、魔物を討ち果たすという
信念のもと、ますます精進します。アタシのような娘に
話す機会を頂いたこと、御清聴いただいたこと・・・
最後まで会議にかかわらせていただいたことに、
あらためて感謝を。ありがとうございました。」
周りからは拍手が響いた。
「それで・・・どうでした?」
虎千代との捜索の結果、
スパイの発見に成功していた。
「スパイは全部3人。どうやら・・・霧の護り手では
ありませんね。キネティッカの構成員だと
考えられます。」
「キネティッカ?」
「共生思想と陰謀論の都合のよいところを抜き出した
ような思想の団体です。どうやら会議の開催前から
どこかに潜んでいたようですね。」
「そ、それって・・・もしかして、危なかった・・・?」
「たとえ私たちが気付かずとも、国連軍が
気づいたでしょう。国連軍が気付かずとも始祖十家が。
なにしろアイダ・リーヴスがいますから。とはいえ、
彼女は会議に参加中。あなたがいたから早期に発見、対処
することができたのです。感謝します。」
にこりとほほ笑む。
「・・・は、はい! ありがとうございます!」
「他の人たちもそろそろ魔物を倒しつくす頃でしょう。
私は皆さんのところへ行きます。あなたはどうしますか?」
「もちろん、行きます!」
「いた・・・ちぇ、扱いが上達して痛みが減ったとはいえ、
まだ全然じゃない・・・。」
痛みから天は座り込む。
「こりゃまた、すごい平気だな。」
「ひぃ!? あんた・・・神宮寺樹!?」
「驚かせて済まない。そうか、これがうわさに聞いた
あれか。」
デウス・エクスをじろじろ見る。
「な、なによ・・・。」
「すべての人間が魔法を使えるようになる夢のような
機器。噂自体はいつの時代にもあるし、今でもどこかで
研究が続けられている。」
「・・・なんだ、別にデウス・エクスについて
直接聞いたわけじゃないのね。」
「ああ。その反応だと茉理は知ってるんだろうが・・・
そういうのを外に漏らさないくらいの常識はもってるよ。
・・・で、だ。さっそく商談といこう。」
「・・・・しょうだん?」
「ふぃ・・・あいむたいあーど・・・。」
「ああ、確かに疲れたな。」
「でもその甲斐あって、国連本部には1匹も
近づけさせませんでした。」
ロウ、ソフィア、葵も座り込んでいた。
「ご苦労だった。これより我々はニュージーランドに戻る。」
「ん、そうだったか。」
「ここは大使や政府関係者しか泊まれないからな。
それに夜から自由行動だ。ここでは味気ないだろう?」
「ですねー。お土産も売ってませんし。」
「わかりました。皆さんにお伝えします。」
こうして、国連会議は終わりを告げた。