グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第175話 親子の再会

「誰だ!」

 

ロウは相手に銃口を向ける。

 

「・・・・誰、とはこちらの話。私が幻覚の

 魔法をかけられていないのなら・・・

 あなたたちは、『もう1つの世界』の人たちね?」

 

現れたのは銃を持った1人の

女性だった。

 

「・・・その顔・・・なるほど、こっちの

 桃世か。」

 

「・・・悪趣味。ここに私が、MOMOYAが

 あると知って・・・『あたし』を連れてきたなんて。」

 

「・・・別に趣味で連れてきたわけじゃない。」

 

ロウと裏のももの間に鳴子が立つ。

 

「君を説得するためには本人が必要だと

 思っただけだ。」

 

「通信機器は使ってないわね? この場所は絶対に

 ばれてはいけない。生き残った学園生の、最後の

 よりどころなのよ。」

 

「それは知っている。10年以上前、僕もここで

 世話になった。岸田慎吾氏に会いたい。夏海を

 連れてきたと伝えてくれ。」

 

「・・・!!」

 

鳴子の話を聞き、目が大きく開く。

 

「娘・・・! やっぱり、あなたは悪趣味だわ!

 娘を捨ててまで世界を救おうとしたあの人の覚悟を

 なんだと思ってるの!」

 

「その捨てた娘が協力者となれる実力を身につけた。

 彼の側に建てるまで、僕が見守ってきた。夏海は

 ただ守られるだけじゃない。戦える。だから連れてきたんだ。

 全ては、慎吾氏に決めてもらう。」

 

「・・・残念ね。彼は今、ここにはいない。」

 

そう言って、首を横に振る。

 

「・・・・なに・・・?」

 

鳴子は動揺を隠せない。

 

「こんなところで話していたら危ない。こっちに

 来て。歓迎はしないけれど、あなたたちに

 ()()()()()()()()()・・・仲間のお墓に手を

 合わせてちょうだい。」

 

 

 

 

 

<ロウたち、移動中>

 

 

 

 

「・・・あ、あの・・・。」

 

「・・・・。」

 

ももは裏の自分に話しかけるが、

顔を背けられる。

 

「えっと、お電話以来、ですね・・・。」

 

「・・・かわいそうな子。知らなくていいことを

 知ってしまうなんて・・・・。」

 

「・・・・!」

 

「・・・あれがこっちのももちゃん? なんや、

 ピリピリしとるね。」

 

「この10年と状況で大きく変わったんだろう。」

 

「・・・10年で、こんなに変わるんでしょうか・・・。

 自分があんなになるなんて、思ってもみませんでした。

 ・・・・ここって・・・。」

 

掛けられた『MOMOYA』の看板を見る。

 

「ここがMOMOYA。レジスタンスの休息地で

 物資補給点。みんなは戦いに疲れたらここで体を癒す。

 そしてまた戦いにいく・・・仮の宿よ。」

 

「あ・・・・ああ!」

 

「・・・どうしたの?」

 

「見たことあります・・・このお墓・・・

 この建物・・・!」

 

「・・・・・どういうこと?」

 

智花が説明に入る。

 

「私たちの何人かはこちらの世界の夢を見ます。

 私も、大きな魔物が街を壊してまわる光景を・・・。」

 

「!? それは第8次侵攻・・・。」

 

「仲間が死んで行って・・・あたしがお墓を

 作って・・・服部さん、里中さん、皇さん、

 鳴海さん・・・彼女の冷たくなった体が・・・」

 

・・・里中もか・・・。

 

ロウは第8次侵攻直前の学園のことを

思い出していた。

 

「・・・あなたじゃない。」

 

「!?」

 

「彼女たちを葬ったのはあなたじゃない。だから・・・

 何も感じなくていい。あなたはこちらとは

 関係ない。」

 

「そんな・・・!」

 

「遊佐先輩が連れてこなければ、それを現実として

 知ることもなかった。・・・休憩したら、帰って。」

 

裏のももはロウたちに背を向ける。

 

「あなたたちが、私たちを説得しようとしてることは

 知っている。でも本当は、ゲネシスタワーで連絡を

 とったこと自体が間違いだった。こちらの戦いは

 あなたたちが首を突っ込んでいいものじゃない。」

 

「ちょっと・・・・」

 

「物見遊山のつもりなら、ただ私たちを

 かき乱すだけ! 迷惑よ!」

 

「ちょっと! さっきから黙ってれば言いたい放題!」

 

耐えきれず、夏海は裏のももに詰め寄る。

 

「岸田先輩・・・。」

 

「こっちにあんまり来てないあたしが言うことじゃ

 ないけどさ! その言い方がひどいってことくらい

 わかるわよ!」

 

「言い方を変えたら、あなたたちはいつまでもわからない。

 危なくなれば、自分の世界に逃げられるあなたたちにはね。」

 

裏のももは夏海たちを睨む。

 

「・・・・・。」

 

「残念だったわね。岸田慎吾はいないわ。」

 

「え・・・・そ、それって!」

 

「・・・死んではいない。たぶんね。でもずっと

 長い旅に出ている。誰も行方を知らないわ。この

 死の世界で・・・どこまで生き延びられるか。」

 

「そんな・・・・。」

 

「さあ、これで目的は果たされたでしょう。帰って。

 ここにいればきっと安全。だけどいつまで安全か

 わからない。いつ戻るかわからない人を待つなんて

 ただ不合理なだけ・・・」

 

「おいおい。そんなことを言われたら出にくくなる

 じゃないか。」

 

近くから男の声が聞こえる。

 

「・・・・・え?」

 

「・・・・・あ・・・・。」

 

「夏海。大きくなったな。見違えたぞ。」

 

汚れたシャツにジャケットを羽織った男だ。

 

「・・・お・・・お父さん・・・。」

 

「き、岸田さん!? いつ戻ってきたんですか・・・!?」

 

「ちょうど今だ。何しろ『約束』があったものでね。

 久しぶりだな、夏海。」

 

その瞬間、夏海は慎吾に抱き着いた。

 

「バ・・・バカァ! いないって思った後に出てくる

 なんてズルいじゃない!」

 

大粒の涙を流す。

 

「びっくりしすぎて死んじゃうかと思ったじゃんかぁ!」

 

「すまなかった。桃世君にしっかり伝えておく

 べきだったな。」

 

夏海の頭をなでる。

 

「霧の嵐でこちらに飛ばされて、ずっと

 帰れなかったんだ。」

 

「バカァ・・・ずっと死んだと思ってたんだから。

 でもお母さん、あたしにはお父さんが死んだって

 言っておいて・・・いつまでも再婚しなかったし、

 お墓も作ってなかったのよ! 絶対、帰ってきてよね!」

 

「ああ、約束しよう。だがその前に、少し休め。

 ここは慣れれば安息の地だが、雨が降り続けて気温も

 低い。死が渦巻いている場所だ。それと、お前を連れてきて

 くれた遊佐君と、少し話がしたい。」

 

「うん・・・うん、わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふぅ、よかった。最後だといった手前、

 ここにあなたがいなければ、僕のメンツが

 丸つぶれでした。」

 

慎吾の顔を見て、鳴子はほっと胸をなでおろす。

 

「君は自分のメンツなど気にする子じゃあない

 だろう。夏海のことを心配してくれたのに感謝する。」

 

丁寧に頭を下げる。

 

「・・・岸田さん。これは僕なりの、あなたへの

 恩返しです。『あの時』、霧の嵐で飛ばされてきた

 僕を守り、鍛えてくれた。それがあなたとこちらの

 僕でした。」

 

穏やかにほほ笑む。

 

「僕たちは幸運にも、再び霧の嵐で表に帰ることが

 できたけれど・・・あなたはまた霧の嵐に巻き込まれて

 しまった。それからずっと僕は、あなたと夏海を再開させる

 ために生きてきました。そして・・・あなたを連れ戻すために。」

 

「それが10年以上の歳月を経て、ようやく実ろうと

 しているわけだ。やはりどちらの君も並大抵の精神力では

 ないね。」

 

「・・・こちらの僕の最期は?」

 

「死んだとだけ聞いている。だけどどのように死んだかは

 わかる。遊佐鳴子なら、何かを残す。君たちはそれを

 たどっているはずだ。」

 

「・・・キーを探しています。おそらくは桃世ももが

 持っている。僕が最後に残した謎。それを解くための

 キーです。」

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