グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

184 / 337
第176話 提案

「やれやれ。彼女は最後までミステリアスなままで

 逝ったわけだ。」

 

慎吾はあきれながらも笑う。

 

「・・・ちなみにあなたに聞けば内容がわかる、

 という裏道はありますか?」

 

「僕と彼女では調べていた内容が違う。長いこと情報共有も

 していなくてね。それにキーを分散させるほどの厳重な

 セキュリティだ。会っていたとしても、教えてもらえ

 なかっただろうね。」

 

「あなた相手に、漏えいの危険を考慮していたと?」

 

「実際、何度も捕まりそうになった。僕は魔法使いでも

 ない一般人だ。だが、努力の甲斐あって、貴重な

 情報を得ることができたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「夏海、落ち着いたかい。」

 

話を終えた鳴子は夏海を呼ぶ。

 

「あ・・・部長・・・はい、なんとか。」

 

「時間をもらって悪かった。僕の用事は終わったよ。

 まだ戻るまで時間がある。話してきなよ。」

 

「はい。でも、帰ったらゆっくり話せるし・・・今は

 急いで・・・」

 

「まだ、桃世君の説得が終わっていない。もう少し

 待ってくれ。」

 

「あ、そうか・・・わかりました。」

 

夏海は立ち上がり、慎吾のもとに向かった。

 

「んで? どうするんだ、説得。あのままじゃあ

 とても来るとは思えねぇぞ。」

 

「大丈夫だ。今回は切り札があるからね。」

 

鳴子はにやりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ミナちゃんから聞いているわ。あなたたちが

 接触してきたこと。」

 

裏のももはももと話していた。

 

「私たちをそちらの世界に連れていき、戦力に

 しようとしていること。『あなたたちの世界を

 救うための』ね。」

 

「・・・そんな・・・そんなつもりじゃ・・・。」

 

「あなたがそうでなくとも、生徒会や執行部は

 そう考えているでしょう。・・・残念だけど、私たちは

 そちらの世界に興味がない。」

 

そう言って、仲間の墓を見る。

 

「こちらには死んでいった仲間がいる。倒すべき

 敵もいる。そこから離れるわけにはいかない。

 あなたたちはとても魅力的な提案をしているわ。まだ

 破壊されつくしていない学園に帰れる。生きている

 仲間に会える。・・・そんなの、夢みたいなこと。」

 

「な、なら・・・!」

 

「だから怖いの!!」

 

目を閉じ、大きな声を上げる。

 

「仮初の平穏に戻って、こちらで戦い続ける苦しさから

 解放されて・・・絶望的な戦場に戻る勇気をなくして、

 いつしかこの世界を諦めて・・・」

 

空を見上げる。

 

「地球を諦めて、月で暮らせと言っているようなもの。

 もとよりそれができないから! 私たちは戦っているのに!」

 

「・・・そ、それは・・・」

 

「こちらも救う。」

 

鳴子が会話に入る。

 

「心配ない。僕らの世界は『こちらも救う』という

 結論を出した。」

 

「・・・何の話?」

 

「年始に国連総会が開かれて、全会一致の結論がでた。

 今、この世界についての話は各国重鎮に周知の事実と

 なった。君たちが絶望的な戦いを強いられていることも

 伝わっている。」

 

「・・・・・・。」

 

裏のももは鳴子の話を静かに聞く。

 

「そのうえで、世界の最高権力である国連が

 『見捨てない』と判断を下した。君たちは僕らの世界に

 来て、なおこの世界のために戦える。『こちらのバックアップを

 受けて』ね。」

 

「・・・・!?」

 

驚きから目を大きく開く。

 

「もう君たちにとって、僕らの世界は逃げ出す先じゃない。

 協力できる同盟国、と考えられないかい?」

 

「・・・あなたの言うことを信じる根拠がないわ。」

 

「さすがに今回には間に合わなかったけど、例えば

 誰の言葉なら信じる? コズミックシューターか、

 我妻梅が来て同じことを言ったら・・・君たちは

 納得するかい? なら連れてこよう。」

 

「・・・・・・・。」

 

裏のももの体が震える。

 

「私たちは、もうずっと、周り全部が敵だった。

 始祖十家が対立し、コズミックシューターは死に、大半は

 行方不明。誰かから与えられた希望にすがるには、死を

 見すぎた。誰を連れてこようとも、信じられるのは

 自分たちだけ・・・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「だけど、伝えるわ。みんなを探して、聞いたことを

 伝えてくる。それであなたを信用する人がいたら、

 そっちの世界に行くと思うわ。」

 

「・・・やっぱり僕には、ここが限界か・・・。」

 

自嘲気味に笑う。

 

「桃世君。あとは頼んだ。君ならわかるはずだ。

 桃世ももが望んでいることを。」

 

「・・・遊佐先輩・・・。

 ・・・・・・・・・・。」

 

ももは裏の自分と向き合う。

 

「えっと、もも、さん。」

 

「なに・・・・?」

 

「こちらの世界で、またMOMOYAを開きましょう。

 ここは仮の宿・・・なら、こちらの世界も仮で

 いいんです。みんなが帰ってくるところが、MOMOYAで

 あれば・・・! あたしも、お手伝いさせてください・・・。」

 

「・・・・みんなが帰ってくるところが・・・・

 ももやで・・・・あれば・・・・。~~~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ああ、いったん、元の世界に帰ろう。

 伝えるべきことは多い。」

 

「い、いったん? いったんって・・・」

 

慎吾の服をぎゅっとつかむ。

 

「こちらの世界で暮らして、それなりにつながりも

 できた。1人で休むわけにはいかない。また

 こちらに来るよ。」

 

「そんな・・・! ダメよ! そんなのダメ!」

 

夏海は目に涙を浮かべる。

 

「大丈夫だ。しっかりと計画を立てて、必ず戻る。

 長い間じゃあない。だが絶対にあることを調べて

 しまわないといけないんだ。」

 

「なに? お父さんじゃなくて、あたしが調べられる!?

 かわりにあたしがこっちに来ればいいのよ!」

 

「・・・インドのゲートが何者かによって

 閉じられた。」

 

「・・・・え? ゲートが・・・閉じた?」

 

思わぬ話に声が震える。

 

「そうだ。お前が話してくれたような、時間停止なんて

 いうものじゃない。ゲートが()()()()。僕はそれを

 調べに行ってたんだ。残念ながら、約束の日がきて

 戻ってきたけどね。」

 

「ゲートを、閉じる方法が・・・あるの!?」

 

「そのはずだ。これがわかれば、多くのことが

 解決する。・・・だがとりあえず、今は帰ろう。

 廃墟の物を長いこと拝借していたが・・・」

 

自分の服の汚れを払う。

 

「そろそろこのシャツも替え時だからな。」

 

「・・・・・うん!」

 

夏海は大きく頷いた。

 

 

 

 

<ロウたち、移動中>

 

 

 

 

表世界

 

学園 校門前

 

「・・・今回もその・・・説得には失敗、

 だったのでしょうか・・・。」

 

ももは不安そうな顔をする。

 

「いや、手ごたえはあったよ。それは君が一番

 わかっているだろう? 彼女らが裏世界に固執する

 原因と、その解決を一挙に掲示できた。あとは

 時間の問題さ。」

 

ポケットから何かを取り出す。

 

「これでキーも3つ目。順調といっていいのかな。

 ・・・・このペースも予測済みか?」

 

鳴子は小さくつぶやいた。

 

「・・・帰って、これましたね。」

 

「ああ、特に事故もなくな。」

 

ロウは寮に戻ろうとする。

 

「ロウさん! 神宮寺さんのところに行かないと!」

 

「おっと、そうだったな。」

 

「あ、ウ、ウチも行く!」

 

「・・・・?」

 

慎吾は周りをきょろきょろと見る。

 

「ここは、元の世界か?」

 

「そうよ。もしかして長く向こうにいすぎて、

 忘れちゃった? 今日はクエスト終わったから、

 授業免除なの! ね、帰ろ!?」

 

「・・・・・・。これは・・・そうか、魔法の

 影響か・・・。こちらの世界も調べなきゃならんか。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。