グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
校門前
「お待たせしました、でしょうか?」
駆け寄った葵は軽く首をかしげる。
「ああ。」
「申し訳ありません。準備に少し時間が
かかってしまいまして・・・。」
「そんなに時間かかるか?」
「はい! ロウさんとご一緒するということ
ですから、入念な準備・・・・」
急にはっとした顔をする。
「? どうした?」
「た、ただ・・・最近お父様がうるさいもの
ですから・・・その、殿方との外出に
ついて・・・。」
「そうか。随分とうるさい親父さんだな。」
「ですので街ではなく、すぐそこの学外カフェでも
よろしいでしょうか?」
近くのカフェを指さす。
「まあいいぞ。コーヒーが飲めればいい。」
「では、参りましょう!」
<ロウ、葵、移動中>
カフェ
「それで、ロウさんは何になさいますか?」
2人はメニューを開く。
「いつも通りコーヒーだ。」
「ロウさん・・・たまには違ったものなどは・・・。」
「ん? いや他のも飲む。ただ絶対的にコーヒーは
飲むってことだけだ。」
「そうなのですか・・・。」
「それで、なにかおすすめはあるのか?」
メニューをパラパラとめくる。
「えっと・・・こちらのカモミールティーです。
とってもおいしいのですよ。茶道部の皆様とご一緒
するので、このお店であればお任せくださ・・・・」
途中で葵の言葉が止まる。
「どうした?」
「め、メニューが変わっています!」
「ん? そうなのか?」
「季節が変わったからでしょうか? 年が変わった
からでしょうか?」
不測の事態に何度も瞬きをする。
「それともほかに何かあったのでしょうか!?
まさか変わるなんて・・・。これではカモミールティーより
おいしいものがあるかもしれません。」
そんなに落ち込むかよ・・・・。
「残念です。お世話になっているロウさんに恩返しが
できると思ったのに・・・。」
「まあ、そう落ち込むな。案外うまいものが
あるかもしれねぇだろ。」
「は、はい! そうですね。落ち込んでいる場合では
ありません。メニューが新しくなったのなら、この
新しいメニューを研究するべきです!」
メニューをじっと見る。
「それで? どうするんだ?」
「・・・では・・・この、スターフルーツジュースと
いうものを・・・。」
数分後
「・・・・!」
ジュースを飲んでいた葵は目を輝かせる。
「お、おいしいです! こちらとてもおいしいですよ!」
「スターフルーツだっけか? そんなにうまいのか?」
そう言いながらコーヒーを飲む。
「ロウさんもどうぞ! 味見をしてくださいませ!」
「んじゃあ、遠慮なく。」
少し口に含む。
「・・・ああ、確かにうまいな。」
「こんな飲み物が、学外カフェで楽しめるとは・・・
世界はまだまだ広いですね。・・・あっ、
そういえば・・・」
「ん?」
「ロウさんは確かもうすぐ、野薔薇さんのご実家に
行かれるとか。」
「ああ、めんどくせぇけどな。」
軽くため息をつく。
「厳格なお家というのはよく聞きます。とはいえ、
お友達ですし・・・学生らしく振る舞えば、間違いは
ないと思われますよ。」
「なぁに、少し行けばすぐ終わるだろ。」
「あ・・・す、すみません・・・。なんだか
偉そうに。」
「気にするな。ま、いつものようにふるまうってのは
賛成だ。」
「!」
「んじゃあ、俺はもう行く。いろいろと忙しくてな。」
「ろ、ロウさん!」
出ようとしたロウを呼び止め、立ち上がる。
「こ、これからもご迷惑をおかけするかもしれませんが、
どうぞ・・・よろしくお願いします!」
「・・・ああ。これからも頼む。」
「はい!」
そのころ
ロンドン
「・・・・・。」
間ヶ岾とともに裏世界へと行った
光男は呆然としていた。
「・・・・あれが・・・終わり、か。確かに
間ヶ岾の言う通りだった。将来的に魔物は
いなくなる。だが間ヶ岾は
ぶつぶつとつぶやく。
「そして魔物がいなくなっては困る・・・。そのために
こうどうしているのなら・・・公表してしまえば
いいんだ・・・! もちろんあと100年以上耐えなければ
ならないが・・・・終わりが来るというだけで・・・
それだけで十分・・・! そのはずだ・・・!」
光男は自分の考えを間ヶ岾に話した。
「ライフストリームとの関係を断つ? まだそんなことを
言っているのかね。」
「もし断るというのなら、ゲートの先のことを
公開するぞ。」
「ゲートの先・・・ククク・・・ハハハハ!」
光男の言葉を聞き、間ヶ岾は突然笑い出す。
「あれを公開するというのか! 君はやっと
纏まろうとしている世界に・・・また楔を打ち込むのかね!
それでこそ霧の護り手の構成員だよ!」
「・・・・? な、なにを言っている。将来的に
魔物が消えるなら、みんな希望が持てる。どうして
それが楔を打ち込むことになるんだ!」
「私は君の教育係ではないのだがね。」
やれやれとというふうにため息をつく。
「いいかね。人類は国連総会を開き、魔物と戦い
殲滅するを宣言した。そこに
いう事実が発覚したらどうなるね?『ならば無理して攻撃
しなくてもよいのでは?』という人間が出てこないかね。」
「・・・そんなの、ほんの一握りに過ぎないだろう。」
光男の声が震える。
「その一握りがショインカ事務総長だったら
どうするね。纏まったはずの人類は魔物殲滅派と
堅守派に二分されるだろう。どちらにせよ、一枚岩で
なければ乗り越えられない局面だ。」
「・・・・・・。」
「この期に及んで分裂するようでは、第8次侵攻も
乗り切れんだろうね。」
「・・・? な、なら今、ネテスハイムがゲートを
調査しているのを・・・」
「ああ、止めるつもりはない。彼らはきっと人類の
善性を信じ、公表する。そうしたら、また混乱が
始まるだろう。」
3月某日
反賀町
「さあ、ロウさん。ここが野薔薇の本家を
有する反賀町です。」
高台からの反賀の景色を見せる。
「・・・・。」
「・・・あ、これはあれっすよ。田舎だ!
って思ってる顔っすね。自分にはわかるっす!」
「よくわかったな。」
どんなに見ても結構な田舎だな・・・・。
「我ら野薔薇は古くからこの反賀に根ざした
家系だ。今も町のほとんどは本家と分家の人間で
占められている。」
「すなわち・・・ここは正しく、野薔薇の町です。
お父様始め、要職にある方々は、普段はおりませんが・・・
今日はお正月以来の勢ぞろいですね。」
「まじかよ・・・。」
ったく、めんどくせーな・・・。
心の中でぼやく。
「実際、お嬢がここまで寄るとは思わなかったっす・・・。
決められた年中行事以外で親族一同を集めるって
ただ事じゃないっすよ。」
「・・・・・・。」
刀子は姫とロウを見ていた。
「どしたっすか刀子先輩。いつもみたいに、それだけ
姫殿、ひいては野薔薇にとって重要なことなのだ、とか。」
「・・・ああ、うむ。その通りだ。ロウ。
一大事であると自覚し、真摯に臨め。」
「わかってるよ、支倉。」
「・・・では、行きましょうか。私たちが一番最後です。
到着次第、あなたを一族に紹介いたします。堂々と
胸を張ってくださいまし。」
「んじゃあ、行くか。」
「は~い・・・・ん? あれ、なんすかね?」
自由はある方向を指さす。
「ん? ・・・・・おい、あれって・・・・。」
「なんだ、もし到着を遅らせるようなら・・・
・・・・ひ・・・・姫殿ぉ! 姫殿ぉ!!」
大声で姫を呼ぶ。
「あちらを・・・ご覧ください!」
「あちら・・・? ・・・・・!!
あれは・・・・!」
「魔物にございます! すぐさま、一族の方々に
号令を! 避難させねば!!」
「まったく・・・ここでもかよ・・・。」
ロウはゆっくりと鞘から刀を抜いた。