グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
山奥
「ふぅ・・・どうだ! ロウ君なしでも、
やれるったらやれる!」
胸を張って、言い切る。
「なーに言ってんだ。警備じゃん。魔法
使ってないし。」
初音が隣でつっこむ。
「う・・・それ言わないでよ・・・。」
「でもま、いつもより遠くに来たし、早く
終わったし・・・どっかで遊んで帰ろーぜ。」
「申し訳ありません、初音様。次のクエストが
発令されました。」
沙那はそう言って、デバイスをしまう。
「・・・? 別に請けなきゃいいじゃん。もう
ノルマクリアだろ?」
めんどくさそうな顔をする。
「ここから1時間ほどのところに、反賀という
町があります。そこに魔物が出現しました。
一番近くにいるのが私たちです。そのまま向かう
ように、と。」
「えー。じゃあ、次は討伐なのか。うーん・・・・
・・・ん? 待てよ。そが・・・反賀・・・
聞いたことあるな・・・。」
頭を指でつつき、思い出そうとする。
「『野薔薇の町』です。」
「あ・・・あー。そっか。んじゃ行かなきゃなー。」
「え? え? 行くの?」
「ま、行きながら説明するよ・・・野薔薇
だからな・・・・。」
反賀
「ま、マジっすか・・・ホントに魔物が・・・。」
「自由! 何をしている!」
「あ、べ、別に自分、ウヤムヤになれとは
思ってましたけど、こんな・・・」
手と首を強く横に振る。
「何を言っている! 魔物が来たのだ! すぐさま
お屋敷へ行かねば!」
「へ? あ、ああ、そっすね。でもほら、自分ら
学園生ですよ? 許可なく魔法で魔物と戦ったら
校則違反っすよ。」
「そんなものは後回しだ! 道すがら確認すればよい!」
「・・・確かに。自由ちゃんともあろう者が、
慌てちゃいましたわ。」
にやりと笑いながらも、目が鋭くなる。
「見ちゃった以上、やることやらなきゃ
いけませんね・・・・。」
「小鳥遊は落ち着いたな・・・。野薔薇、
どうする?」
「反賀に、魔物に対抗する力はありません。ここでは
今、私たちのみが、魔物と有効に戦える力を持ちます。」
「まあ、軍の関係者とはいえ、ほとんど一般人
みたいなもんだしな。まずはここら一帯の避難の
通知だが・・・」
「姫殿!」
刀子が姫のもとに駆け寄る。
「自由の連絡により、お屋敷の方々が状況を把握いたしました!
物見がすでに出ており、避難も始まるとの由です!
また現在、学園へも連絡中! 国軍への救援と、近くに
学園生がいる場合、応援に来るよう要請しております!」
「わかりました。自由! お父様の無事を確認して
ください!」
「うっす。ま、大丈夫でしょ。」
「んで、俺らはどうする? ここはいわばお前らの
ホーム。野薔薇、指示を出せ。」
ロウは周りの状況を確認する。
「そうですね・・・・私たちは御首坂に向かいましょう。」
「おくび・・・ざか・・・あー、あそこか。
懐かしいっすね。ラジャっす。避難の護衛は不要
でしょうし、確認したらすぐ追いつきます。」
「結構です・・・自由。あなたのおかげで、迅速な
避難ができます。ありがとうございます。」
「こんなタイミングでそんなこと言うのって
フラグっすよ。」
若干、顔を渋らせる。
「フラグ・・・?」
言ってることが分からず、姫は
首をかしげる。
「あ、まあ・・・いえ、なんでもないっす。
そうっすね・・・もしかしたらもう会えないかもしれませんし
自分のことは気にせず。」
「何を縁起でもないことを言っているのですか!」
「生存フラグっす。こう言っておけば生きて会えるっす
からね。そんじゃ先輩。お嬢と刀子先輩のこと、
お願いしますよ。」
ニッと笑い、駆け出して行った。
「・・・たまに、自由はわけがわかりませんね。
ロウさん、理解できまして?」
「ああ。とはいえ、からかってるんじゃないってのは
わかってるだろ?」
「ええ。ですが、今はそんなことを言っている場合では
ないですね。両親への紹介は遅れてしまいますが、
よろしくお願いしますね。」
まだ言うかよ・・・。
「まずは、襲撃を束ねているリーダーを探しましょう。」
「リーダー?」
「ええ。まだ一般には伏せられているようですが・・・・
魔物が徒党を組む、ということが顕在化し始めました。」
「徒党・・・チームか。だが、それなら逆にやりやすく
なったな。・・・・行くか。『ROOM』!」
大きく青色のサークルが張られる。
「ふむ・・・今のところ、南からのみ、来ている。」
刀子は遠くを見渡し、魔物の動きを
観察していた。
「・・・よし、名刀・咢の力を貸せ。拙者に鬼神の
加護ぞあらん。大和国咢大薙刀が魔物を屠る!
野薔薇の地を守るため、命を捨てる時・・・!」
<ロウ、姫、刀子、移動中>
御首坂
「刀子! 準備はできてますね!」
「御意に!」
薙刀を構える。
「結構、行きますよ・・・! あまねく花草に
請けい願います! 私は野薔薇の嫡子、姫!
忌まわしきを戒める縄となりませい!」
姫が唱える、植物のツタが魔物を次々と
拘束していく。
「さあ、動きが止まりました! 刀子!
ロウさん!」
「承知! でええい!」
「『ラジオナイフ』!」
ロウと刀子は魔物に攻撃を仕掛ける。
「ふう・・・見える範囲の魔物はとりあえず、
絡めとりましたね。とはいえ、刀子とロウさんで
相手するには数が多すぎます。自由がいない今、
私も魔法で攻撃すべきでしょう。ロウさん!」
「!」
呼ばれたため、一瞬で姫のもとに移動する。
「魔力を頂けませんか。先ほどの魔法は消費が
大きいもので。」
「・・・ああ、わかった。」
目を閉じ、姫に魔力を渡す。
「・・・申し訳ありません。本日はロウさんにも
苦労を強いてしまいますが・・・どうか、力を
お貸しください。ここを守り抜きたいのです。
たとえ、戦えるのが私たちだけだとしても。」
そのころ
「みたいなこと言ってんだろーな・・・全員
逃げたらさっさと一時撤退が基本なのに・・・。」
自由はずばりと言い当てていた。
「・・・あ! ちょっとどこ行くんすか!
野薔薇のおっさん! ・・・確認? ・・・
じ、自分が行きます!」
姫の父の行く手をふさぐ。
「あなたが避難しないと、お嬢がいつまで経っても
戦い続けるんです! それは自分がやるんで逃げて
ください!」
自由に言われ、姫の父は避難していく。
「やっと行った・・・やれやれ、お嬢の頑固さは
父親譲りっすね・・・。東・・・! あれは・・・。」
自由の視線の先は多くの魔物がいた。
「あんなに魔物が・・・どうしてあのおっさん、
このことを・・・・・・お嬢・・・!
今すぐ逃げないと!」