グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・・なんで・・・あんたが・・・・。」
2人が見た顔は何度も見た顔だった。
「・・・久しぶりだな。ロウ。」
「・・・・・・・おっさん・・・!?」
「なんで・・・。」
死んだと聞かされていた義人が
目の前に立っている。
「・・・死んだんじゃ・・・。」
『・・・私が殺したよ。及川義人さん。』
北海道でのユウの言葉が思い出される。
「ああ。死なないといろいろと都合が
悪かったからな。」
「・・・?」
「・・・あんたが・・・天羽・・・?」
「俺が・・・天羽? まぁ、半分当たってるって
ところだな。」
「半分・・・? どういうことだ。」
「あれはほんの数年前のことだ。天羽鉄舟は
98年という生涯に幕を閉じた。」
「!!」
「そして、俺は死んだ
親父が理想としていた日本を俺の手で創ってみせると。」
「・・・親父・・・だと?」
ロウの声が震え始める。
「ああ。お前はさっき、俺に『天羽か?』って
聞いたな? そして半分当たり。もうわかるだろ。」
「まさか・・・・・。」
「そう、俺は・・・天羽鉄舟の唯一の息子。
・・・・・・・天羽、大地だ。」
煙草をくわえ、火をつける。
「天羽、大地・・・・。」
「今まで名乗ってた及川義人はもちろん
偽名だ。まあ、いろいろなコネを使えば
この偽名で警察に入るのもわけなかったな。」
煙を吐き出す。
「・・・ふざけんな・・・・。」
ロウの体が怒りで震える。
「あんたが言ったんだぞ! 俺とお前で
天羽を引きずりおろすと!!」
「最初はお前と同じ思想だった。だが
考え方が変わったんだ。親父の偉大さ、
そして闇の根深さを知り、この男のように
なりたいと思った。」
「・・・この国を・・・・」
「ん?」
挑発するように耳に手を当てる。
「この国を変えるんじゃなかったのか!!」
天羽大地に刀を振る。
しかし、大地はひらりとかわす。
「この国を変えるねぇ・・・。じゃあ教えてくれよ。
お前はどうしたい? どう変えたい・・・!」
今度は大地が刀を振る。
それをロウはなんとか受け止める。
「腐った政治家でも皆殺しにするか? それとも、
国民の教育し直しかぁ!?」
「ぐぁ・・・!」
受けきれず、壁にたたきつけられる。
「国民の考えを正して、日本人の気質を取り戻す?
できると思うか? ・・・答えはノーだ!!
この国の人間はな、国の将来より明日の自分のことで
頭がいっぱいなんだよ。そんな余裕もなければ何かを
変えたいと思うほど不満があるわけでもない。俺やお前が
思うほど、この国の人間は今を苦しんでいないんだよ!!」
「違う! 実際にはわかってるんだよ、このままじゃ
だめだって!! 変わらなきゃいけないって!!」
ロウは立ち上がろうとしたところに
大地は刀の切っ先を向ける。
「もうどうにもならないんだよ。みんながみんな、
自分の今の生き方を変えようとは思わない。
だったらどうしていくべきか。」
「・・・・・。」
「・・・維持だ。こちらのあらゆるものを譲渡してでも
今日と変わらない明日を迎えられるよう
そして、いずれ今の国民を一掃する。それが親父の
思想だ。お前が出る幕はねぇんだよ。」
「一掃だと・・・。そんな思想・・・許されるわけ・・・」
「・・・ほんと似てんなぁ・・・。お前の
親父さんに。」
「! ・・・何を・・・。」
壁を支えにしてなんとか立ち上がる。
「実は死んだ俺の親父とお前の親父は付き合いが
あったんだよ。医者と患者の関係でな。」
「!!」
「そして親父はお前の親父を引き込もうと自らの
思想を話した。だが、大きく反対された。」
・・・父さん・・・・。
「それからしばらく経って、お前の親父は
全てを公表するとぬかしてな。だから・・・
・・・殺ったよ。」
「・・・・・・・今なんつった?」
声に怒気が込められる。
「聞こえなかったか? 殺したんだよ。
事故に見せかけてな。」
吸い終えたたばこを地面に落とし、
靴でぐりぐりとする。
「・・・・・・・てめぇ・・・!!!」
刀を拾い、斬りかかる。
「・・・・。」
すぐにかわされ、腹に蹴りをいれられる。
「うぐ!!」
「・・・ほらよ。」
「ぐあ! ぐあああ!!」
頭をつかまれ、何度も壁に
たたきつけられる。
「うぐぅ・・・!!」
背中に激痛が走る。
「・・・俺がなんでこんな格好してやってるか
わかるか? ・・・・お前に引導を渡して
やるためだ。」
「ぐ・・・!」
「お前は天羽に利用されるだけ利用され、裏切られ、
恨み、憎み、作り上げたこの国を変えようとした。
だが結局お前は何もできていない。それどころか、
お前が原因で様々な争いが起きる。お前がやったことは
全部無駄だったんだ。お前が生きてる価値はないんだ!!」
「!!」
ロウの呼吸がだんだんと激しくなる。
「ロウさん・・・!」
「・・・く・・・・しょぉ・・・・・・!!
ちくしょぉ!!!!」
ロウの叫びが部屋に大きく響き渡る。
「さて・・・んじゃあ、ここでサプライズゲストを
見せてやるか。」
そう言うと、大地はスマートフォンを
取り出し、操作する。
すると、ロウの近くの壁がガラスの壁に変わる。
「・・・!! な・・・!」
「あ、あれって・・・!」
壁の向こうでは鳴子とヤヨイが眠っていた。
「なんのつもりだ。」
「・・・・・。」
刀の刃をロウの首に近づける。
「ここで死んでくれ、ロウ。死ななければ
あの2人をここで殺す。それでも死なないなら
・・・あいつを殺すぞ。」
「!」
智花は2、3歩ほど後ろに下がる。
「・・・・・・。」
「さあ。どうする。ロウ。」
「・・・・ろせ・・・・。」
「あ?」
「・・・・・さっさと・・・殺せ・・・!」
静かに顔を伏せる。
「!! ロウさん・・・!?」
「そうか・・・そうだよなぁ! お前はいるだけで
今の仲間たちに迷惑かけてるもんなぁ!?
安心しろ、すぐに会わせてやるよ。」
ロウを見下し、大地は哂う。
「・・・・・。」
結局・・・何の意味もなかったのかよ・・・
何を・・・・何を・・・・。
父さん・・・母さん・・・ユウ・・・。
ロウは静かに涙を流した。
「・・・・じゃあな。ロウ。ほんの少しの
協力ごっこ、楽しかったぜ?」
ゆっくりと刀がおろされていく。
「・・・・・・。」
ここまでか・・・。