グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第190話 傷

大地の刀がゆっくりとおろされていく。

 

「・・・・・。」

 

ここまでか・・・。

 

静かに目を閉じる。

 

「・・・ロウさん!」

 

ピリリリ

 

「・・・・?」

 

ゆっくりと目を開ける。

刀はロウの首寸前のところで止まっていた。

 

「誰だ? こんなときに。」

 

鳴っていたのは大地の

携帯だった。

 

「・・・・・ったく・・・。

 はいはい、いつもどうも。」

 

『随分と不機嫌な声で。』

 

「・・・!! この声・・・!」

 

電話口で聞こえた男の声に

ロウは聞き覚えがあった。

 

「それで? また金の話ですか? 間ヶ岾さん。」

 

「やっぱり・・・間ヶ岾昭三!!」

 

『んん? 今の声は・・・』

 

「あなたも会ったことがあるでしょう?

 相田ロウですよ、相田ロウ。」

 

刀を鞘に戻す。

 

『やはり・・・ということは正体を

 話したので?』

 

「ああ。すべて予定通り。で、何か用です?

 まさかおしゃべりとは言わないでしょう?」

 

『・・・君の言う通り、金の話だよ。悪いかな?』

 

「いえいえ。うちはいつでも大歓迎です。

 まあ、ここは場所が悪い。一度移動してから

 かけ直しますんで。」

 

そう言うと通話を切る。

 

「・・・てわけだ。運がいいな、お前ら。」

 

「うぐ・・・・!」

 

蹴ってロウの体を壁にぶつけさせる。

 

「さて・・・俺は出るが、その前に・・・。」

 

大地はスマートフォンを操作する。

 

「・・・よし。これであと10分後には

 ここは爆破される。」

 

「「・・・・!?」」

 

大地の言葉を聞き、ロウと智花の目は

大きく開かれる。

 

「爆破・・・!?」

 

「んじゃあ、せいぜい生き延びろよ。ロウ。」

 

「くそ・・・まちやがれ・・・。」

 

「そう言って、待ってやるかよ。じゃあな。」

 

壁のスイッチを押すと、出口が開かれ

そこに大地が入ると、すぐに閉められた。

 

「ろ、ロウさん!」

 

「わかってる・・・! だがその前に・・・南。」

 

「?」

 

「おっさんのことは・・・まだ言うな。」

 

「え・・・でも・・・」

 

「頼む。」

 

刀を持つ手に力が入る。

 

「は、はい・・・。」

 

「わかればいい。・・・『ROOM』!」

 

青色のサークルを張る。

 

「『切断(アンビュテート)』!」

 

ガラスの壁を次々と切っていく。

 

「よし・・・。」

 

「遊佐さん! ロカちゃん!」

 

智花が2人を起こしに行く。

 

「う・・・」

 

「あれ・・・ここは・・・?」

 

「お前ら。寝起きで悪いが、すぐにここを

 出るぞ。10分後にはここが爆破される。」

 

「・・・・・ば、爆破!?」

 

「眠ってしまっている間に、どうやらいろいろ

 あったようだね。」

 

「言ってる場合かっての・・・・!」

 

天井に向けて刀を振る。すると

天井に丸い穴が開く。

その後、サークルの範囲を広げる。

 

「『シャンブルズ』!」

 

そうさけぶと、4人は一気に

地上に脱出した。

 

「へぇ・・・さすがだ。」

 

「どうにか・・・脱出でき・・・・」

 

言い終わる前にロウは刀を落とし、

倒れてしまう。

 

「! 兄さん!?」

 

ロカは起こすため揺らすが

起きる気配はない。

 

「さっきの戦闘で、かなり消耗してて・・・・。」

 

「戦闘・・・。とりあえず、ここを離れよう。

 爆破されるみたいだしね。」

 

「は、はい・・・!」

 

倒れたロウを担ぎ、智花達は

施設をあとにした。

 

 

 

<移動中>

 

 

 

 

学園

 

保健室

 

「・・・・ぅ・・・・ここ、は・・・。」

 

「保健室よ。」

 

ゆっくりとベッドから体を起こす。

 

「椎名か・・・。俺は、なんでここに・・・?」

 

「覚えてないの? ロウ君、クエストの後

 倒れたのよ。」

 

「少し、使い過ぎたな・・・う!」

 

背中に痛みが走る。

 

「! 大丈夫?」

 

「ああ・・・部屋に痛み止めがある。しばらく

 それ飲めば痛みはひく。」

 

痛みに耐えながら立ち上がろうとする。

 

「だめよ! まだ安静にしてないと!」

 

ゆかりは寝させようとする。

 

「大丈夫だって。もう・・・問題ない・・・。」

 

「!」

 

ロウの目を見たゆかりは少し後ろに下がる。

いつもより目が虚ろになっていた。

 

「・・・じゃあな、椎名。」

 

「・・・ロウ・・・君・・・・。」

 

保健室から出ていくロウを

静かに見送った。

 

「・・・大丈夫・・・だよね・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

寮 ロウの部屋

 

「・・・・・・。」

 

静かに痛み止めを飲む。

 

「・・・・・・・・。」

 

空のペットボトルを床に投げ捨てる。

そして、ゆっくりと目を閉じる。

 

「・・・・・・・。」

 

『最初はお前と同じ思想だった。だが

 考え方が変わったんだ。』

 

『この国を変えるねぇ・・・。じゃあ教えてくれよ。

 お前はどうしたい? どう変えたい・・・!』

 

『俺やお前が思うほど、この国の人間は

 今を苦しんでいないんだよ!!』

 

『こちらのあらゆるものを譲渡してでも

 今日と変わらない明日を迎えられるよう維持していく。

 そして、いずれ今の国民を一掃する。それが親父の

 思想だ。』

 

『お前がやったことは全部無駄だったんだ。

 お前が生きてる価値はないんだ!!』

 

大地の言葉がロウの頭の中で

響き渡る。

 

「・・・・俺は・・・・・。」

 

・・・俺は・・・なんのために・・・・

 

・・・なんのために・・・・。

 

顔をうつむき、頭を抱える。

 

「・・・いったい・・・なんのために・・・。」

 

立てかけてあった刀を手に取り、

鞘から抜く。

 

「・・・・・。」

 

刀の刃を自らの首に近づける。

 

「・・・・く・・・!」

 

近づくほどに、ロウの手が

震え始める。

 

「・・・これすらも・・・俺には

 できないのか・・・・。」

 

静かに刀を床に置く。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

震える手から汗が流れる。

 

「・・・・・・・。」

 

・・・俺には・・・・もう・・・・。

 

グリモアの仲間たちの顔が浮かぶ。

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後

 

教室

 

「ロウさん・・・今日も来ませんね・・・。」

 

智花はロウの席を見る。

 

「話ではしばらく安静だったんだろう?」

 

「ま、そのうち来るようになるって!」

 

怜と夏海が励ます。

 

「てか、何があったのよ? ロウに取材しようと

 思っても来ないし。」

 

「う、うん・・・。」

 

『おっさんのことは・・・まだ言うな。』

 

ロウの言葉が思い出される。

 

「そんなに気になるんなら、あとで

 行ってみたら~? ロウの部屋。」

 

「な、夏海! 何を・・・!」

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

ロウの部屋の前

 

「ほ、ほんとに来ちゃった・・・。」

 

そう言っている智花の手には

弁当があった。

 

「さ、差し入れっていえば・・・

 大丈夫だよね・・・。」

 

ドアをノックする。

 

「ロウさん? 智花です。」

 

ロウからの返事はない。

 

「・・・いない・・・のかな・・・。

 ・・・・・あれ?」

 

ドアをよく見ると、僅かに開いていた。

 

「戸締り忘れちゃってる・・・。」

 

ドアに手をかけ、ゆっくり開ける。

 

「ろ、ロウさ~ん?」

 

足音を立てないように入る。

いまだ、ロウの返事はない。

 

「・・・・・いない・・・。とりあえず、

 お弁当は置いて・・・。」

 

机の上に弁当を置く。

 

「し、失礼しました・・・。」

 

足早にロウの部屋を出た。

 

「えっと・・・もあっともあっと・・・。

 『お弁当、置いておきました。帰ったら、

 ぜひ食べてください』・・・っと。」

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「・・・え・・・。」

 

もあっとのメッセージが既読にならず

気になった智花はロウの部屋の前に来ていた。

 

「ドア・・・まだ開いてる・・・。」

 

部屋に入ってみると、昨日置いた

弁当はそのままだった。

 

「・・・ロウさん・・・・もしかして・・・

 ・・・いなくなった・・・・?」

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