グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第192話 やるべきこと 生きている価値

「・・・そろそろ、話してくれないか?

 君はなぜ・・・学園から出て行ったんだい?」

 

「・・・・・・。」

 

ロウは目を開ける。

 

「智花ちゃんがここに来る数時間前、

 君はあの時の目をしていた。」

 

「・・・あの時?」

 

「・・・御両親が亡くなられた時だ。」

 

「・・・・!」

 

ロウの体がわずかに震えている。

 

「だから私は・・・ここにいることを

 黙ってくれという君の頼みを聞いたんだ。

 だから・・・話してくれ。」

 

純雄はロウに向き合う形で座る。

 

「・・・・自分を・・・」

 

「・・・・。」

 

「・・・自分を・・・冷静に、再確認

 するため・・・ですかね。」

 

「・・・再確認?」

 

ロウは震えた自分の手を見る。

 

「・・・南が話したと思いますが・・・かつて

 信頼していた男が俺にこう言った。

 『お前のやってきたことは全部無駄だったんだ。

 お前が生きてる価値はないんだ。』・・・と。」

 

「な・・・!」

 

「聞いた瞬間、俺の中でわずかでも築いていたものが

 音を立てて崩壊していった。だが、同時に

 ある疑問が生まれた。」

 

「疑問?」

 

「・・・今までが無駄なら・・・この先は・・・

 何があるのか・・・って。」

 

声が震え始める。

 

「俺の生きる価値を・・・やっていくべきことを・・・

 俺自身をどうするか・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

純雄は静かに話を聞く。

 

「それを考えるため、俺はあの日、

 ここへ来たんです。でもまさか同じ日に南が

 来るとは思わなかった・・・。」

 

「・・・・そうだったか・・・。

 そういうことなら・・・私は、出ていたほうが

 いいかな?」

 

「・・・・言いにくいですが・・・はい・・・。」

 

「・・・ああ。ゆっくりと、考えなさい。

 それで出した結論なら、私は何も言わないよ。」

 

「・・・・・ありがとう・・・ございます・・・。」

 

ゆっくりと頭を下げた。

 

「・・・・。」

 

純雄は静かにそれを見ると、部屋を

出て行った。

 

「・・・・・。」

 

純雄が出ていくと、ロウは再び

目を閉じる。

 

俺自身の生きる価値・・・

やっていくべきこと・・・・・

 

ロウの頭の中に声が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの、すごいですね。その体質。』

 

『話はあとあと! とりあえず来て!』

 

『だから魔力供給は頼むぞ。私も全力で

 戦うつもりだ。』

 

『んもう、そうやってからかって遊ぶの、

 先輩の悪い癖ですよ?』

 

『この最凶にして最強の妾と組めることを、

 ありがたく思え!』

 

『今は私の薔薇園を守るため、その力を

 貸してください!』

 

『万全の態勢で臨む。お前の力が必要だ。』

 

『あなたに対する評価が上がってるんですよ?』

 

『君の体質はそれだけ評価されてるんだよ。』

 

『ケガしてたらちゃんと見せてね?

 しっかり治すから。』

 

『魔法使いの寿命は短いんだよ。だかあアタシは

 今を楽しく生きたいワケ。』

 

『もしものとき、骨は拾ってくださいね!』

 

『ロウさんがいっしょならきっと大丈夫ですぅ!』

 

『我が円卓の騎士にとって恐れるまでもない!

 やっつけてしまうぞ、いいな!』

 

『これからさらに重要な立場になるだろう。

 ただの魔力タンクではなくなっている。』

 

『・・・結局、1人で強くなれねぇって

 ことかよ・・・。』

 

『わたくしが神とともにある限り、そのわたくしが

 あなた様と共にある限り・・・勝利は

 約束されています。』

 

『・・・本当に・・・心配したんです。』

 

『魔力がいっぱいあっても、疲れちゃうんやえ。

 心配してるんよ。』

 

『先輩、改めて、お手伝いいただき

 ありがとうございました。』

 

『消えてしまわないでね。学園にいてちょうだい。

 あなたがいなくなったら、きっと学園は

 ダメになる。』

 

『私と、友達になってほしい。私は

 友達がどういうものか、知りたい。』

 

『ぷ、ぷりーずうぇいと! ま、待って

 ください~!』

 

『さいですか、ではれっつごーですよ。』

 

『少しでも先輩と一緒にいたいんです!

 ほら、急いで先輩!』

 

『ロウー! 海に行くぞー!』

 

『では早速出るぞ。私のポリシーは

 『金を数えるが如く』だ。』

 

『レッツゴー、ノエルちゃん!』

 

『ぁたし・・・ロウ・・・さ・・・ぁもり・・・

 ぁす・・・。がん・・・ばり・・・ぁす・・・!』

 

『あのふがいなさを乗り越えた僕を

 見てほしいんです!』

 

『だからあたしもしっかりやんなきゃね・・・。』

 

『ロウさんを守り、魔物を打倒してみせます!』

 

『あなたがグリモアで一番の戦闘力を持つわけでは

 ありませんがグリモアに一番必要な人材である

 ことは自明です。』

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

早朝

 

「・・・・・・。」

 

ゆっくりと目を開け、立ち上がる。

 

「・・・決めたのかい?」

 

純雄は部屋に入ってくる。

 

「・・・はい。これが俺に出せる

 今の答えです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方

 

学園

 

「ロウさん・・・。」

 

この日も、ロウの足取りがつかめず

学園全体はさらに暗い雰囲気に包まれていた。

 

「・・・もう・・・いないんでしょうか・・・。」

 

智花はふらふらとした足取りで

ある場所に向かっていた。ロウの部屋だ。

 

「・・・・・。」

 

静かにドアを開ける。

 

「・・・・・やっぱり・・・いません・・・

 よね・・・。」

 

自嘲気味に笑う。

 

「・・・・zzz・・・。」

 

「・・・?」

 

誰かが部屋の中にいる。

そう思った智花は恐る恐る

部屋の中に入る。

 

「・・・一体・・・だれ・・・・・。」

 

智花は驚きで言葉が出なくなった。

 

いなくなっていたロウが

ベッドの上でのんきな顔で眠っていた。

 

「・・・・あ・・・・ああ・・・!」

 

「ん・・・? 誰か・・・いるのか・・・?」

 

目をこすりながら、ゆっくりと起き上がる。

 

「ろ・・・ろ・・・!」

 

「・・・なんだ、南か。・・・どうした?」

 

「・・・~~~!!」

 

バチン!

 

「うぐ!?」

 

大粒の涙を流しながら、

智花はロウを力強くビンタした。

 

「な、なんだ、急に・・・。」

 

「急にじゃないです!! ロウさんがいなくなって・・・

 死んじゃったんじゃないかって・・・・!

 心配してたんですよ!!」

 

「・・・・・。」

 

「ロウさんがいなくなってから・・・みんなは

 暗くなってきちゃうし・・・どんどん不安に

 なっていっちゃうし・・・・!! ・・・今まで

 何やってたんですか~!!」

 

ロウをポカポカと殴る。

 

「・・・・・。」

 

「・・・え・・・。」

 

ロウは黙って、智花を抱きしめた。

 

「・・・・・。」

 

「あ、あの・・・。」

 

「すまなかった。」

 

「・・・!」

 

小さな声で謝る。

 

「そこまで言われるとは思わなかった・・・。

 あと・・・」

 

「・・・?」

 

「お前結構力あるな・・・。」

 

そう言ったロウは少しふらふらしている。

 

「ああ、す、すみません~!」

 

「まあ、いいんだ。俺が悪いからな。

 ・・・とりあえず、そこ座れ。」

 

「は、はい・・・。」

 

智花から離れ、座るよう促す。

 

「今まで何を・・・だったな。・・・昨日、

 正確には今日の朝まで、純雄さんのところにいた。」

 

「え、純雄さん!? でも連絡は・・・」

 

「あの人を責めないでくれ。黙ってるように

 言ったのは俺だ。・・・俺は俺自身について

 考えていた。」

 

「・・・ロウさん・・・自身・・・。」

 

「天羽大地の言った、俺の生きている価値を・・・

 その答えが出るまで、冷静に見るために

 ここを出る必要があった。」

 

「・・・こ、答えは、出たんですか?」

 

声を震わせて聞く。

 

「・・・ああ。」

 

「・・・そ、それって・・・」

 

「安心しろ。俺は生きていく。死にはしない。」

 

「・・・!!」

 

智花の顔が一気に明るくなる。

 

「そ、それなら早くみんなのところに行きましょう!

 ロウさん!」

 

「・・・いや、ここしばらく寝てなくてな。

 明日の朝一、生徒会、風紀委員、報道部に

 俺が帰ったことを伝えてくれるか。」

 

「は、はい!」

 

元気な返事をしたあと、智花は

部屋を出て行った。

 

「・・・・。」

 

ロウは静かにほほ笑んだ。

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