グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
第193話 ロウのやるべきことと時間停止
生徒会室前
「ほ、本当に話すんですか・・・?」
「ああ。もう隠すのもやめだ。
・・・すべてを話す。」
「・・・わかりました。でも1つだけ
聞いてもいいですか?」
「なんだ、南。」
「ロウさんの・・・やるべきことって・・・?」
「・・・・あえて言うなら・・・。」
早朝
生徒会室
「・・・・・。」
「・・・・・。」
生徒会、風紀委員、報道部の
メンバーが集まっていた。
ゆっくりと、ドアが開かれる。
「「「「「!!」」」」」
全員が注目する。
その中、ロウが入ってくる。
「ロウ!! お前・・・今まで何を・・・!」
「昨日も散々言われたよ。・・・悪かった。」
低い声で謝り、頭を下げる。
「・・・会長。」
「・・・ああ、わかった。」
「それで、話ってのはなんなんです?
ロウさん。」
風子は鋭い目でロウを見る。
「こんな朝早くに集めたのは・・・・
俺のすべてを話すのに、時間がかかると
判断したからだ。」
「・・・すべて?」
鳴子が問う。
「ああ。今まで散々隠してきた俺の過去、
そして、この間のクエストのすべて。それを話す。
とりあえず・・・座っていいか?」
椅子を指さす。
「・・・ああ。」
ロウは椅子に座る。
「・・・さて、すべてを話す。」
ロウは虎千代たちに文字通り全てを話した。
幼いころに両親を失ったこと。
天羽鉄舟に引き取られたこと。
地獄のような日々を送ってきたこと。
天羽に見限られ、命を落としそうになったこと。
その天羽を引きずりおろすため、及川義人と
手を組んだこと。
前回のクエストで義人が天羽鉄舟の息子、
天羽大地だったこと。
その時言われた、自らの価値、やるべきことを
見直すため、学園を離れたこと。
そしてそれが終わり、学園に戻ったことを。
「・・・これが、俺の全てだ。」
ロウは穏やかな笑みを浮かべる。
「「「「「・・・・・」」」」」
部屋が沈黙に包まれる。
「・・・そ、そうだったか・・・・。」
最初に口を開いたのは虎千代だった。
「他に聞きたいことはあるか?」
「ず、ずいぶんとあっけらかんと
しているな、ロウ・・・。」
「隠しようのない事実だからな。それで、
聞きたいことは?」
「僕は特にないよ。」
「なら、ウチからいーですか?」
風子が手をあげる。
「なんだ、水無月。」
「アンタさんはやるべきことを見直すっつって
ましたよね。」
「ああ。」
「今は、何をやるべきだと?」
「・・・・・。」
ロウは静かに笑う。
「・・・そうだな、あえて言うなら・・・・・
今のやるべきこととしては、ここに
いること・・・だな。」
「ここに・・・? どういうことです?」
「そのまんまだ。だから戻ってきた。問題あるか?」
「・・・いえ。」
「それと・・・今日、あの日の前日だよな?」
「・・・・ああ。3月31日。」
今の学園では時間停止の魔法がかけられている。
それが解除されたかどうかを確認するのが今日だった。
「南の時間停止は一応完成したんだろ? それを使うのに
俺の魔力がいる。それの関係でも戻らなきゃ
ならなかったからな。」
「え、ええ・・・そうね。」
「・・・確かに、その話もしなければな。
朱鷺坂以外は一度出てくれ。」
「わかったよ。」
「・・・はい。」
風子は納得しないまま、鳴子と
ともに出ていく。
「南、入っていいぞ。」
ロウがそう言うと、おそるおそる
智花が入ってくる。
「さて・・・時間停止の話だが・・・
これで少なくとも、本人のあずかり知らぬ
ところで解除される・・・それはなくなったんだな。」
「えっと・・・」
「時間停止は第8次侵攻を避けるための魔法だからな。
つまり、解除されれば来ることになる。わかるな?」
「は、はい。」
はっきりと頷く。
「だが、まだ第8次侵攻を乗り切るための条件が
整っていない。そうだろ? 会長。」
「ああ。特に人類の戦力だ。始祖十家がいても、
魔物には勝てなかった。」
「テロリストの脅威も相変わらずよ。双美心という
問題も出てきたしね。」
「それに裏世界で始祖十家が戦って全滅したわけでは
ないというのも、気になる。我妻やデラー、
周には心当たりはないそうだ。」
「・・・。」
チトセは軽く首を横に振る。
「それに霧を消滅させる根本的な方法も
見つかっていない。ゲートを通して霧を裏世界に
送る案は却下だ。向こうも救うと決まったからな。」
「・・・じゃあ、まだ・・・」
「そうだ。だから・・・魔法をまだ解除しないで
くれ。まだ人類には時間が必要だ。」
虎千代は智花の肩に手をポンと置いた。
「・・・・・。」
寮
ロウの部屋
「・・・・1つ嘘ついちまったな・・・。」
大きくため息をつく。
「やるべきことは・・・あれ1つじゃない・・・。
俺の・・・過去の清算だ・・・。」
つまり、俺自身が・・・死ぬこと・・・・。
「・・・・。」
ロウはゆっくりと目を閉じた。
智花の部屋
「・・・私が魔法を解除したら・・・
第8次侵攻が起きる・・・。・・・はぁ、
今日は眠れないなぁ・・・。」
そして、日付が変わり、
4月1日となった。
翌日
校門
「いやー、毎年言ってるが、新年度だなぁ。」
「よう、兎ノ助。」
「あ、ロウ! お前、今までどこに・・・!」
兎ノ助はロウに飛びかかる。
「いろいろだ。迷惑かけたな。」
「ちょ、ピンポイントで耳つかむのやめろ!」
「へいへい。」
兎ノ助の耳をパッと放す。
「ったく・・・まあ、ロウも2年目だな!
なんかずっといる気がするけど・・・
よろしく頼むぜ。」
「ああ、こっちこそよろし・・・・・・・・・
・・・兎ノ助、お前今なんつった。」
「ん? どうかしたのか?」
「兎ノ助・・・。」
青ざめた顔で虎千代がやってくる。
「お、虎千代・・・あれ? 虎千代? お前
去年が最終年度じゃん・・・あれ? 卒業式・・・
なんで卒業式しなかったんだっけ?」
「・・・~~~!!! ロウ、来い!」
「・・・ああ。」
いったいどうなってやがる・・・。
<ロウ、虎千代、移動中>
生徒会室
「どうなっている・・・何が起きた!?」
「おはようございます、会長。」
虎千代が慌てているところに
薫子が入ってくる。
「薫子! アタシは卒業したか!?」
「は? いえ・・・卒業したのなら、ここには
いないでしょう。」
「確かにそうだな。」
「今年も繰り返しましたよ。今日の新聞です。」
そう言って、新聞を差し出し、日付を指さす。
「・・・・・。」
日付をじっと見る。
「確かに繰り返している・・・なら、
あの兎ノ助は・・・。」
「す、すみません! あ、ロウさん・・・。」
慌てて智花が入ってくる。
「南、昨日どうしてた?」
「えっと・・・ま、魔法の解除はしてません・・・!
私の魔力が消費される感触も・・・ロウさんから
魔力をもらった感触もありました・・・。」
「ああ、俺も減った感覚はあった。」
「でも、うまく繰り返した気がしないんです・・・・。」
「魔法をいじってはいないのね? 意図的に
命令式を組んではいないわね?」
チトセが次々と尋ねる。
「は、はい・・・。」
「どういうことだ。」
「・・・多分、時間停止が限界なのよ。
世界全体にかかっているから、負荷が大きい
はず・・・。」
「つまり・・・持たないってことか?」
「今年は去年のことを覚えている人がかなり
多いわ。・・・魔法の効果が弱まっている
可能性がある。」
不安な顔になる。
「・・・おそらく、今年いっぱい・・・か・・・。」
「・・・南、ロウ。今のところは口外するな。
伝え方をまとめてから公式に発表する。」
「は、はい・・・あの、もう繰り返せないという
ことは・・・」
「ああ。昨日の問題・・・今年中に解決しなければ
・・・・また人類は負ける。」