グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・しかし、魔物の動き・・・。」
怜は魔物の分析を始める。
「委員長の言った通り、観察していると
確かにおかしいな。相手しきれぬ時もあれば、
こちらが優勢な時は数が減っている・・・。」
話しながらも、魔物を倒していく。
「群れで行動していることが関係しているのか?
・・・引き続き、注視してみるか。」
「・・・いますね。あそこと、あそこと・・・。」
梓は魔物の数と位置を確認する。
「送信・・・っと。」
「くそ・・・なんて数だよ。」
ロウは強化魔法をかけた手で魔物をつかむ。
そして、一気に力を入れ、魔物を霧散させる。
「いやー、多いですね。特級危険区域の時
まではいかないまでも・・・伊賀になんか
恨みがあるのかって感じですよね。
ははは・・・」
「笑ってる場合かよ・・・。てか、ここまでに
なって、なんで里を捨てない?」
「うーん・・・まあ、いろいろ理由があるんですが
最初は捨てる方向だったんですよね。」
「!」
「里のみんなが生き延びるのが一番大事だから、
避難しようって。でも・・・結局戦うことに
なりました。」
「・・・なんでだ。」
この間にも、向かってきた魔物を
霧散させる。
「・・・先輩になら話してもいいかな。理由の
1つは、国連での決定です。」
「国連だと?」
「この襲撃は国連において、重要な戦いだと
判断されたそうです。最初は里の人間だけで
片を付けるつもりでした。でも・・・国連が
派遣されてきて、おいそれと逃げられなくなった。」
「・・・・・。」
「ここまで迎撃のためのおぜん立てされて・・・
当事者の自分たちだけ逃げるわけにはいかないでしょ。」
「・・・他には何がある?」
ロウは梓に向き合う。
「それは、先の襲撃でのことです。頭領を
逃がそうとしたんですよ。やっぱり欠けたら
いけない人ですから。」
「・・・・。」
「けど、まるで頭領だけを狙っているかのように、
魔物が追いかけてくるんです。」
「魔物が?」
「あれは驚きましたね。なんでリーダーが
わかったのか・・・。」
「なるほど。それじゃあ、里を捨てても
意味はないしな。」
軽く頷く。
「だから、腹をくくって対峙しましょうと
決定が出たんです。誰だって、不気味なモンは
明るみに出してやっつけたいでしょ。」
「・・・不気味・・・確かに動きが妙だ。」
「ええ。この襲撃って、自分が学園にいなかった
時期から続いてるんですよ。ずっと。で、
自分が学園に戻っていた時期は『魔物が撤退
していた』とみなされています。」
「魔物が・・・撤退だと?」
「ええ。いつものように、本能的に逃げたわけじゃ
ないんです。無差別に人を襲うはずの魔物が
軽傷の状態で一気に引き上げますか?」
「・・・・・・。」
ロウの顔が険しくなる。
「・・・まさか・・・」
「ええ。統率された動き、セオリー通りの
戦略・・・。魔物が知能を持っているとしか
思えません。」
数時間後
魔物との戦闘からかなり時間が経ち、
夕方になっていた。
「くそ、戦っている間に神凪たちから
離れちまったな・・・。」
「すみません。自分が地の利があるからって、
自由に動きすぎたかな・・・。」
「まったくだ。ここは戻るぞ。でないと、
あとあと面倒になる。」
「そうですね。あ・・・先輩。」
歩こうとしたとたん、梓が止まる。
「なんだ?」
「ついてなんでちょっと自分、あっちの方に
偵察行ってきます。」
「偵察?」
「はい。えっと・・・」
地図を取り出す。
「今このあたりにいるんですけど、ちょうど
そこに抜け道がありまして。」
「抜け道・・・。」
「そこから入れます。まっすぐ行けば、神凪先輩
たちのところに戻れますから、先に合流して
ください。」
「お前が偵察にそこまで時間がかかるのか?」
「いやー、自分はいいんですけど、忍者以外の
人だと厳しいので・・・。あ、抜け道は
真っ暗なんで、注意してくださいね。」
「・・・・。」
こいつ・・・何考えてやがる・・・・。
「目が慣れるまで時間がかかりますから、
ゆっくり戻ってください。」
「・・・わかった。偵察を終わらせたら
すぐに来い。」
「はい。それじゃ。」
そう言って、梓はすぐに姿を消す。
「・・・・。」
ピピピ!
「ん?」
デバイスが鳴ったため、取り出す。
『ロウ、今どこにいるんだ。』
「神凪か。少し外れたところにいる。服部は
偵察に向かった。」
『服部が? じゃあお前はいま1人なのか?』
「ああ。あいつが教えた抜け道に行こうと
したんだが・・・・・。」
途中で言葉を止める。
『・・・? どうした?』
「・・・いやな予感がする。」
『え?』
「悪いが合流できそうにない。今から俺は
服部を追う。考えれば、あいつが俺を単独で
残すなんてことをしないからな。」
『ロウ・・・。・・・頼んだぞ、
服部を止めてくれ。』
「わかってるっての。・・・いったん切るぞ。」
通話を切る。
「・・・くそ、あんの野郎・・・!」
ロウは走って、梓を追いかけた。
<ロウ、移動中>
「・・・・。」
偵察と言っていた梓は空を見上げていた。
「・・・!」
足音がしたので、振り返る。
「・・・あーあ・・・。先輩、戻って
きたんですか。」
「やっぱり偵察ってのは嘘か。」
「・・・見つかっちゃいましたね。まあ、
先輩は騙せないなとは思ってたんですけど。」
「・・・ところで、それなんだ?」
今の梓は白い布の眼帯に、
着物を羽織っていた。
「ああ、これですか? 目を怪我したわけじゃ
ないんで、安心してください。片目だけ
覆っておくと、暗所でもすぐ目が慣れるんですよ。」
「・・・その着物は?」
「この着物は・・・えーと・・・お気に入りです。」
少し言葉を詰まらせる。
「・・・さすがに苦しいぞ、服部。」
「や、わかってます。そうですよね、今のは。
・・・頭領が狙われた時の着物を借りてます。
目立つでしょ?」
「確かにな。」
2人の言うように、着物の色は
ピンクでよく目立つ。
「・・・お前・・・。」
「ここまで言えば、わかりますよね。もう、
ごまかしようがないんで説明しますと・・・」
「・・・・。」
「これから頭領の影武者として出るところ・・・
だったんですけど。」
「俺が戻るとは思わなかったわけか。」
「ええ・・・そう、なん・・・です・・・。
・・・あの・・・」
「なんだ?」
「魔物集まってくるんですよ。今から、ここに。」
梓の声が震える。
「里のみんなで、どうやったら狙われるか検証
しながらおびきよせてて・・・それで・・・
自分が頭領として狙われるかどうか、試すはず
だったんです。」
「・・・・・。」
「でも・・・先輩がここに来ちゃったら
もう・・・。・・・・・・。」
黙り込み、考え始める。
「・・・う~~~~んんんん・・・・・・・
・・・・よし!」
眼帯と着物をその場に捨てる。
「おい、いいのか? 里での作戦だろ?」
「ん、いいですいいです。作戦変更!
ポイしちゃいます。」
「怒られるんじゃないか?」
「多分むっちゃくちゃ怒られると思いますけど・・・
いいです。先輩の元に魔物をおびき寄せるわけに
いきません。」
迫ってきている魔物に対峙する。
「自分から、離れないでくださいね。」
「・・・わかってるよ。」