グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第196話 腕

「さてと・・・。」

 

ロウはデバイスを取り出す。

 

「念のため神凪に連絡しておくか・・・。」

 

 

 

 

 

 

「・・・くっ・・・。」

 

怜はロウの連絡を受け、顔を

強張らせる。

 

「忍者は自分たちを犠牲にして、魔物の

 行動をつまびらかにするつもりか・・・!」

 

「・・・なんだと?」

 

「ロウからの連絡だ。このままでは、

 服部とロウが危ない。」

 

「か、神凪さん! 魔物の動きが・・・!」

 

向かってきていた魔物たちが

急に方向を変え始める。

 

「これは・・・魔物たちが一斉に移動している・・・?」

 

「急ごう。服部とロウが、魔物に囲まれている。

 この魔物たちも、そちらへ移動しているようだ。

 ・・・正確には、服部が単独でおとりになって

 魔物を集めていたが・・・・・」

 

その間に、魔物たちはどんどん移動する。

 

「ロウが服部の元へ行ったことで、作戦が

 変わってしまった。服部1人なら逃げることも

 できるが・・・この魔物の勢いから、ロウを

 守り切るのは無理だ。」

 

「服部は伊賀忍者としての役目を果たそうと

 していたのだろう? どんな策を立てていたかは

 わからんが・・・私たちに告げていないことで

 だいたいうかがい知れる。」

 

「生天目。お前は気づいていたのか?」

 

「その気になれば奴はこんな魔物など、すぐに

 殺しつくせるだろう。・・・・・馬鹿めが。」

 

小さくつぶやくと、つかさは

歩き出す。

 

「あ、生天目さん!? だめです、勝手に

 ここを離れたら罠が・・・!」

 

紗妃の制止を聞かず、どんどん

進んでいく。

 

「ど、どうしましょう、神凪さん!」

 

「私たちも行こう。見ろ、向こうの魔物、

 移動中に罠が作動しているが・・・」

 

罠にかかった魔物は大きなうめき声をあげるが

それでも進む。

 

「罠を発動させた後は普通に通れるようだ。

 あの後をついていけば、きっと服部たちの

 元へ行ける。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・やば、なんか

 これ、もしかして・・・」

 

魔物は梓を通り抜け、ロウの元に

向かっている。

 

「くっ・・・! 『シャンブルズ』!」

 

魔物と位置を入れ替えて、攻撃をかわすが

別の魔物がまた攻撃を仕掛ける。

 

「ちぃ・・・!」

 

「先輩が魔物に狙われてる・・・? く!

 守られてると重要人物ってわかっちゃうんですかね!?

 にしたって、なんでこんな反応が早いんですか・・・!」

 

魔物は次々と攻撃を繰り出す。

 

「先輩、下がってください! ここは自分が・・・」

 

「無理だ! 後ろもすっかり囲まれちまってる!」

 

「・・・抜け道はだいぶ先・・・。しかもみっちり

 魔物だらけですし・・・。どうするか・・・

 片っ端から倒すにしても、四方から来るんじゃ・・・」

 

魔物に攻撃しながら、梓は考える。

 

「どこか・・・どこか抜けられそうな隙間・・・

 ・・・・・・あった。」

 

梓はある一点を見つける。

 

「でもあそこを通れば、確実に横にいる

 魔物に・・・・・腕、いや肩を持っていかれる。

 ・・・・・だけど・・・・。」

 

「『ラジオナイフ』!」

 

戦っているロウの姿を見る。

 

「・・・・・いいか、腕くらい。先輩!

 障壁張ってください! 自分の後について・・・

 一気に駆け抜けます。」

 

「駆け抜ける? そんなところあるわけ・・・・・ !」

 

ロウは気づいた。

梓の目論見に。

 

「あいつ・・・・! んなことさせ」

 

「はあああぁっとりいいぃぃぃぃ!!!」

 

とてつもなく大きな叫び声が

あたりに響く。

 

「クク・・・クハハハ! 見つけたぞ、服部!」

 

茂みの中から司が出てくる。

 

「生天目!?」

 

「なんで・・・」

 

「なんとも無様よ!! この程度の魔物に

 てこずるとはなぁ!!」

 

「し、心臓に悪すぎでしょ! 新手の敵かと

 思ったじゃないですか! てか、抜け道も

 使わないでどうやってここまで・・・。

 罠がいっぱいあるって言ったじゃないですか!」

 

「人間の作ったわななどが、私の足止めに

 なるものか。」

 

・・・確かにそうだな・・・。

 

ロウは心の中で同意した。

 

「てか、服部! お前、さっきの明らかに腕

 1本持っていかせようとしただろ!」

 

「! なんで・・・。」

 

「お前の考えなんて、あっさりしすぎてて、

 わかりやすいんだよ。」

 

「・・・アハハ、目がいいッスね。先輩。」

 

そう言って、右腕を押さえる。

 

「そろそろ日が暮れる。言ったな、退屈させるなと。

 私のために今すぐ、その手で魔物を殺しつくせ。

 でなければ・・・貴様もろとも殺すぞ。」

 

「・・・・・は、ははは・・・・。なんつーか

 ほんと、生天目先輩って・・・自由でいいッスよね。」

 

「魔物ごと吹っ飛ばされたいか? そろそろ

 次の波が来るぞ。」

 

つかさの言う通り、魔物の大群が迫っている。

 

「・・・すんません、うだうだ考えすぎちゃって。

 目が覚めました。先輩が狙われちゃったんなら、

 しょうがないですよね。」

 

「なら、早くしろ。服部。」

 

「失敗失敗、忍者失敗ッス! もう全部

 倒しちゃいましょ!」

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

「・・・学園生は伊賀軍と一緒に、拠点に

 戻れとの指示です。」

 

「ああ、了解した。」

 

「服部さん、起きませんね。」

 

梓は今、ロウにおんぶされた状態だ。

 

「随分力使っちまったからな。しばらくは

 こうしておく。」

 

「すまない、お前ばかりに背負わせて。」

 

「気にするな。こいつは腕一本落とそうと

 しやがったからな。それに比べれば

 大したことじゃない。」

 

「・・・ふふ、頼もしいな。」

 

怜は穏やかに笑う。

 

「そういえば、生天目さんは?」

 

紗妃は周りをきょろきょろと見て、

つかさを探す。

 

「魔物倒しに行ったんだろ。服部の本気を

 見て、テンション上がってんじゃないのか?」

 

「・・・確かに、想像以上だったな。それにしても、

 今回の作戦の狙いだが・・・」

 

「ああ、国連が魔物の思考データを取ってたんだろ?

 戦力が保たれた後、リーダーの位置を示唆したり、

 魔物の視覚の実験で、頭領の着物を見せたり・・・

 いろいろな検証してたらしい。」

 

「被害は大きくなったが・・・その甲斐あって、

 リーダー消滅により、群れが制御を失う

 データが取れた。」

 

「・・・里の復興、少しは手伝わねぇとな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、お恥ずかしいッス・・・ここまで

 グダグダになるとは・・・。」

 

起きた梓は何度も頭を下げる。

 

「つきあいは長いが・・・お前が眠っている

 姿は初めて見たな。」

 

「ロウさんに背負われたのは、覚えてます?」

 

「マジっすか!? 先輩、おんぶして

 くれてたんスか?」

 

「ああ。」

 

「うわー・・・なんで起こしてくれなかったんスか・・・。

 いや、それどころじゃないか・・・。」

 

「お前余裕あるな。」

 

「もう、服部さん! 本当に心配したんですよ?」

 

「あは、あはは・・・冗談ッス、冗談・・・

 アイテ、笑うと、アイテテテ・・・・。」

 

腕を押さえる。

 

「・・・・あの、先輩。」

 

「なんだ?」

 

「ありがとうございました。あの時、先輩と

 一緒じゃなかったら、自分は・・・・。

 学園に帰ったら、ゆっくりお礼させてください。」

 

「高くつくぞ。」

 

にやりと笑う。

 

「わかってます。あっと、自分は頭領に報告

 してくるッス。」

 

「相当怒られるんじゃないか?」

 

「失敗は失敗なんで・・・。ではッス。

 ・・・イテテテ・・・。」

 

体を引きずり、報告に行く。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「・・・あ、里の方が迎えに来てますね。

 よかった。先に拠点に戻って、治療の準備を

 しておきましょうか。ロウさん、あなたもですよ。」

 

「ん、ああ・・・。」

 

こうして、伊賀での戦いは終わった。

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