グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「じー・・・。」
「じー・・・。」
「・・・・・。」
なんだこれ・・・。
そう思いながら、ロウは
ソフィアの方を向く。
「あ! 越水の方を見たら、リナが目を
見られないじゃないか! こっち見るのだ!」
里菜はロウの顔を自分に向けさせる。
「・・・・・。」
「あー! そっち見たらワタシが目を見られません!
るっくあとみー!」
今度はソフィアの方に向けさせる。
「・・・このアホども・・・。」
「あ! こらよそ見するなー!」
「・・・なにしてやがんだ。」
「俺が聞きてえよ。」
こいつら・・・。こういうとこは表と
差はねえな。
「信じられる相手かどうかを確認してるさ。」
「全然わかりません・・・。」
「戦ってる連中がいるってこと忘れてねえ
だろうな・・・。」
焔はため息をつき、呆れる。
「そんなこと言うなら、来栖だって同じ
なのだ。戦ってる全員のことを考えるなら、
救護所に連れてった方がいいのだ。」
「・・・ぐ・・・・。」
「精鋭部隊をやめたのは1人で戦うからだろ?
でも突然現れたヤツを頼りにしてるのだ。
ムジュンしてるさー。」
意外と痛いとこ突くな・・・。
「頼りになんかしてねえ。ただのギブアンドテイクだ。」
「ギブアンドテイクは協力で、協力するには
信頼が必要なのだ。だからやっぱり、来栖は
1人では・・・・ん?」
「・・・・。」
里菜を鋭い目でにらんでいた。
「・・・リナ、怒らせるようなこと言ったか?」
「い、言ってねえよ。あんたが何言っても、アタシは
気にしねえ。いいな。」
「・・・ところで、なんでお前、そんなに
リナたちの手助けがしたいんだ?」
顔をロウに近づける。
「国軍に行った方がシュッセできるのにな。」
「こっちにもいろいろあるんだよ。」
「・・・お前って・・・不思議なヤツだな。」
「・・・あの・・・少し、いいですか。」
萌木がロウの肩をつつく。
「なんだ? 霧塚。」
「あなた。誰ですか。」
「いや、だから言ったろ。相田・・・」
「いいえ、先ほどまで聞いていたこととは別です。」
「? どういうことだ。」
「・・・・。」
言いにくそうにしていたが、決心を
固めた顔をする。
「・・・あなたと同姓同名、年も生年月日も
同じ人が、こちらにはいます。」
「ああ、そう・・・・・・・・・。」
萌木の言葉でロウの顔は青ざめた。
「・・・・・・今なんつった。」
「・・・あなたと、同じ名前の人が・・・・・」
「な・・・!?」
ロウの手が震える。
「だが、あの時遊佐は・・・・」
『相田ロウ、相馬レナ、
立華卯衣、朱鷺坂チトセ。この4人は
裏世界に存在していない。』
鳴子の言葉が思い出される。
「あなたは、その人の名前を名乗っている。
ですが・・・変なんです。」
「変?」
「その人は風飛大深度地下にいます。私の
魔法で確認しました。」
「・・・・・・・。」
あまりの事実に言葉が出ない。
「これは誰にも言わないでください。知られたくない
魔法です。」
「・・・・ああ、わかった。」
かろうじて、言葉を絞り出す。
「だが、いったいどうやって・・・」
「これは個体を識別する情報があれば、その詳細を
ある程度知ることができる魔法・・・つまりあなたの
名前で、あなたを知ることができます。」
「・・・もしかすると、表のお前も?」
「あなたの言うそちらの私が使えるかは
知りませんが・・・不思議です。他の
データベースでは、その人は存在しないことに
なっている。」
「存在しないだと?」
「それどころか、その人の父親がすでに
故人となっています。」
・・・その辺はこっちと同じか・・・。
「しかもそれらの情報が、ありとあらゆる手を
使って隠蔽されている・・・! あなたが
私に名乗らなければ誰にも気づかれなかったはず・・・!」
「・・・・・・。」
「・・・あなたがその名前を知っているということは
少なくとも、ただの迷い人・・・何も知らない
異邦人だとは言えない、ということ。」
「・・・お前のその話・・・本当だろうな?」
弱弱しい声が出る。
「ええ、今なら私もあなたを信じます。遊佐先輩なら
もう1つの世界があることを・・・知れます。
連絡を取り合うというのも、彼女らしい。
ですが・・・」
「?」
「あなたのことを
信じられます。あなたの情報はとてつもない
レベルで隠蔽されている。物理的に調べていたら、
絶対に気づかないでしょう。」
「・・・あいつでさえ・・・たどりつけない・・・。
だが、なんで俺をそこまで隠す必要がある?」
「わかりません。ですが、あなたは存在を
抹消されるほどに特別なんです。どうしてか、
わかりますか? 自分が何者か・・・・」
ドォォォン!!
「ひ!?」
大きく激しい爆発音が鳴り響いた。
「なんだ!?」
「萌木ー!」
里菜が険しい顔で駆け寄ってくる。
「何やってるさ! アナウンス聞いてなかったのか!?」
「アナウンス? ま、魔法使ってたから・・・。」
「魔法? 教えたのか。大丈夫か? って、
それはいいのだ! 戦線が崩れた! 国軍が
全滅したのだ!」
「全滅だと!?」
こっちじゃ撤退だけで済んでたってのに・・・!
「早く撤退の準備をするさ!」
「で、でも・・・た、戦わずに!?」
「学園だけで勝てるもんか! 悔しいけど、街を
壊されるだけさ!」
「でもこの人がいれば! ・・・・あ・・・。」
萌木は自分の手を見つめる。
「・・・あんなに、疑ってたのは、私・・・
なのに・・・。」
「霧塚・・・。」
「くそ・・・! 死んでたまるか・・・こんな
ところで・・・!」
歯がゆさから、歯ぎしりさせる。
「来栖さん・・・。ワタシに考えがあるんですけど。」
「あ? ・・・いいぜ。このままじゃ全滅だ。」
「少し離れたところですが・・・温泉脈を
見つけたんですよね。」
「死ぬときはせめて・・・ってことか?」
「ち、違います! 大量の水があれば、ワタシの力で
熱湯に変えられます。」
「その魔力がねえだろ。」
「・・・・・。」
ソフィアはロウを見る。
「あの人の、力を借りましょう。」
「だから言ったじゃねえか。もっと早く
使えば、こうならなかったかもしれないんだ。」
前線
「ったく、急に連れ出したかと思えば・・・。」
手をポキポキと鳴らす。
「・・・わ、わたしたちだけに・・・。」
「他の連中は撤退完了したみたいだな。
間一髪ってとこさ。」
「・・・別に、あんたらまでくる必要は
なかったんだ。」
「・・・この人から、目を離すわけには・・・
いきませんから。」
そう言って、ロウを見る。
「そうだぞ。見方なら、助け合わなくちゃ
いけないさ。」
「みなさーん!」
ソフィアが駆け寄ってくる。
「魔物の戦闘が見えました!」
「その温泉はここでいいんだな!?」
「はい、大丈夫です! 始めましょう!」
「よし・・・魔力よこせ。」
「はいはい。」
目を閉じ、魔力を渡す。
「慣れねえな・・・。・・・始めるぞ!」
その瞬間だった。
「・・・!?」
地面が大きく揺れ始める。