グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第202話 予知の訓練

報道部部室

 

「・・・わかった、ありがとう。さらに

 なにかわかったら連絡が欲しい。そう、

 彼についての情報。・・・君は後、数年、

 猶予がある。よろしく頼んだよ。」

 

鳴子は通話を切る。

 

「ふぅ・・・自分の寿命を知るっていうのも、

 なかなか大変だな。しかし・・・ロウ君が

 裏世界の第7次侵攻時点に移動するとは

 思わなかった。」

 

小さくため息をつく。

 

「霧の嵐はなんでもありだな・・・。これは

 夏海に任せるか。とりあえず、僕が調べなきゃ

 ならないのは彼からもたらされた情報・・・。」

 

『裏世界に・・・俺が・・・相田ロウがいた・・・。』

 

ロウの言葉が思い出される。

 

「霧塚君に嘘をつく理由はないし、嘘をつくに

 しても大深度地下は気になる。そこに何かあるのか?

 裏世界の僕たちも何も知らなかった・・・。

 ・・・・・・ふふふ。」

 

穏やかな笑みを浮かべる。

 

「僕は自分自身を過信していたのか。人間に

 当然あるはずの限界が自分にはないものだと

 思っていた。僕であっても見つけられない情報が

 あるなんてね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

校門前

 

「・・・大丈夫、ですか?」

 

「・・・・ああ。」

 

顔色の悪いロウの顔をゆえ子が

のぞきこむ。

 

「いえ、やはり顔色が思わしくない、ですね。

 お話しを詳しく伺ったわけではありませんが、

 今回の裏世界・・・お辛かったようですね。」

 

「・・・まあな。ま、そのあたりの調査は

 鳴子に任せる。」

 

「そうですか・・・。もしクエストを請けることが

 気晴らしになるなら、ゆえも気が楽ですが・・・

 きついなら言ってくださいね。キャンセルすることも

 できますし。」

 

「問題ねえよ。お前の言う通り、気晴らしも

 兼ねてるからな。それで、今回のクエストの

 目標は?」

 

そう言って、壁に寄りかかる。

 

「今日のゆえには1つ目標があるのです。魔物の

 討伐方法に関して、特別なクエストを発令して

 もらいました。」

 

「特別?」

 

「詳しくは道中にご説明します。少し遠いので、

 時間がかかりますしね。」

 

「しかし、お前がクエストか・・・。

 大丈夫なのか?」

 

「お気になさらず。引き際はちゃんとわきまえて

 いるのです。裏世界の遊佐さんに会いに行ったときの

 ように、ご迷惑はおかけはしません。」

 

 

 

 

<ロウ、ゆえ子、移動中>

 

 

 

 

洞窟

 

「それで、今回はどういう目的があるんだ?」

 

「ゆえは予知以外の魔法はあまり使えませんが・・・

 今回はその予知を鍛える訓練なのです。」

 

「予知を?」

 

鍛えてどうこうなるのか?

 

「それはですね・・・あ・・・。」

 

話している途中で、ゆえ子は目を閉じる。

 

「むにゃむにゃ・・・こちらに行きましょうか。」

 

「ん、ああ。」

 

ゆえ子の指示した方向に進む。

 

「言いかけましたが、これがゆえの目標

 なのですよ。」

 

「今のがか?」

 

「より正確に言うならば、雑魚と戦って消耗

 するのを避け・・・対象の魔物のところまで行き、

 全力で倒す、というクエストなのです。」

 

「なるほど・・・それがわかれば、少しは

 戦いが楽になるな。」

 

それで、予知の訓練か・・・。

 

「遭遇が避けられないときは、できるだけ弱い

 魔物を選んでいます。」

 

「そうか・・・。 ・・・! こいつか。」

 

「ええ。あれが討伐目標です。」

 

2人の目の前に魔物が現れる。

 

「まだゆえは、体力自慢とは言えませんから・・・

 この遭遇で倒してしまいたいですね。

 頑張ります。」

 

そう言って、ゆえ子は身構える。

 

「『ROOM』!」

 

青色のサークルを張る。

 

「ほぁぁ・・・!」

 

ゆえ子は小さな光の玉を出し、

魔物に当てる。

 

「『タクト』!」

 

周りの石や岩を動かし、魔物を

攻撃する。

 

「・・・ここだ!」

 

魔物がロウの攻撃をかわした先には

ゆえ子の魔法が待ち構えていた。

 

攻撃が当たり、魔物がうめき声をあげる。

 

「・・・!」

 

しかし、霧散せず、奥に逃げていく。

 

「はぁ、ふぅ・・・逃がしてしまいました。

 ・・・少し、休ませてください。その後に

 追いかけましょう。」

 

「ああ、わかった。」

 

ゆえ子はその場に座り込む。

 

「うぅ・・・。入学した時期に比べたら、

 ずいぶんと力強くはなったのですが・・・予知の

 魔法の制御ができないので、魔力が垂れ流しに

 なっているのです。」

 

「前に、聞いたことあったな。」

 

「それがなければ、人並みの体力があると

 聞いています。頑張っていますが、予知の魔法は

 制御がむつかしいのですよ。」

 

そう言って、小さくため息をつく。

 

「ゆえ以外の2人も、制御することは

 あきらめています。」

 

「そこまで難しいとはな・・・。」

 

「幸い、常々視える未来の中から対象を絞り込む

 ことはできるので・・・垂れ流しだから損を

 する、というわけではないのです。」

 

「そうか。」

 

「とはいえ・・・」

 

「?」

 

ゆえ子は顔を下に向ける。

 

「戦場に出ても、あまり役に立てないというのは・・・

 ちょっと辛いのですよ。」

 

「そう言うな。それに、それで救われる命も

 あるだろ。」

 

「・・・確かに、そうですね。」

 

穏やかな笑みを浮かべる。

 

「さて・・・・そろそろ行くぞ。」

 

 

 

 

<ロウ、ゆえ子、移動中>

 

 

 

 

 

「・・・いたな。」

 

「ええ。」

 

さっきの魔物は少しふらつきながらも

周りを見ている。

 

「さあ、次こそ倒してしまいましょう。

 そうしないと、ゆえが動けなくなってしまい

 ますから。」

 

「だがダメージは与えている。もうひと押しで

 ヤツを倒せる。」

 

「ええ。ロウさんから魔力をいただければ、

 まだまだ全力は出せますし・・・なにより」

 

ゆえ子はロウの顔を見る。

 

「なにより、ゆえにはやる気があるのですよ。

 やる気満々です。」

 

「そりゃあ、何よりだ。」

 

にやりと笑う。

 

「これで、自分がもっと役に立てると実感できれば

 ・・・その自信が魔法のレベルアップにつながるのです。

 逆に失敗すれば、ゆえは意気消沈してしまいます。」

 

「そこまで思うかよ・・・。」

 

「チャンスとはそういうものなんですよ。

 ですが、運否天賦ではありません。」

 

ゆえ子は身構える。

 

「勝算はあるのです。頑張りますね。」

 

「・・・行くぞ。『ROOM』! 

 『シャンブルズ』!」

 

ロウが一気に、魔物の前までに移動する。

 

「『カウンターショック』!」

 

不意を突かれた魔物は

避けられず、電撃を浴びる。

 

「ゆえ子! 準備しろ!」

 

「はい・・・!」

 

光の玉を出現させる。

 

「『シャンブルズ』!」

 

ロウとゆえ子の位置を入れ替える。

 

「はぁ・・・!」

 

光の玉が魔物に当たる。

 

魔物はうめき声をあげて、霧散した。

 

「・・・ふぅ・・・なんとか倒せましたね。」

 

「自信あるんじゃなかったか?」

 

「いえ・・・この通り、弱いですから。

 クエストを成功させるためにいろいろと工夫を

 凝らしましたが・・・自分がここで勝てるか

 どうかを視ることができませんでした。」

 

「ここは予知できなかったのか?」

 

「はい。ここで勝つ未来を視ることが一番

 確実なのです。それができるように今後も

 頑張らなくてはいけません。」

 

ため息をつく。

 

「だが、魔物は倒せた。クエストも成功だな。」

 

「ええ。お祝いができますね。ロウさん、今日は

 ありがとうございました。学園に帰りましょうか。」

 

「ああ。」

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