グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「ここ・・・裏世界・・・?」
「う、裏世界にしても、こんな・・・
どれだけ時間が経てばこんな風に・・・。」
智花は周りの大自然を見る。
「木がとても大きい・・・屋久島みたいです。
それに、なんだか穏やか・・・。」
「穏やか、か。智花・・・それきっと、
あってるべ。」
「これをこうやって・・・ほいほいっと。」
梅は何かを準備している。
「それ、なんですかぁ?」
さらがそこに近寄る。
「簡易衛星。衛星っていっても、数百
メートルしか上がらないけどね。」
「かんいえいせい?」
「例えば、ここで写真を撮っても、森があるって
ことしかわからないでしょ?」
「そうですねぇ。おっきな木がたくさん
ありますから。」
「なら、木よりも高いところから写真を
撮ったら、このあたりがどんな場所か、
わかると思わない?」
「・・・おおー! なるほどですぅ!」
目を輝かせる。
「ちっちゃなカメラを今から打ち上げるの。
ボヒュンって。」
「ぼひゅん、ですかぁ!」
「そう、ボヒュン。見ててね・・・」
そう言って、梅は装置の周囲を見る。
「・・・あれ? どれ押せばいいんだっけ。」
「そのスイッチだ。」
ロウがスイッチを指で指す。
「あっ、ありがとう。えい。」
ボォン!
あまりの音に梅はひっくり返る。
「だ、大丈夫ですかぁ!?」
「だ、だいじょぶ・・・。びっくりしたぁ。
こんな音出るなら先に言っといてほしいわ・・・。」
「始祖十家にも、あのような方がいらっしゃるの
ですね。さて・・・なにかしらの情報が
得られないかと来てみましたが・・・。」
シャルロットは周りをきょろきょろと見る。
「場合によっては何も残っていないかも
しれない。覚悟しておきましょうか。」
「シャルロット。」
「おや、ロウさん。どうなさいましたか?」
「気のせいかもしれないが・・・妙に
空気が澄んでいるような感じがしてな・・・。」
「ええ・・・。初めてです。こんなに・・・
気持ちがよいのは。」
シャルロットは大きく息を吸い込んだ。
「・・・・・・うぅ?」
「レナ、そろそろ行くべ。」
「うー・・・。」
「・・・レナ? おおい、レナ。」
「う・・・あ、かりん。」
レナは目をごしごしとこする。
「そったらボケッとして、なしたっきゃ。
眠いべか?」
「うー、へん。レナ、へん。」
「何が変だぁ?」
「うぅ、レナ、わかるない。レナ、ねむねむ。」
何度も目をこする。
「眠いのか。まだ始まったばっかだすけ。
我慢してけろ。」
「レナ、ねむない。わかるない、ねむねむ。」
「眠くねぇのに眠い・・・? ううん、よく
わかんねぇなあ。レナ、我慢できなくなったり、
また変な気分になったら教えてけろ。今はとりあえず、
ここがどうなってんのか調べねばな。」
ロウたちは少し奥に進んだ。
「あの建物って、ビルですよね。」
「ああ。」
視線の先にはビルが木に飲み込まれた
光景が広がっていた。
「人は・・・いなさそうだな。」
「でも学園のゲートからいける裏世界とは
違いますね。どこからか動物や鳥の声も
聞こえますし・・・。もしかしたら、
動物・・・さん・・・。」
「・・・!!」
2人の前に虎のような生き物が現れる。
「ろ、ロウさん! 下がってください! 魔物です!」
「!? しまった、囲まれているぞ!
いつの間に・・・完全に気配に気づかなかった・・・!」
「ま、まものさんですかぁ!?」
「・・・・・さらちゃん、私の近くに。」
さらは梅の側に寄る。
「あれは・・・魔物? いえ・・・・・・。
みんな! 魔法を使うときは注意しなさい!」
「攻撃します!」
智花は魔法で攻撃しようとするが・・・
「・・・え? ほ、炎が出ない! えい!
えい!」
しかし、炎が出る気配はない。
「レナ、ダメだレナ!」
「レナ、へいき! まもの、ころす!」
「ダメだべ、魔法が発動できねえんだ! 魔法なしで
魔物と戦っちゃ・・・」
「やぁー!」
花梨の言葉を聞かず、レナは向かっていく。
「レナ!」
「一匹一匹は強くないが、量が多い。しかし
どういうことだ。魔法が使えない・・・いや、
効果が極端に低い・・・。・・・・?
まさかここは・・・!」
「ちぃ・・・!」
ロウは何体も斬りつけた。
「・・・!」
「ど、どうしよう・・・魔法が、魔法が・・・」
「うろたえるな学園生! ロウ君、全力で
全員に魔力補給! みんな、死ぬ気でぶっ飛ばしなさい!」
「了解・・・!」
目を閉じ、全員に魔力を与える。
「で、出た・・・! 魔法、出ました・・・!」
一気に敵を倒していく。
「よかった・・・魔法が使えなくなったわけじゃ
ないんだ・・・。」
「大丈夫か、智花。」
「ろ、ロウさん・・・すみません、うろたえちゃって。」
少し顔を赤くする。
「ろー!」
レナが駆け寄ってくる。
「ろー! レナ、へん! レナしる! しるしてる!」
「知ってる? 何をだ? レナ。」
「えっと、んー・・・レナ、わかるない!」
頭を大きく横に振る。
「何が起きた・・・私の魔力は十分だ。なのに
なぜロウの・・・! 貴嬢はなぜ、魔力譲渡で
魔法が使えるとわかったのだ!?」
レティシアは梅に詰め寄る。
「肌で感じたでしょう? 爽やかってことは・・・
魔法を使える条件が整っていないの。ここは霧が
薄い・・・いえ、
霧がなければ魔法は本来の威力を発揮できない。」
「・・・何を言っている。それではまるで、我らが
霧を用いて魔法を・・・」
「使っているのよ。普段はね。だから霧を払うと
そこでは魔法が弱くなる。思い当たる節、あるでしょ?」
「・・・・・。」
ロウは横たわって動かなくなった
虎を見ていた。
「? ロウさん、どうかしたんですか?」
「・・・妙だ。」
「え?」
「これが霧の魔物なら、そろそろ霧散しても
いいはずだが・・・さっぱり消えない。」
魔物の近くに座る。
「・・・! これは・・・。」
虎に触ると赤い液体が指先に
付着していた。
「血・・・? てことは、これは魔物じゃないな。」
「魔物じゃない?」
「・・・一度、我妻梅のとこに戻るぞ。
いろいろ起こりすぎている。」
「・・・・・・。」
レナはじーっと、ロウたちとは
別の方向を凝視している。
「あっち・・・・・。あっち・・・。」