グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・ここにたくさんの人間がいて・・・
レナもここにいた・・・?」
「ロウさ~ん、かりんちゃ~ん。」
さらが2人に駆け寄ってくる。
「どうした、さら。」
「あのぉ、あっちの方にですねぇ、
お皿とかがたくさんありました!」
「皿・・・生活の跡? ちょっと案内してけろ!」
花梨は駆け出していく。
「ふぇ? かりんちゃん、あっちの
たてものですよ~! どうしちゃったんでしょう・・・?」
「かりん、まつ! さら、いっしょいく!」
「ふぇぇ? い、いきますけどぉ・・・」
レナはさらの手をつかんで走っていく。
「きゃぁ~!」
「ったく・・・!」
<ロウたち、移動中>
「・・・なるほど・・・・。」
そうつぶやくと携帯をしまう。
「我妻様。皆さま、もう調べ始めていますが・・・
どうかなさいましたか?」
「いえ、さっき打ち上げた衛星からのデータが
送られてきてね。今、宍戸博士たちが分析
しているの。で、速報だけもらったんだけど・・・
・・・・ここ、500年後よ。」
「・・・ご、ごひゃくねん・・・?」
あまりの事実にシャルロットは
驚きを隠せない。
「これで、ここまで自然が繁栄した理由が
わかるわ。霧の汚染が浄化されてしまうほどの
年月。文明も何もかも飲み込まれてしまったのね。」
「・・・では、ここは・・・」
「ええ。霧も残っていない。文明も、おそらく
人類も。私たち人類と魔物の戦いが、すでに
終わってしまった時代。エンディングのその先ね。」
「なにか、残ってねえか? レナのことが
わかればなんでもいいすけ。」
花梨はレナについての情報を探す。
「だ、だけど・・・長い間、ずっと放置されてた
場所だよ。電子機器は動かないし、こんなに
荒らされてたら記録も・・・」
「ほんの少しの文字でいいんだ。レナが
ここで生まれたなら・・・きっと霧の嵐で
おらたちの時代に移動してきたんだ。それが
わかるような、なにか・・・記録が残っていたら
レナの過去が分かるんだべ!」
「・・・花梨ちゃん・・・。」
「かりん、なに?」
智花の戦闘服を引っ張る。
「レナちゃん・・・ううん。ね、花梨ちゃんと
一緒に、何かないか探そっか。」
「する! レナ、さがすする!」
「えっと、霧がなくて、魔物もいなくて、木の実が
なってなくて・・・でも、ここがレナちゃんの
生まれ故郷・・・? な、なんだか意味が
わからなくなってきました。」
頭を抱える。
「まあ、無理もないわな。」
「ここって、ホントに私たちの知ってる
裏世界、なんでしょうか・・・?」
「う~ん・・・これ以上どこを探せば
いいんだ・・・。」
「記録を探すなら、あの角から地下に降りられるわ。」
梅はその場所を指さす。
「ここ、ゲネシスタワーだから。」
「!?」
「座標が一致したの。きっと最終的に、ここも
霧に飲み込まれたのね。外観が歪んで、同じような
デザインのビルが増殖してる。でもこの位置のビルが
本物。だから資料があるなら、ここね。」
「・・・霧がないのは、確かなのですね。」
後ろからシャルロットが尋ねる。
「ん? ええ、そうだけど。」
「ゲートを通じて、表から霧が
入ってこないのですね。」
「ああ、それは私も気になったけど・・・
よくわかんないや。」
「・・・・。」
梅の言葉を聞き、何かを考え始める。
「あなたが今、何考えてるか当ててあげよっか。
こっちに移住しちゃえば・・・でしょ?」
「・・・はい、そうですね。」
「・・・! 花梨、あったぞ。」
「!」
花梨はロウとともにぼろぼろの本に書かれた
あるものを見つけた。
「・・・これは・・・・」
「・・・読むぞ。」
・・・ひとにとって、さいごのひとが
うまれた。
かずすくなく、ひとはもうしにたえる。
むかしにあったことばというもの、ひとは
なくなった。
むかしのもじというもの、わたしひとり
わかる。
しかたないかも。わたしはかくけれど、
わかるひといない。
けれど、ひとがいた。さいごのひとまで
ここにいた。
もじをのこす、ひとだから。
わたしたちはなまえもないが、さいごの
ひとになまえをあげる。
もじをのこす、ひとだから。
なまえをたくさんみた。
うれしいものをえらんだ。
なまえ、れな。
「・・・・・・。」
数時間後
結希の研究室
「・・・了解。他のサンプルを回収したら、
グリモアのノルマは終わり。」
結希は花梨と通話している。
「念のために言っておくけど・・・確定した
わけじゃないわ。レナを育てていたモンスター
レディガードは現代の魔物よ。レナが未来の
裏世界で生まれ、霧の嵐で表に来た・・・」
その間にも、キーボードを操作する。
「そしてたまたまモンスターに発見され、無事に
育てられた・・・。それはなくはないという
レベルの推論でしかない。断定できない。そもそも
そこに住んでいた人たちがいなくなってから・・・」
資料を見る。
「どれだけ時間が経っているかも、まだわからない。
調査が必要。結論を急ぐのはやめて。今の
段階でレナに伝えるのは・・・無責任・・・・だわ。」
そう言って、通話を切る。
「里中さんがあんなに取り乱すなんて・・・。
レナが行ったのは偶然・・・でも、こんな
偶然・・・。」
「・・・・・。」
花梨は見つけた本をじっと見ている。
「この記録、持って帰っていいべか?」
「も、もちろん! だってレナちゃんの
ことが書かれてるものだし!」
「・・・無責任、か・・・。おら、難しくて
わかんねぇよ・・・。」
不安になりながらも、レナを見る。
「・・・レナ、おいで。」
レナに向かって手招きする。
「うぅ?」
花梨に近寄る。
「待っててねぇ・・・きっと、おらが
見つけやるすけ。」
「なに?」
「・・・待っててね・・・。」
深夜
寮 ロウの部屋
「・・・・・・。」
ロウはパソコンを操作している。
「・・・・だめだ、やっぱりねえな。」
そう言って、頭を抱える。
『始祖十家のマーヤー・デーヴィーがロウ君の
命を狙っているからよ』
「・・・マーヤー・デーヴィー・・・。」
画面にはマーヤー・デーヴィーの
情報が映し出されていた。
「俺が過去にかかわった仕事に、こいつおよび
その血縁者は出てこない・・・だとすると・・・。」
さらにキーボードを操作する。
「・・・天羽の協力者にも名前は
ないな・・・。・・・くそ。」
一体奴は、なんのために俺を・・・?
「・・・これ以上考えても、意味はないな。」
そう言って、パソコンを閉じようとする。
「・・・!」
ロウのパソコンのセキュリティが
反応する。
「まさか、また奴が・・・!? ちぃ!」
先ほどまでとは違うスピードで操作する。
「・・・思ったよりやるな・・・。だが・・・!」
強くエンターキーを押す。
「よし・・・。・・・・・。」
しばらく様子を見る。
「・・・退いたか。前より強いプロテクトに
したからな。だが、うまく痕跡を消しやがったな・・・。」
もしかしたらいずれ・・・会うことに
なるかもしれないな・・・
命をかけて・・・。