グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
ふうびきっず
「みんなー! 警察署長、絢香だよ♪
警察のお仕事、手伝ってくれるかなー?」
絢香が呼びかけると、周りの客が
盛り上がる。
「すごい人気ネ! こんな中で警備するのカ?」
小蓮は周りをきょろきょろと見る。
「マスコミや人の目がある場所で、
一般市民のために尽力する・・・・。
今回はそう言った、対外的なアピールだと
割り切ってください。」
薫子は穏やかな声で説明する。
「重々承知しておりますわ。魔法使いの貢献を
知らしめるとともに・・・野薔薇として
恥ずかしくないよう、任務を全うしようじゃ
ありませんか!」
「ゴチャゴチャ考えるの苦手だケド、要するに
よい子に見えればいいのダロ?」
「身も蓋もないことですが、つまりはそういうこと
です。同様のクエストで慣れている人もいる
でしょうが・・・皆さんの行いこそが、
魔法使いの今後を左右します。気を引き締めて臨むように。」
「わかりましたわ!」
「は~い。」
「・・・さて、と。」
「・・・・はぁ。」
「うーむ・・・。」
姫、薫子、小蓮は横にいるロウを
ちらっと見る。
「・・・うはぁ。水瀬さん、李さん、野薔薇さん・・・。
みんなの考えていること丸聞こえだよ~。」
絢香は思わずため息が出る。
「うーん・・・大変そうだな。でもあたしが
口出すのもおかしいし。いつも通り、明るい
絢香ちゃんでいようっと。・・・ん?」
ロウの姿を見つける。
「あれは・・・ロウ君じゃない。なんか
久しぶりに感じるなぁ。おーい、ロウく・・・」
絢香はロウの心の声を聴く。
「・・・うわ。ちょっとこれは・・・・
キツイかもだなぁ・・・。ん、まあ・・・
話だけでも、聞いてあげようかな。」
ロウに近づく。
「はろはろー♪ 絢香だよ! ロウ君
こんにちはー!」
「ああ、絢香か。どうした?」
「・・・あれぇ? なんかすっごく疲れてる
みたいだけど。」
「・・・・お前心読んだろ。」
疑う目で絢香を見る。
「べ、別に? 普通に顔見たらわかるよ。
目の下にクマが・・・」
「いや、読んだんだよな?」
「しー! しー! 読んでないって・・・
エヘン! ゴホン!」
周りを見て、咳払いをする。
「ろ、ロウく~ん? ちょっとバックヤードに
行こうか?」
「ぐえ!」
ロウの襟を思い切り引っ張り、
連れて行った。
バックヤード
「まったくもう・・・。しょうがないでしょ、
意識しなくても聞こえちゃうんだから!」
「やっぱ読んだんじゃねえか。」
「はい、読んだわよ。あなたの心を読みました!
だから・・・元気づけてあげようかと
思ったんじゃない・・・。」
ロウをじっと見る。
「ひどい顔色なのはホントだからね。
どんだけ疲れてんのよ。」
「ああ、悪かったよ。いろいろあったんだ。」
「わかってるわよ。いーい? あなた、
今日はテキトーにしてなさい。それにあなた
だって、人のこと心配してる場合じゃないでしょ。」
絢香はロウに向かって、指をさす。
「てきとー?」
「そう! あたしの心配とかはしなくていいから!
このくらいの仕事は楽勝だし! まあ、今日は
人の多い場所だから、ちょっとうるさいけどさ。
今に始まったことじゃないし、大丈夫よ。」
「・・・・そうか。んじゃあ、遠慮なく・・・」
「ろ、ロウさん! 教えてくださいまし~!」
震えた声で姫が入ってくる。
「? どうした、姫。」
「私、あちらで販売をしているのですが・・・」
コンビニのような店を見る。
「そんな常識的なこともわからないのか、と
お客様に叱られまして・・・どうすれば
いいのか・・・。ロウさん! お願いします、
助けてくださいまし!」
「あ、野薔薇さん! 待って、今ロウ君
ちょっと疲れてるから・・・」
「・・・ったく、今回だけだぞ。」
ロウは姫とともにバックヤードから出る。
「・・・行っちゃった・・・。んもう、
あのお人好し! はあ、今回はなかなか
尖った面子だけあって、悩みも・・・。」
深くため息をつく。
「ロウ君がいちいち対応してたら、ホントに
身が持たないわよ。・・・んー・・・・
しょうがないなぁ。絢香ちゃんがいっちょ
一肌脱ぎますか。」
「はぁい、警察官になりたい子はこっち
だよ~! お医者さんはそっちね。」
子供たちを案内していく。
「おっとと・・・君ははぐれちゃったのかな?
じゃ絢香と一緒にいよっか?」
「さすが皇さん、芸能人だけあって、慣れた
立ち回りですわね・・・。」
絢香の様子を見て、姫は感心する。
「私も負けていられません。早くこの商品を
並べ終えなければ!」
そう言って、サンドウィッチを手に取る。
「商売とは、お客様の気持ちになることが
大事・・・それならば!」
次々と並べていく。
「おーほっほっほ! どうです、この完璧な
陳列ぶり! 美しさ、手に取りやすさを考え、
これ以上なく・・・」
しかし、注意されてしまう。
「え、や、やり直しですの!?」
「あちゃ~・・・やっちゃってるな・・・。
野薔薇さん、絢香今ヒマだし、手伝おっか?」
姫を見かねて、絢香が声をかける。
「あ、皇さん。そんな・・・でも、確かに
量が多いですから・・・お願いしようかしら。
・・・ありがとうございます。」
「ううん、いいよいいよ。」
「・・・あら? 皇さん、そちらの取材の方が
写真を撮りたいと・・・。」
そう言って、1人の記者を見る。
「・・・!? ・・・うぅ~・・・」
「どうされました? 私は構いませんが・・・。」
「ご、ごめん。ちょっとメイク崩れてるかも・・・
あ、記者さん! 撮影は後でお願いします!」
「皇さん!?」
絢香は記者から離れる。
「ああもう、なにが『軍にすり寄るアイドル』よ!
『野薔薇、コンビニ作業もできず』? 当たり前
じゃない、初めてだし!」
記者の声が散々聞こえていたようだ。
「変な見出しつけられたらこっちの人生に
関わるんだから・・・。・・・野薔薇さん、
大丈夫かな。ロウ君にフォロー頼んだほうが・・・」
途中で言葉を止める。
「いや、ダメだ。やっとバックヤードに押し込んだ
のに・・・。ロウ君だってボロボロだもんなぁ。
今日くらいはお気楽なクエストとしてのんびり
やってもらわないと・・・いくらロウ君でも
つぶれちゃうよ・・・・。」
そのころ
バックヤード
「zzzzzz・・・・・。」
ロウはうつぶせで床に
寝っ転がっていた。
にしても、あいつ・・・。
『ここ1か月で、いろいろあったんでしょ。
背負いこみ過ぎよ。ちょっとのんきにしたって
・・・バチは当たらないから。あなたは
気にしなくていーの。ね?』
あんなふうに言われるとはな・・・。