グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

218 / 337
第209話 本気

「・・・フクカイチョ。」

 

「あら? 李さん、それは・・・」

 

小蓮の手には青い饅頭があった。

 

「ブルーコード饅頭。ワタシが自腹で

 買ってきたネ。その・・・・・

 フクカイチョにあげようと思ってサ。」

 

饅頭を差し出す。

 

「・・・私に? どうして・・・」

 

「さっき、ワタシと話してるとき、

 フクカイチョはがっかりしてたネ。なんか

 悪いこと言ったかナと思ってサ・・・。」

 

「・・・ああ、あれですか。」

 

さっきの会話を思い出す。

 

「大丈夫ですよ。あのくらいの冗談で

 傷ついたりはしません。・・・私の方こそ

 李さんを不安にさせてしまったかしら。

 学園生をそんな気持ちにさせるなんて、

 副会長失格ですね。」

 

穏やかに笑う。

 

「ンーン、いいのヨ。ワタシもたまに空気が

 読めない時があるからナ。たまにナ。

 さあさあ、冷めないうちに食べるヨ。

 おいしいヨ。」

 

「ええ、それではお言葉に甘えて・・・いただきます。」

 

受け取り、饅頭をかじる。

 

「・・・あら、おいしい。」

 

「そーかそーか! そりゃよかったヨ!

 さすがワタシネ!」

 

「ええ、見た目は真っ青ですけど・・・温かくて

 ・・・素朴な味ですね。」

 

「ダロ。なんかサ、アヤカがロウ疲れてるって

 言ってたカラ・・・これいっぱい食べさせて

 回復してもらおうと思ってナ。」

 

ちらっとロウを見る。

 

「それでヤツの様子見てたんだケド・・・・

 フクカイチョもよく一緒だったからサ。

 フクカイチョもロウを元気づけようとしてたカ?

 もしかして。」

 

「え? それは・・・」

 

「ロウは幸せネ。みんなに気をつかってもらって。

 でもそれは、ロウがみんなのこと考えて

 行動していたからネ。気持ちをあげたら

 その分返ってくるヨ。因果応報・・・・・

 ん? ちょっと違うカ?」

 

そう言って、首をかしげる。

 

「・・・そう・・・そう、ですね・・・。」

 

「お、もう饅頭食べちゃったカ?

 もうひとついるカ?」

 

「はい、いただきます。」

 

 

 

 

 

 

「副会長。」

 

ロウが近づいてくる。

 

「あら、ロウさん。ちょうどいいところに。」

 

「? なんだ。」

 

「皆さんのところに戻る前に、少しだけ

 お話ししましょう。」

 

「他の奴らの前じゃしづらいのか?」

 

「ええ。あまり勧誘しているところを

 見られたくありませんから。」

 

にこりと笑う。

 

勧誘・・・・・。

 

「どうせ、生徒会に入れってことだろ?」

 

「そうですね。どういう方法であなたを

 生徒会に引き入れるか・・・。ずっと考えて

 いたのですよ。」

 

「やっぱ、そんなことか。」

 

「ですが・・・下手な駆け引きよりも、あなたには

 もう本当のところを伝えた方がよいと思いまして。」

 

「・・・・・。」

 

「・・・あなたのその命、虎千代の偉大な

 目的のために貸していただきたいのです。」

 

・・・は?

 

あまりのことに、ロウは首をかしげる。

 

「魔法使いの国を作るという最終目標は

 もとより・・・人々を守る魔法使いとして、

 霧の魔物を殲滅するということについても。」

 

「・・・なるほど。」

 

「あなたは学園に・・・私たちに

 欠かせない人。それだけの価値を持つ人。

 ですから敬意を持ってお誘いいたします。」

 

じっと、ロウの目を見る。

 

「ここまでご一緒して、私たちの意思疎通は

 しっかりなされました。迷うことは

 ありません。うん、と頷いていただ・・・」

 

「おっと、そろそろ時間だ。戻るぞ。

 副会長。」

 

「・・・ええ。そうですね。」

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、お疲れさまでした。駐車場で

 30分後に点呼を取ります。更衣室は

 きれいにしてから撤収してくださいね。」

 

「お疲れさまでしたー!」

 

各々、更衣室に向かう。

 

「いやー、終わった終わった。なかなか

 有意義な時間だったヨ。」

 

「ええ。みなさんに助けられましたわ。

 忘れないうちに報告書を書きましょう。

 ・・・ロウさん。」

 

「ん?」

 

「あなたには今日も励まされました。

 ありがとうございます。いつかあなたを

 野薔薇に迎える時が楽しみですわ。」

 

・・・まだ言ってたか・・・。

 

「ちょっとちょっと! さっきも言ったけど、

 ロウは中国に来るのヨ! ワタシの店を

 手伝うんだカラ、身軽でいてもらわないとダメ!」

 

「あら、李さん。私も細かいことは気にしませんわ。

 中国に野薔薇が飲食店を展開するくらい、

 ありえないことではありません。李さんのお手伝いは

 私の夫になってからでも十分ですわ!

 おーほっほ!」

 

「あがー! 何勝手なこと言ってるカ!

 ワタシの店よ、ワタシの!」

 

小蓮は姫を追いかける。

 

「・・・おつかれー。」

 

「ああ、お疲れさん。」

 

「ほーんと、モテモテよねぇ。」

 

絢香はジト目でロウを見る。

 

「何の話だ。」

 

「・・・なんでもないわよ。ていうか、

 ごめんね。気遣うつもりだったのに・・・」

 

「気にするな。最初で少し休めたしな。」

 

「そっか・・・なら今度オフの時、

 ラーメンでもおごってあげる。」

 

「それはありがたいな。」

 

にやりと笑う。

 

「だから・・・さっさと元気になりなさいよね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あら、ロウさん。まだ着替えて

 なかったんですか?」

 

すでに制服に着替えた薫子が

ロウに声をかける。

 

「もうすぐ集合ですよ。急いでくださいな。」

 

「ああ、わかってる。」

 

「・・・例の話。」

 

「ん?」

 

「例の話、あなたからの返答がうやむやに

 なってしまいましたが・・・またお話し

 しましょう。いずれ、しっかり時間を

 とって。」

 

にこりと笑う。

 

「とはいえ、しばらく忙しいんだがな。」

 

「ふふ・・・確かにそうですね。ですので今日

 少しでも、ご一緒できてよかったと思いましょう。」

 

「ずいぶん満足気だな。」

 

「ええ。今の私の考えを、あなたに

 お伝えできましたから。・・・・私は、

 本気です。」

 

 

 

 

 

 

 

そのころ

 

寮 

 

浅梨の部屋

 

「お、お邪魔しまーす・・・。」

 

恐る恐る香ノ葉が入ってくる。

 

「やぁやぁいらっしゃい、白藤さん。」

 

梅がにこやかに笑う。

 

「ど、ども・・・ウチになんか用

 でしょうか・・・。」

 

「そんなかしこまらなくてもいいって。

 ちょこっとお願いがあるだけだから。」

 

「おおおお願い? でも始祖十家の方に

 ウチが手伝えることなんて・・・」

 

「ロウ君のためだよ?」

 

「やります!」

 

勢いよく手をあげる。

 

「・・・お姉ちゃん、いつの間に

 白藤先輩のこと調べたんだろ・・・。」

 

「そ、それでウチにお願いって・・・」

 

「うん。あなたの精霊で学園を監視して

 ほしいのよ。」

 

「学園に?」

 

首をかしげる。

 

「それでちょこっと、みんなを監視して

 ほしくて・・・バレずにできる?」

 

「それが・・・できへんのです。ウチ、

 風紀委員に注意されとって・・・学園で

 魔法を使ったらお説教されてしまうんですよ。」

 

「おっけ。じゃあ私が言っておくから。」

 

携帯を取り出し、風紀委員に連絡する。

 

「・・・おっけ。存分に使っていいわよ。

 今から、はい。」

 

「・・・・・。」

 

梅をじっと見る。

 

「どしたの。秘密にしておきたい?」

 

「ひぇ? いや、ホンマに大丈夫です?」

 

「大丈夫。んじゃ、学園の監視お願いねん。」

 

そういって、部屋から出る。

 

「・・・急がないと、狙ってくるかも

 しれないからね。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。