グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「てことで我妻。めちゃくちゃニュースやってん
だけど、説明しなさいよ。」
天は浅梨に詰め寄る。
「なんでインドの始祖十家が日本で騒ぎ
起こしてんのよ。アレってちょっと前に
来日したまま行方不明になってた人でしょ?」
「私にもわかりません・・・でも・・・
デーヴィーさんの目的は、先輩を・・・
殺すことだと・・・。」
言葉を詰まらせながらも話す。
「はぁ?」
「なんだよそれ! 意味わかんないぞ!
はしょるなよ!」
「そうなんです、意味が分からないから・・・
先輩、聞きに行くつもりなんです。」
「はあぁ!? ちょっと待てよ! 死ぬだろ!
始祖十家だぞ!」
あまりのことに望は声を荒げる。
「ったく・・・アイツ、自分が死なないとでも
思ってんじゃないでしょうね。」
「お、お姉ちゃんと同じこと言ってる・・・。」
「北海道や科研のこと、忘れたわけじゃ
ないでしょうに・・・! ・・・!」
科研で天はふと、思い出す。
「・・・・・科研・・・・・・。
・・・わかったわよ、私も行くわ。」
「うぉい!? なんでそうなった!?」
「私、アイツに借りがあるのよね。借りっぱなしは
嫌だもの。返しとくいい機会だわ。」
にやりと笑う。
「おいおいおい! 返すとかそういう問題じゃ
ないだろ!
「ロウ以外は殺さないって言ってるんでしょ?
ならやりようはあるわよ。」
「はぁ・・・もう仕方ないわ。」
梅はぐしゃぐしゃと頭を掻く。
「ジェイソンが彼女に『ロウ君以外の死者は
出さない』って言質を取ったわ。」
「言い方、ちょっと違ったみたいですけど・・・。」
「同じよ。どっちにしろ、ロウ君を殺すために
ほかの魔法使いに手をかけたら・・・彼女の
信頼は失墜するもの。」
「これがバレれば同じことだろうがな。」
「とにかく、私はロウ君の側を離れない。
真理佳ちゃん、お願いがあるんだけど。
現学園長、冷泉葵さん、神宮寺茉理ちゃんに
連絡して。」
「・・・あ、はい・・・でもどうして?」
「グリモアと始祖十家が戦うところなんて
報道できるもんじゃねえだろ? 使えるものは
なんだって使うまでだ。」
再びロウは後ろを見る。
「ロウ君、行くなら覚悟ね。待つだけじゃなく・・・
いきなり攻めてくるのも、彼女の戦い方。
注意しすぎても、まだ足りないから。」
学園
生徒会室
「なに!? ロウが!?」
報告を聞き、虎千代は
机をバンとたたいた。
「馬鹿な! 死にに行くようなものじゃないか!」
「多分、もう何回も言われてると思うわよ。」
チトセは小さくため息をつく。
「・・・ロウ君、最近いろいろあったでしょう。
きっと裏世界に自分がいたってことと、今回の
事件・・・何か関連性があるって考えてるの
かもしれないわね。」
「だからといって直接問い詰めに行くなど・・・!
・・・アタシが行く!」
立ち上がり、ロウのもとに向かおうとする。
「ダメよ、あなたはグリモアの顔だという
ことを忘れないで。あなたが行ってしまえば
場合によってグリモアが世界の敵になる。
あなたと学園長が絶対に行ってはダメ。」
「ロウを見殺しにしろと言うのか!」
「とにかく、放っておけばみんなが戦いに
行ってしまう。戦場に人が多くなれば、
デーヴィーの思うつぼ。だから・・・」
虎千代の肩をポンとたたく。
「あなたの役目は学園を鎮静化させること。
きっとみんな動揺しているわ。里中さんや
遊佐さん、海老名さん、アメディックさんに協力を
仰いで。戦うだけが彼への献身じゃない・・・
いいわね?」
「・・・ぐ・・・わかった・・・・・。
朱鷺坂・・・お前が行け。東雲とだ。
マーヤー・デーヴィーを止めろ。いいな。」
「ええ・・・そのためにここに来たんだもの。」
「か、会長、大変です!」
聖奈が慌てた様子で入ってくる。
「あの・・・来客が・・・。」
「来客? こんな時に・・・。 !?」
入ってきた人物を見て、
虎千代は動揺した。
「失礼。悪いね、だけど・・・・こんな時
だからこそ、話を聞いてほしい。」
「コ・・・コズミックシューター・・・!」
「なんだとぉ・・・? ロウを殺す?」
メアリーが不機嫌そうな声を出す。
「始祖十家のくせにナメたこと言いやがったなオイ。」
「メアリー、よせ。私たちに出動命令は
下っていない。」
「学園の最大功労者がヤられそうだってのにかよ。」
「その相手が人類の最大功労者だからだ!
好き嫌いだけで動くな! ・・・私が
どういう気持ちで待機命令を聞いたと思っている・・・!」
エレンは唇を噛みしめる。
「ちょっと、ツク達どうすればいいのよ・・・。
こんな時にアイツを放っておいていいわけないのに。」
「・・・・・クソッタレ。つべこべ言わずに
行きゃいいんだ。」
学園長室
「・・・わ、わかりました。お父様に、
ですね。」
「全て話してよいのですね?」
葵と姫が確認する。
「うん。だいじょうぶ・・・えっと、
だいじょうぶなんだよね?」
「ええ。そもそもマーヤー・デーヴィーは
魔物退治だと宣言しています。」
薫子は大きく頷く。
「それが偽りで殺人を企んでいるとなれば、
政府も看過できないはず。始祖十家が
日本の魔法学園生の命を狙う・・・
とてつもない醜聞のはず。是非とも説得して
ください。よろしくお願いします。」
「結構! ロウさんのため、自由と刀子も
向かわせましょう!」
「それはいけません。野薔薇もまた、
目立つのです。精鋭部隊、会長、野薔薇、
そして海外からの学園生は動いてはならない。
我妻さんは・・・」
言葉を渋らせる。
「今となっては仕方ありませんが・・・・
他は絶対にだめです。ご承知ください。
いいですね。」
「・・・・・・。」
「・・・・私は、大丈夫なのですよね!?」
「申し訳ありません。冷泉さんもです。」
「・・・は、はい・・・。」
結希の研究室
「そう! だからウチの私兵で封鎖しちゃって!」
茉理は会社に連絡している。
「始祖十家の梅ちゃんが協力してくれるから、
魔物討伐って名目にできるの! 絶対に
マスコミをシャットアウトしてね! 一般人もよ!」
「沙那は街に行かせたぜ。なんかあったら、
いつでも動ける。」
「ありがとう。月宮さんが現場にいると安心
できるわ。こっちも天から詳細な現場情報が
送られてきている。」
画面にその情報が映し出される。
「・・・確かに始祖十家と戦うのは、
デメリットが大きい。我妻さんとデラーが
直接デーヴィーを叩くわけにはいかない。
・・・世界への影響を考えれば仕方ないとは
いえ、面倒くさいわね。」
「ま・・・ウチにとっては始祖十家よりロウの方が
大事だし。敵に回すんだろ? 始祖十家。」
「馬鹿言わないで。そうしないためにロウ君が
行ったんでしょう。デーヴィーは才女よ。」
小さくため息をつく。
「その彼女がここまでの騒ぎを起こすのだから・・・
彼女の予想を上回ることをしなければ、
止められない。」
「ロウってそこまで考えて・・・そうだよな。」
「ええ。それに下手に人が増えると、幻覚の
魔法の有効性が高まるわ。動く生徒は
多すぎない方がいい。特に南さんを行かせては
いけない。神宮寺さん、南さんを絶対に引き留めて。」
「南・・・つっても、あいつ止めるの大変
なんだよなぁ・・・。・・・ま、やるか。」