グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
浅草
「さあ、お参りをしますよ。まずは
ルートを・・・」
「姫殿! 腹が減っては戦ができぬと
申します!」
「うふふ、そうですわね。たい焼きか、
かき氷か・・・それとも芋ようかん・・・。」
「あ、あのスコーンのお店、今日も
混んでますね。」
紗妃はその店をじっと見る。
「・・・! いけないいけない! 気を抜かず、
学園生らしい行動を!」
「むにゃむにゃ・・・あちらにパワーストーン
ショップの波動を感じます・・・。」
「あ、龍季。猫カフェはその角を
左だってよ。」
「て、てめ! い、いや、俺はだな、付き添いを
頼まれて仕方なく・・・!」
文句を言いながらも、にやけた顔で
龍季は猫カフェに向かっていく。
「・・・みんな、思い思いに行動を始めた。
目的が決まっているのね。ロウ君。
早速教えてほしいのだけれど。」
「ん?」
「私の目的は・・・普通の人は休みをどう
過ごすか、学習したい。けれど、各人に
よってやることの差異が大きいように感じる。」
「ま、そうだろうな。俺は浅草は初めてだから
いろいろ見て回るつもりだ。」
外国はいろいろ行ったが、
国内はあまりなかったしな・・・。
「ロウ君のもそうだけど、ほかの人の
パターンも気になるわ。私が人らしく振る舞う
ためにまずは、大量のパターン把握が必要。
・・・協力してくれる?」
「・・・ああ、いいぜ。役に立つならな。」
「そう。まず、観光地に到着してすぐは、
目についた名物を食べる確率が高い。
私もそうするべき? 理由は?」
「いきなりだな・・・。」
近くの店をいくつか見る。
「たいがいはそうするんだろうが・・・別に
必ずってわけでもない。」
「・・・なるほど・・・。では名物を食べた場合、
どのような変化があるかの検証をしたいと思う。
ロウ君。あそこに・・・見えるかしら?」
「ん? ・・・ああ、みなまで言うな。
あの店だな?」
「そう。大きなメロンパンのお店があるわ。
あれを食べた場合のメリットを検証する。」
「・・・・。」
メロンパンを食べ終えた卯衣は
行き交う人たちをじっと見ていた。
「あ、卯衣ちゃんだ! ねえねえ、なに
ボーッとしてるの?」
寧々が駆け寄ってくる。
「・・・ああ、学園長。今、観光客を
見ていたの。」
「ふーん。それっておもしろい?」
「面白いかどうかは、よくわからないわ。」
「よくわかんないけど見てるの? ヘンなのー。
そんなのよりさ、ネネと一緒にあんみつ
食べようよー!」
卯衣の手を引っ張る。
「・・・あ・・・。」
「いこ!」
寧々に連れられるがまま、店に入る。
「・・・学園長は手が温かいのね。」
そう言って、卯衣は自分の手を触る。
「あー、虎千代ちゃんも子供だから手が
あったかいっていってたー。しつれいしちゃう
よね。ネネ、りっぱなレディめざしてるのに。」
「? 失礼なことだったら、ごめんなさい。」
「ううん。卯衣ちゃんはネネのこと子ども扱い
してないし、別にいいよ。」
「・・・? そう・・・複雑なのね。」
首をかしげる。
「おじいちゃんになら子ども扱いされても
いいんだけどなー。次はいつ会えるのかなぁ。
ネネ、ずっとまってるのに。卯衣ちゃんはネネの
おじいちゃんにあったことある? 犬川芳郎!」
「前の学園長ね。会ったことはないわ。
データ上では知っているけれど。」
「んっとね、大きくてやさしくて、女の人が
大好きなんだよー。ネネはおじいちゃんの
べーじゅのおいわいにつくったっていってた。」
「べーじゅ?」
「うん、べーじゅ。88歳。」
言っていたのは米寿のことのようだ。
「・・・情報をまとめると、つまり・・・
学園長は前学園長が88歳のお祝いに
作った子供、ということ?」
「そう。ほんとうはおとうさんだけど、
おじいちゃんって呼んでるんだー。おじいちゃんね、
いつもあっちこっちふらふら旅してるの。」
「・・・旅・・・。」
「浅草も大好きで・・・ネネ、連れてきてもらって
たんだよ。だからね、今日ね・・・急に思い出して
来たくなって・・・・。」
徐々に目に涙がたまる。
「・・・またおじいちゃんといっしょに
来たいなぁ。・・・なんで帰ってこないのかな・・・。」
「・・・・。」
卯衣はゆっくりと目を閉じる。
「現段階で判明している情報。前学園長、
犬川芳郎。88歳の時の子供の学園長が10歳
・・・現在、推定98歳。未成年の実子に
学園を託して、戻ってこない・・・。」
目を開ける。
「・・・特殊な例でない限り、高確率で・・・」
「ん? なあに?」
寧々は卯衣の顔をのぞき込む。
「・・・いえ。ごめんなさい。確定していない
話は共有するべきではない。」
「卯衣ちゃんのいってること、むずかしい
なー・・・あ!」
お茶をこぼしてしまう。
「わー、こぼしちゃった! ちょっと
服きれいにしてくる!」
そう言って、急いで店から出る。
「・・・どうして私は、伝える気にならなかったの
かしら。前学園長は死亡している確率が
高い、と。このことを伝えるのは、学園長が
少し首をかしげる。
「私に蓄積された知識によると、そう考えるのが
自然。では
彼女に情報を隠すメリットは?」
卯衣はしばらく考え込む。
「・・・・・わからない。」
「いい香り・・・店員さん、これも
1パックください。」
「ほぉう? 結構いいなこれ・・・・
親父、これ1つくれ。」
ましろ、ロウはそれぞれ買い物をしていた。
「水分量が著しく少ない・・・天日に
干すことによってのメリットは・・・」
「よっ、卯衣。」
「あら、立華さん。そのしいたけはおすすめ
ですよ。なにしろ・・・しー。たけえ
値段だからに決まってんだろ。」
「こんにちは雪白さん。ええと・・・」
「・・・・・・。」
ロウは卯衣がどうかえすかじっと見ている。
「わかったわ。市場価格を分析し、検討して
みることにする。」
「ふふふ・・・高度なかぶせ技をお持ちですね。」
「? 技とは・・・?」
まあ、卯衣にわかるとは思ってなかった
けどな・・・。
「いえ、こちらの話ですよ。参考にさせて
いただきます・・・ふふ。」
「・・・適当なことを言ってしまったかしら。
このしいたけが何に使われるのかもよく
わからないの。勧めてくれたのに、ごめんなさい。」
「そんなに気にするな。大した話じゃ
ないからな。」
「・・・私にとって、会話はまだ難しい。
さっきも、学園長の質問に、うまく答え
られなかった。」
表情が暗くなる。
「相手に苦痛を与えると推測される回答を
求められた場合・・・どういう対応を
するのが正しいのか。」
「まあ・・・そんなことが・・・。」
「2人はどう思う? 私は見当違いの
ことでなやんでいるのかしら。・・・
もしかしたら、このやり取りすら滑稽
なのではない?」