グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

229 / 337
第220話 刀子の時間

「もしかしたら、このやり取りすら滑稽

 なのではない?」

 

「・・・立華さんは、とてもまじめ

 なのですね。」

 

「それは・・・悪い意味?」

 

「いや、いい意味だろ。」

 

軽くため息をつく。

 

「ええ。真摯で、誠実な姿勢です。寧々さんと

 どんなお話しをしたのかはわかりませんが

 ・・・きっと真正面から彼女と向き合ったのでしょう?」

 

「・・・会話時の位置関係としては、

 真正面ではなかったわ。」

 

「ふふふ・・・すれちがいコントのようです・・・。」

 

的を射ているな・・・。

 

「・・・? 面白かった、かしら?」

 

「ふふ、失礼しました。そういうところも

 また、立華さんの魅力・・・よろしければ

 もっとお話ししませんか? 学園ではなかなか

 ないことですので。」

 

「構わないけど・・・私はきっと質問して

 ばかりよ。それが雪白さんにメリットを

 もたらすとは、考えにくい。」

 

「ふふ、大丈夫ですよ。ただご一緒できる

 だけで、いいのです。」

 

「・・・ふっ。さぁて、俺は観光を

 してくとするかね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむ、刀がたくさん並んで・・・これは

 大変興味深い! というか、この街並み

 うっすらと見たことがあるような・・・?」

 

浅草の街並みに刀子は目を

輝かせる。

 

「ああ! そうだ、やはり・・・ここは

 『流石の五郎衛門ファイナル』ロケ地!

 そわそわ・・・そわそわ・・・。」

 

「刀子・・・。」

 

「はい!? あ、ひ、姫殿・・・次は

 どちらへ行かれますか!? 先ほどの

 着物、とてもお似合いでしたぞ。もう一着くらい・・・」

 

「あなた、1人で見て回りたいのではなくて?」

 

「!?」

 

体が一瞬、ビクッとなる。

 

「め、めっそうもない! 姫殿を放って

 拙者だけ楽しむなど・・・」

 

「・・・あのですね、刀子。実は私、

 この後予定がありまして。」

 

「んぉ?」

 

刀子の声が上ずる。

 

「冷泉さん、神宮寺さん。こちらですわ!」

 

「お待たせいたしました、野薔薇さん!」

 

「よー、支倉も行くの?」

 

葵、初音がやってくる。

 

「これは・・・神宮寺殿に葵殿・・・。」

 

「刀子、私はこれからお二方とお話が

 ありますので・・・私のことは気にせず、

 あなたは周辺を好きに見てらっしゃい。」

 

「ぬな!? せ、拙者1人でですか!?」

 

「たまには別行動もいいでしょう。では、

 また後ほど。」

 

そう言って、姫は葵、初音とともに

歩いていく。

 

「ひ、姫殿!? 姫殿おぉー!! あぁ・・・

 拙者・・・拙者、置いて行かれてしまった・・・

 のか・・・?」

 

刀子の顔が青ざめていく。

 

「きょろきょろ目移りをして、姫殿を

 おざなりにしてしまったからか・・・!?

 も、申し訳ありません姫殿ー! あああぁぁ・・・!」

 

 

 

 

 

 

「野薔薇さん、刀子さんもお誘いしなくて

 よろしかったのでしょうか?」

 

「アタシは支倉なら、別に聞かれても

 構わねーと思うけど。」

 

「よいのです。今日は少し、私から離れて

 過ごしてもらいましょう。」

 

姫は自分といたときの刀子の

様子を思い出す。

 

「浅草には刀子の好きなものがたくさん

 あります。私といるためにそれらを

 楽しめないのでは、休みとは言えません。」

 

首を横に振る。

 

「たまには主人のことを忘れて、好きなことに

 没頭して・・・自己を見つめる時間があった

 ほうがいいのではと思いまして。」

 

「・・・それって、なんか小鳥遊のこと

 言ってるっぽいよなー。」

 

初音の頭に寝っ転がってゲームをする

自由の姿が浮かぶ。

 

「・・・うっ。自由は逆に趣味に没頭

 しすぎていますけれどね。はあ・・・

 2人を足して、2で割ったらちょうどいいの

 でしょうか・・・?」

 

「野薔薇さんも大変なんですね・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「賑やかな街並み・・・いい香りの菓子・・・

 レンタル着物の娘たち・・・一方、拙者は

 ・・・はぁ・・・。」

 

ふらふらしながら、浅草の街を歩く。

 

「姫殿のいない浅草が、こんなに精彩を欠いた

 ものだとは・・・。姫殿・・・拙者のことが

 邪魔でござるかぁ・・・。・・・いやいや!」

 

自分の言ったことを頭を振って否定する。

 

「よく考えろ拙者! 姫殿にもぷらいばーしという

 ものがあろう! だがしかし・・・ああぁ・・・」

 

「あ、刀子ちゃんだー! あはは、ヘンな

 動きしてる!」

 

寧々が刀子の元に駆け寄ってくる。

 

「!? 学園長殿! これは恥ずかしい

 ところを・・・。・・・どうしました、

 お1人ですか!?」

 

「お兄ちゃん探してるの。刀子ちゃん、見なかった?」

 

「ロウは先ほどあちらで見たような・・・。

 雪白殿の荷物を運んでいましたぞ。」

 

「わかった! あっちね・・・ひゃ!?」

 

思い切り転んでしまう。

 

「が、学園長!」

 

「あいたた・・・」

 

「大丈夫でござるか? 人が多いゆえ、

 お気をつけめされよ。」

 

そう言って、寧々を支える。

 

「うぅ、ありがと・・・。そうだよね、

 人いっぱい・・・。」

 

「特にこの辺りは土産物屋が多いですからな。

 いったん離れて別の・・・・・」

 

途中で言葉を止める。

 

「・・・あのう、もし差し支えなければ、

 拙者がお供いたしますか?」

 

「ほんと!? じゃあ、お兄ちゃんのところ

 まで連れていってくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・結構いいもんだな・・・

 浅草。」

 

ロウは思い思いに観光していた。

 

「あははは! たかーい、はやーい!」

 

「こういうとこだと、子供もはしゃぐ・・・

 ・・・ん?」

 

今の声、どこかで聞いたような・・・。

 

「ふははは! たとえ大男でも、今の

 学園長殿なら負けませぬぞー!」

 

このしゃべり・・・まさか・・・!

 

「あ! いた、お兄ちゃん!」

 

「うお!?」

 

刀子に肩車された寧々がやってくる。

 

「・・・とと! はー、刀子ちゃん

 おもしろいねー! 肩車してもらった!

 ねえねえお兄ちゃん。ネネと刀子ちゃんと

 一緒に遊ぼうよー!」

 

ロウの服をぐいぐいと引っ張る。

 

「ね、刀子ちゃん。いいでしょ?」

 

「む? こやつとですか?」

 

ロウをちらっと見る。

 

「いや?」

 

「い、いえ、とんでもない。拙者もどうせ

 1人ですし・・・。」

 

「じゃあきまりね! 一緒にまだいってない

 とこ、いこー!」

 

「・・・なりゆきで決まってしまったな。

 まあ、やぶさかではない。ロウ、拙者も

 学園長殿にお供いたす。よろしく頼む。」

 

「・・・ま、お前らじゃいろいろ不安だからな。

 俺もついていってやるか。」

 

そう言って、ため息をつく。

 

「てか、お前が1人って珍しいな。」

 

「ああ・・・。姫殿が時間を下さったが、

 何をしていいのかわからぬのだ。だが!」

 

「!」

 

急な大声に、ロウは一瞬びっくりする。

 

「そのたびに落ち込んでばかりいては成長が

 ないと姫殿に笑われてしまう。せっかく

 学園長殿がお誘いくださっているのだ。

 今日は見分を広めよう。」

 

笑う・・・あきれるとは思うがな・・・。

 

「拙者は野薔薇でもあるが、魔法学園の

 一員でもある。この機会に学園長殿、

 ひいては学園を共に盛り立てようではないか!」

 

「・・・それくらいは乗っかってやるか、刀子。」

 

「・・・・・。」

 

「? どうした?」

 

「・・・ど、どうにも慣れん・・・。そ、その・・・。」

 

「・・・いまだに名前呼びでその反応

 してるのはお前くらいだよ。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。