グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
数時間後
「お兄ちゃん。」
「なんだ?」
「今日はありがとう。」
「・・・どうした、急に?」
「ネネいっぱい泣いちゃって、ちょっと
かっこわるかったね。」
えへへ、と言いながら頭を掻く。
「仕事やってるときもたまに泣いてるだろ。」
「ちがうもん、おしごとはちゃんと泣かないで
やってるもん。だから普段はその分わがまま
いっていいの。とーぜんのけんりなの。」
「急に学園休みにした時点で、結構なわがままだろ。
まあ、俺も休めたからよかったけどな。」
「そっか。・・・でも、今日は泣いちゃったな。
いやなことがあったわけじゃないのに、みんなが
やさしかったのに・・・いっぱい泣いちゃったな。
なんでだろう?」
「・・・心配するな。俺にも覚えがある。」
ロウは空を見上げる。
「お兄ちゃんも?」
「ああ。妹がいたときは、見られないように
気づかれないように泣いた。」
「そうなんだ。・・・あのね、なんとなく
なんだけど、ネネさ・・・」
「ん?」
「おじいちゃんには、しばらく会えないんじゃ
ないかなって思ってるの。」
「!」
・・・確かに、そうだな・・・。
『・・・学園長が亡くなったそうです。』
心の言葉が思い出される。
「なんで、そう思ったんだ?」
「だって・・・生徒会のみんなも、理事長も・・・
・・・ううん。なんでもない。みんながヒミツに
してるのは知ってるよ。」
「・・・!」
「でも・・・多分ネネのためにやってるんだよね。」
「・・・わかるのか?」
「そのくらいわかるよ。ネネ、もう
赤ちゃんじゃないから。だから・・・」
「ロウ君、学園長。」
卯衣が近づいてくる。
「ん? どうした、卯衣。」
「そろそろ夕方だから、もう帰ろうと
思うのだけれど。」
「え? もう帰るの!?」
「確かに、もうこんな時間か。」
腕時計で時間を確認する。
「お休みはおしまいです。また明日から
頑張りましょう。」
「やだぁ・・・もっと遊びたい・・・。」
「ふふふ・・・そうですね。私も同じです。
実は、たくさん歩いてお腹がすきました
から・・・帰る前にみんなでもんじゃ焼きを
食べて帰ろう、という話になりまして。」
「もんじゃ焼きか・・・。食ったことなかったな・・・。」
「皆さま! お待たせしました!」
刀子が駆け寄ってくる。
「姫殿たちをお連れしましたぞ! 店にも
連絡が済んでおります、さあさあ!」
「わー! やったぁ!」
「支倉さん、野薔薇さんと合流した途端に、
とても元気になったわね。」
「なにをまた! 拙者はいつでも元気ですぞ!
どわっはっはっは!」
「どわっはっはー!」
刀子の笑い方を真似する。
「今泣いたカラスが、もう笑った・・・ふふふ。
立華さんは、まだ時間大丈夫ですか?」
「行くわ。今日は私自身、興味深い行動原理の
ゆらぎがあった。このままみんなと一緒に
いれば、このゆらぎがなんなのか・・・
もう少しだけ、わかるかもしれないから。」
「・・・なら、行くか。」
ロウはどこか嬉しそうな顔を
浮かべていた。
数日後
精鋭部隊詰所
「・・・というわけで、マーヤー・デーヴィーの
処遇は、IMFにゆだねられました。」
薫子はマーヤーの処遇について話していた。
「納得いかねえな、オイ。」
「ウィリアムズさん。」
「始祖十家がやらかしたのを内々で隠蔽
する気まんまんじゃねえか。IMFに
引き渡した? そりゃ、巣に帰したって
言うんだよ。」
「厳重な処罰を下すと約束したそうですよ。」
「始祖十家クラスの英雄にとっちゃ、
1人殺しても屁でもねえよ。もしもう1度
ロウを殺そうとしてきら・・・次は関係ねえ。
アタイがハチの巣にしてやるぜ。」
そう言って、薫子を睨む。
「・・・ええ。来たら、お願いします。とにかく
ロウさんにとって、先日の戦いは厳しかったはず。
しばらく、ロウさんの出撃は見送ってください。いいですね。」
「「・・・・・」」
2人とも黙り込む。
「どうしました?」
「いま、守谷先輩と・・・クエストに出てます。」
「・・・はぁ・・・そうですか・・・。」
山奥
「今回のクエストは、ツクの凄さを見せつける
ものなんだから、アンタは足引っ張らないで、
ちゃんとサポートしなさいよね!」
「ったく、何がサポートだ。だいたい
よく誘えたもんだな・・・。」
めんどくさそうにあくびをする。
「なによ。忙しくて、ツクの相手なんて
してらんないってこと?」
「ちゃんと将棋の相手してやってるだろ。
まあ、勝ちすぎて哀れみを覚えるけどな。」
「~~~!! うるさいわよ! とにかく、
アンタのその魔力譲渡の力・・・ツクが
誰よりも上手に引き出してあげるんだから!」
「せいぜい期待してるぞ~。」
馬鹿にするように笑う。
「うぐぐ・・・!」
<ロウ、月詠、移動中>
「さーあ、ガンガン倒してあげる! 出てきなさい!
ツクがどれだけ強いか、思い知るがいいわ!
・・・ってあれ?」
2人の前に、魔物の姿はない。
「お前が大声出すからだろ。」
「う・・・。デバイスにも映ってない・・・。
せっかくツクが活躍できるチャンスなのに!」
「だからうるせえって・・・。・・・!」
「! あ!」
2人の前に魔物が現れる。
「なにこれ・・・すっごく弱そうじゃない。
これじゃすぐ終わっちゃうわね。」
「んなこと言ってると、やられるぞ。」
「ふっふーん。もしもっと強いのが出ても
余裕だけどね。まずは、ここに出てきた
魔物から、サクッとやっちゃうわよ!」
そう言って、月詠は手に持つ扇を構える。
「ええい!」
扇を振り、風の魔法で魔物を攻撃する。
「『ROOM』!」
青色のサークルを張る。
「『
月詠の攻撃をかわした魔物を斬りにいく。
「ちっ・・・!」
しかし、魔物はこれもかわし、
奥に逃げていく。
「ちょっと! アンタのせいで逃がしちゃったじゃない!」
「お前の攻撃だってかわされてただろ。」
サークルを消す。
「そ、そんなことはいいの! 早く追わなきゃ!
あんな魔物取り逃がしたら恥よ、恥!」
「わかってるっての。」
<ロウ、月詠、移動中>
「ふぅ、ふぅ・・・どれだけ歩くのよ・・・。」
疲れからか、月詠の体はふらついている。
「逃げ回って、こっちの体力消耗を
狙ってるってとこだろ。」
「だったら、こっちにだって考えがあるわ。
地図出して。」
いわれた通り、地図を出す。
「ちょっと違う方向から追いかけるわよ。
このあたりに・・・ないかしら・・・。」
「お前の考えてる事くらいわかる。ここだろ。」
地図のある部分を指さす。
「そうよ。このどんづまりっぽいところ・・・・
・・・って、なんで!?」
「言ったろ。考えてる事くらいわかる。
この位置に追い込めば、そう簡単には
逃げ出せなくなるからな。」
「うぐぐ・・・! い、いつから、
そうしようって・・・?」
「クエスト行く前に地図を確認した時からだ。
すでにそのくらいは想定していた。」
「・・・~~~~!!」
悔しそうに地団太を踏む。
「わかったな? んじゃあ、行くぞ、月詠。」
「わ、わかってるわよ!」