グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
校門前
「よぅし、今日も大漁大漁。」
ゲームセンターの景品を
抱えたロウは寮に戻ろうとしていた。
「・・・ん? あれは・・・。」
ふらふらと歩いている
生徒を見つけた。
「おい。」
「はれ・・・あ、先輩! やっほーです!
お出かけしてたんですか?」
歩いていたのはももだった。
「ああ。もも、お前は
これからか。」
「はい! バイト戦士たるあたしは、
これからファミレスのバイトなのです!
・・・はれ?」
目をごしごしとこする。
「? どうした。」
「どしたんですか先輩? 分身の術とか
習得したんですか?」
「は? 分身?」
「先輩が2人いるように見えます。
すごいです先輩!」
・・・何言ってんだこいつ・・・
熱でもあるのか・・・・って・・・。
「もも、お前顔赤いぞ。」
「ふぁい? 顔が赤いって・・・
あたしの顔のことですか?」
「いや、お前しかいねえだろ。」
「どしてだろ・・・先輩に会えた
からかな・・・ひゃわぁ!?」
ロウはももの額に手を当てる。
「しぇんぱい・・・いきなりおでこに
手を当てるなんて・・・大胆ですよぅ・・・。」
「大胆?」
ももの言葉に軽く首をかしげる。
「あうー。先輩の手、冷たくて
気持ちぃいですぅ・・・。」
ロウの手をすりすりと触る。
「・・・もも、お前風邪ひいてるだろ。」
「へっ? あたしが風邪? またまた~
ご冗談を・・・・・あっ。」
思い当たることがあるのか、
手をポンと叩く。
「今朝から体が重かったり、寒いと
思ったら、急に暑くなったりしましたけど・・・
それが風邪の症状ってことですかね・・・。」
「どう考えても風邪だな、そりゃ。」
「うぅ・・・最近新聞配達してたのが
原因かな・・・。で、でも! 今日も
夜までバイトなんです! 休んでる
暇・・・・は!?」
ももが倒れそうになる。
「おい、もう少しで倒れるとこ
だったぞ。」
「だ、だいじょうぶです。少し
ふらついただけですので。で、
ではでは! あたしはバイトに向かいます!
それではせん、ぱい・・・また、
あし、た・・・です・・・。」
バイトに向かおうとしたのだが
倒れこんでしまう。
「な・・・!? おい、もも!」
「・・・うぅ・・・・。」
「・・・ったく・・・。」
ももを抱え上げる。
<ロウ、移動中>
保健室
マスクをしたゆかりがももの体調を調べる。
「・・・うん、やっぱり風邪ね。」
「悪いな、ゆかり。忙しいときに。」
「いいの。あ、ロウ君も、はい。
マスク。」
引き出しからマスクを取り出し、
ロウに手渡そうとする。
「ああ、俺はいい。・・・それより、
1つ聞いてもいいか?」
「? 何?」
「風邪って、そんなにつらいのか?」
「・・・え?」
「俺は覚えてる限り、風邪をひいた
ことがないもんでな。」
「・・・・は?」
素っ頓狂な声が出る。
「いやいや、一回くらいはあるでしょ?」
「・・・いや、ないな。毒蛇と毒蜘蛛に
1回ずつかまれたときに妙な
抗体ができて、ほとんどの軽い病気は
シャットアウトされるんだろ。」
夕方
「うぅ・・・・ん・・・。」
眠っていたももがゆっくりと目を開ける。
「・・・あれ・・・ここは・・・?
・・・たしかあたし、バイトに・・・!?」
勢いよく飛び起きる。
「・・・はっ! ば、バイトに行かないと!」
「おい、待て。」
「きゃう!?」
ロウはももの腕を引っ張って止める。
「へ? せ、先輩? ど、ど、どうして・・・
って、そうでした・・・。」
「思い出したか?」
「は、はい・・・。あたし、先輩の前で
倒れちゃったんですよね? きっと。
も、もう大丈夫ですので、あたしを
押さえてる腕を離していただけると・・・。」
「そのまま行ってもまた倒れるだけだ。
バイト先に迷惑かけるぞ。」
「・・・そ、それでも行かないと・・・。」
「だめだ。でなきゃ俺がゆかりに
怒られる。」
腕をさらに強く握る。
「あぅ・・・わかりました。今日は
休みます。でも、連絡だけでもしないと。」
「ああ、そこは心配するな。」
もものデバイスを渡す。
「俺がしといた。」
「な、何から何まで申し訳ないです・・・・。
あ、ここ保健室なんですね。・・・先輩の
部屋がよかったなぁ・・・。」
「? なんか言ったか?」
「あ、いえ、なんでもないです・・・。
・・・もし・・・。」
「ん?」
「・・・もし、せんぱいにかぜが
うつっちゃったら・・・あたしが・・・
かん・・・・・すぅ・・・すぅ・・・。」
言葉は途中で切れ、
ももは眠ってしまった。
数日後
校門前
「せんぱーい!」
すっかり元気になった
ももが駆け寄ってくる。
「もうすっかり風邪は治りました!
先輩のおかげです!」
「そいつはよかった。・・・ところで、
治ったついでに1つ聞いていいか?」
「はい? なんですか?」
「お前が休むってバイト先に連絡したとき
なんだが、やけに根掘り葉掘り聞かれてな。」
「え、な、なにを、ですか?」
「いや、仲は良いのかとかどうとかな。」
「~~~!!」
ももの顔が赤くなっていく。
「け、今朝も似たようなこと聞かれました・・・。
そ、そそそれで、先輩はどう答えたんですか?」
「まあ、適当に答えといた。」
「え、ちょ、それって・・・」
「おっと、俺もう時間だ。クエスト行かねーと。」
すたすたと歩いて行った。
「あ、せ、先輩!」
「んん?」
「こ、これ、お礼にあげます!」
ポケットから1枚の紙を
取り出す。
「これは?」
「うちのファミレスのサービス券です!
今度、来てくださいね!」
「ん、ああ。」
「では、本当にありがとうございました!」
ももは校舎の中に入っていく。
「サービス券ねぇ・・・あいつらし・・
・・・ん?」
数時間後
ファミレス
「はーい! いらっしゃいませー・・・
って、先輩!」
「よっ。」
制服をはたきながら入ってくる。
「サービス券をよく見たら、
今日までだったんでな。」
「え、今日まで!? す、すみません・・・。」
「気にするな。今、空いてるか?」
「は、はい! あまりお客さんいないので。
よーし、せっかく先輩が
来てくれたし・・・いっぱいサービス
しちゃいます!」
ロウを席に案内する。
「えっと・・・そうだ! 先輩、
甘いものは好きですか?」
「ん? ああ、まあ多少はな。あと
コーヒーくれ。」
「はい! かしこまりました!」
「お、おまたせしました・・・。もも
特製・・・すぺしゃ、る・・・ピーチ
・・・パフェです!」
山盛りとなった巨大なパフェを
ロウのテーブルに置く。
置いた衝撃でテーブルが揺れる。
「・・・・・・・。」
「ふわ~! 崩れなくてよかったぁ・・・。
えへへ、先輩用に特大サイズにしました!」
「特大が過ぎるだろ・・・。」
パフェが少し揺れる。
「あ、あ、ここてっぺん押さえないと
落っこちちゃ・・・うわわ!」
「うおっと!」
ロウが両手で押さえ、パフェの
崩壊を防ぐ。
「あ、ありがとうございます・・・。あれ?
このままじゃ、先輩の両手がふさがっちゃう・・・。」
「あ、ああ・・・そうだな・・・。」
「・・・そだ、わたしがここのクリームを
すくって、先輩にさっと食べてもらえれば・・・。」
「なるほど、よし頼む。」
「い、いきますよ先輩。お口を開けて
もらっていいですか・・・?」
「ん。」
いわれた通り、口を開ける。
「せ~の・・・あ~ん・・・。」
この後、ももは店の人に
散々からかわれた。