グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
虎千代とのクエストから
僅か数時間後
深夜2時
「会長、宍戸結希から連絡がありました。」
「こんな時間に・・・? !!
まさか!!」
「ええ、魔物の『大量発生』が始まりました。」
早朝
ロウのデバイスが
大きな音を立てて、鳴り響いた。
「んん・・・?」
あまりの音に目が覚め、
デバイスを見る。
「なんだ朝っぱらから・・・・。 !!」
デバイスからのメールの
内容に目を大きく開ける。
「第7次侵攻・・・。」
読むと同時に着信が鳴る。
『ロウか?』
「ああ、おっさんか。どうした?」
『魔物の大量発生が始まったらしいな。』
「そうなるな。学園の生徒は
全員出ることになった。」
『やっぱそうなるか。俺は
一般の避難誘導だ。
・・・・気をつけろよ。』
「わぁってるよ。・・・じゃあな。」
『ああ。』
通話を切る。
「・・・よし、行くか。」
壁に立てかけてあった
刀を持ち、部屋を出た。
ロウが出たところで、
校内放送が鳴り響く。
「生徒諸君! 生徒会長、武田虎千代だ!」
「ん、会長か。」
「今朝のニュースで知った生徒もいるだろうが
ここから北西の小鯛山で大規模な魔物の
発生が確認された! 規模は通常の42倍。」
・・・42倍って・・・・。
「だが、我々人類の戦力も9年前とは
比較にならない! 虎千代が宣言する!!
この防衛線では誰も死なせない!
魔物を退け、北海道奪還の嚆矢とするぞ!」
虎千代の言葉に
ロウは少しニッと笑う。
防衛線
「あっ! ロウ! 遅いわよ!」
腰に手を当て、少し怒る。
「・・・誰だ?」
「ちょ、ツクよ! 守谷月詠!」
「ああ、そうだったそうだった。」
頭をポリポリと掻く。
「まったく・・・。」
月詠が腕を組んだところで
ショートカットの黒い髪の
生徒が近づいてくる。
「もしかして、相田ロウさんですよね?」
「もしかしなくてもそうだが・・・。」
「私、先日転校してきました
円野真理佳です!よろしくお願いします!」
礼儀正しくお辞儀をする。
「センパイの体質は知っています!
魔物は僕に任せてください!」
「えらい元気ね・・・・
いきなりそんなんじゃすぐ疲れるわよ?」
「いえ、魔法使いに覚醒した時のために
毎日トレーニングしてきました!」
「トレーニングねえ・・・・
てことは、今までクエストは?」
「今日が初めてです!」
自信満々に言う。
「・・なるほど。」
「ああ、そういえば、ロウ。あんたたちは
いろんなパーティの助っ人よ。」
「さっきエレンってやつから
聞いたよ。魔物とあまりぶつかることは
ないが、注意しろって。」
「ふむふむ・・・注意・・・っと。」
「そうよ! そのパーティの指令は
アンタなんだからね! 護衛の生徒が
ケガしたらアンタのミスだと思いなさい!」
ビシッと指さす。
「司令官はセンパイ・・・メモメモ・・・。」
「それにこれはわかってると思うけど
アンタは貴重な戦力なの!
大けがしたら承知しないから!」
「へいへい・・・つか、さっきから
何やってんだ?」
ロウの後ろでメモを取っていた
真理佳に声をかける。
「メモですよ。大事なことじゃないですか!」
「・・・なんかやりにくいわね・・・。」
「まあ、やる気があるだけましだろ。」
おいてあった刀を持つ。
「よし・・・行くか。」
最初の部隊のもとに
ロウと真理佳が駆けつけると
大量の魔物が襲い掛かる。
「うわああ!!」
初めてのクエスト、魔物に
真理佳は戸惑いを隠せない。
「くっ! このぉ!!」
何とか魔法を使い、
魔物の数を減らしていくが
「ひゃあ!? ちょ、
センパイ! 助けてください!」
「はあ・・・・『ROOM』!」
自身と魔物をドームで囲む。
「こ、これは・・・?」
「しゃがめ。」
「え?」
「早くしろ。」
「は、はい!」
急いでしゃがむ。
「『
2人の前にいた
5,6体の魔物が
一気に切られる。
「すごい・・・・・・
僕も頑張ります!!」
立ち上がり、再び
気合を入れる。
「しっかし、いきなりこれだけの
量が来るとはな・・・・。
こりゃ、何日かかるやら・・・。」
「え・・・。」
「そりゃそうだろ、今回は普段の
クエストの魔物の量の42倍。
魔物が多くなれば、それだけ
戦いも長くなる。少しペースを気にしながら
戦ったほうがいい。」
「そ、そうなんですか・・・?」
「そういうもんだ。」
刀をしまい、
地面に腰掛ける。
「こう言ってる俺も
あまり体力は使いたくないしな。」
目を閉じ、魔力を回復させる。
「おおっと、もうヘバったのか?」
後ろから急に話しかけられる。
「・・・ってか、てめえ・・・。」
話しかけたのはメアリーだった。
「? どうした?」
「・・・てめえ、やっぱりどこかで・・・。」
「この前も聞いたな。だが、生憎お前とは
面識はない。」
「・・・ちっ!」
ピピピ!
メアリーのデバイスが鳴る。
「・・・くそ、お前らいったん退くぞ!」
「なんかあったのか?」
「国軍がへばりやがった! 学園生は
全員迅速に戻れ!編成替えして
備えるぞ!」
「・・・。」
ロウはゆっくりと立ち上がる。
ある程度下がったところで
ロウのデバイスの着信が鳴る。
「・・・なんだ、おっさんか。どうした?」
『さっき言い忘れてたことがあってな。
とはいっても、多分気づいてるとは思うが・・・。
お前の後ろに・・・』
「ああ、わかってる。今わざと泳がせてる。
侵攻が終わったらとっつかまえて
無理やりにでも吐かせる。」
『わかった、んじゃあ、準備しとくぞ。』
「頼む。」
通話を切る。
「・・・てめえ、今誰の電話だ?」
「なんだ、気になるのか?」
メアリーがロウに近づく。
「てめえはどうにも信用できなさそうだからな。」
「別に大したことを隠してるんじゃ
ないんだが・・・・ん?」
再び、ロウのデバイスが鳴る。
「・・・俺は別に移動か。
よし、円野。行くぞ。」
「あ、はい! わかりました!」
「くそ・・・。」
地団駄を踏んだ。
<ロウ、真理佳、移動中>
「んもう・・・なによ!
はじめは弱かったのに、
急に強くなるって・・・!
こっちの都合も考えなさいよ!!」
「夏海ちゃん・・・さ、さすがに
それはちょっと無理じゃないかな?」
「だが、これまでに比べて
明らかに魔物の強さと数が増えた。」
「あ~も~、ロウに魔力回復して
もらいたい~!!」
腕をバタバタさせる。
「あいつはずっと戦場を走り回っている・・・
あまり無理をさせては・・・・・!!」
急に怜が何かに気づく。
「? 怜ちゃん?」
「しまった・・・戻れ!!」
「え、なに、急に!?」
「3体来るぞ! 囲まれたら
勝ち目がない!!」
「さ、3体!? もう
魔力ほとんどないってのに・・・!」
「ど、どうしよう・・・このままじゃ・・・。」
魔物が3人に迫ろうと
したその瞬間だった。
「『ROOM』!!」
突然、青色のドームが現れる。
その後、何体もの魔物が
一気に切断される。
「これって・・・まさか!?」
3人が同じ方向を見る。
そこにはロウが立っていた。
「よっ。」
軽く手を挙げる。
「ロウさん!?」
「こっちに回れって、連絡受けたんだよ。
さて、まずは・・・。」
目を閉じ、3人の魔力を
回復させる。
「はぁ~! やっぱ、あんたが
いると違うわね~!」
「よし・・・一気に攻めるぞ!」
「うん!」
3人は再び、
魔物に向かっていく。
「ああ、円野。」
「? なんですか?」
「すぐに攻撃できるように
準備しとけ。」
そう言うとロウは
魔物に近づく。
「せ、センパイ・・・?」
「『シャンブルズ』!」
ロウと真理佳の位置を
入れ替え、真理佳が魔物と
対峙する形になる。
「!!」
「はやくやれ。」
「はい!! はあああ!!」
魔物を吹き飛ばした。
こんな戦いが
9日間も続き、多くの
生徒が負傷してきた。
だが・・・・
「魔物が減ってきた・・・・これは・・・。」
ロウが目の前の
魔物を倒すとデバイスが鳴り響く。
「会長か・・・。」
デバイスから聞こえたのは
この一言だった。
『・・・第7次侵攻は、終わった。
我々の、勝利だ!!』
その瞬間、周りからは
歓声が上がる。
「ロウさん!! やりましたね!」
智花が駆け寄る。
「ああ・・・終わったか・・・・。」
疲れた様子で空を見上げる。
「これでようやく・・・・」
「? どうしたました?」
ロウの目は見開いていた。
なぜなら、智花の頭に
レーザーポイントが当たっていた。
「・・・伏せろ。」
「え?」
小声で注意するが聞き取れない。
「くそ!」
「ひゃあ!?」
智花を押し倒す。
そのほんの少し後に銃声がし、
銃の弾が地面に直撃する。
「い、今のは・・・?」
「そこで待ってろ。」
そう言い残し、
ロウはおおよその狙撃地点に向かって
一気に走り出した。
「・・・。」
「ぐあああ!」
狙撃した犯人を見つけた
ロウはその男を床に伏せ倒した。
「ロウ、そいつか。」
「ああ。」
ロウから連絡を受けた
義人が姿を見せる。
「く、くそ・・・。」
「んで、お前の名前は?」
義人が問う。
「・・・佐藤・・・一・・・。」
「一応聞いてやるが、
誰に頼まれた?」
「・・・。」
下を向き黙る。
「誰に頼まれた?」
声を低くし、問う。
「・・・・天羽、鉄舟・・・・。」
「やはり、天羽に頼まれたか。」
義人は拳銃を取り出す。
「ひっ、ま、待ってくれ・・・!」
驚く男を尻目に
拳銃をロウに手渡す。
さあて、と・・・・。
ロウは慣れた手つきで
拳銃に弾を装填し、
一に向ける。
「た、助けてくれ・・・・!」
「・・・恨むんなら、天羽を
恨むんだな。」
ロウはゆっくりと引き金を引いた。
パァン! パァン! パァン! パァン!
4発の銃声が鳴り響く。
「!!」
智花は何度もそれに驚く。
銃声が鳴らなくなって
数分後、ロウが智花のもとに
戻ってくる。
「ろ、ロウさん・・・・
今のは・・・。」
「・・・・。」
何も言わずに
口の端をにやりと笑った。
学園 屋上
「おっさん、あいつはどうなった?」
ロウは義人と通話している。
『ああ、お前が言った通りに
やっておいたぞ。』
「・・・いつも悪いな。」
『気にするな。これが俺たちの
選んだ道なんだからな。』
「・・・そうだったな。んじゃあ、
また後で。」
『ああ。』
通話を切る。
「さて・・・戻るか。」
「あの・・・。」
屋上に智花が入ってくる。
「南か。どうした?」
「あ、いえ、夏海ちゃんに聞いたら
屋上に向かったと聞いたので・・・・
これ、どうぞ。」
缶のブラックコーヒーを差し出す。
「おお、わかってるな。」
コーヒーを受け取り、開ける。
「長かったですね、第7次侵攻。」
「まったくだ。」
「・・・私、時々ふと思うんです。」
「ん?」
「もし魔法使いじゃなかったら
どんな風に過ごしてたんだろうって。」
「・・・どんな風に・・・か。」
コーヒーを一口口に含む。
「私は最初、魔法使いに覚醒したとき、
とても不安だったんです。
もう普通の生活は遅れないのかなって・・・。」
「・・・。」
「・・・ロウさんは、魔法使いに
覚醒したとき、どう思ったんですか?」
「・・・なんとも思わなかったな。」
「・・・えぇ!?」
予想外の答えに
声が上ずる。
「別に俺が魔法使いに覚醒しようが
しまいが、俺がやるべきことに
変わりはないからな。」
「・・・やるべきこと・・・ですか?」
「ああ、それはお前にだって言えることだ。
どういう道があったとしても、
お前はお前だ。」
少しニッと笑う。
「///ロウさん・・・。
・・・そうですよね!」
「そういうことだ。」
コーヒーを飲み終え、立ち上がる。
「んじゃあ、また明日。」
「はい、また明日!」
こうして、第7次侵攻は
終わった。しかし、
しかし、この後、さらに驚く事態に
発展するが2人、そして、学園生は
まだ知らない。