グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「ちょ、ちょっと待て! ダメだ
それは!」
子供のあやせが提案した作戦を
話すが、怜は反対する。
「だよなぁ・・・。」
「でも、お時間ないんですよねぇ?
みんなも悪いひとを捕まえて
みたいと思わない~?」
「捕まえるべ!」
子供の花梨は目をキラキラさせ、
元気よく手をあげる。
「・・・ちょっと怖いけど・・・。」
「捕まえないと、せっかく仲良くなった
怜ちゃんたちが危ないから。」
子供たちは乗り気である。
「ろ、ロウ・・・お前からもなんとか・・・」
「・・・んまあ、これしか手っ取り早く
やる方法がねえしな・・・。」
「ロウまで・・・!」
「なにがあっても、私たちが守りましょう。
みんな、約束してね。絶対に名前を
言っちゃだめよ?」
「レッドだ!」
「私はブルー?」
「えっと・・・ぴ、ピンクがいい・・・。」
「ではわたしはパープルで・・・」
「こら!」
先ほどの警官が、子供たちに
近づく。
「ひっ・・・。」
「来たべ・・・どっちさ行くんだっけか?」
「わたしについてきてくださいね~・・・。」
「君たち、まだこんなところに・・・!
あの学生たちはどこに・・・!」
「わ~!」
子供たちが一斉に駆け出していく。
「待ちなさい! ・・・・・ちっ。」
警官の表情が変わる。
「ちょうどいい。あの子供たちを・・・。」
子供たちを追いかけていく。
「どこに行った・・・私が動いても
仕方ないな。」
そう言って、携帯を取り出す。
「間ヶ岾に・・・護り手に連絡するとするか。」
「間ヶ岾ねぇ・・・やっぱそういうことか。」
ロウは警官の背後にまわった。
「! だ、誰だ!」
後ろを向こうとする。
「市民を守るのが警官の役目だっきゃ。
それだってのに・・・あんた、才能
あるっきゃ? どうして護り手なんかに
入ってたんだぁ。」
花梨たちが警官の前に
立ちふさがる。
「・・・貴様ら・・・いったい・・・」
「この時期に起こっていた連続誘拐事件、
妙に長続きしてると思ったが・・・」
「警察に協力者がいたとは。」
「・・・なんのことだ?」
「すでに録音済みなんだよ。言い訳も
無理だ。」
デバイスを取り出し、録音した
音声を流す。
「間ヶ岾なんて名字、そうありませんから。
霧の護り手とも言ってますし。立場のわりに
少々独り言が多いのでは?」
「・・・ぐっ・・・うぅ・・・」
観念し、唸り始める。
「・・・今の私たちに、あなたを法的に
拘束する権利はありません。ですが、
見ていますからね。」
「正しい道さ戻るんだば、今しかねえど。」
「それで・・・捕まえなかったんですか?」
「捕まえるのは皮肉にも警察の
仕事だからな。今やれば、こっちが
捕まるだけだ。」
「はぁ・・・。」
子供のあやせは少し
納得しない様子だった。
「あれだけ脅せば、しばらくは活動を
控えると思うけど~・・・。」
「・・・これで、少しでも被害者が
減ればいいが。見ているという脅しが
どこまで通用するものやら。」
「魔法を使うと、この世界の魔法使いに
迷惑がかかるものねぇ。」
「そうだな。まだこの時代は、魔法使いの
立場は不安定だ。使わないほうが
正解だったよ・・・むっ。」
怜は時計を確認した。
「そろそろ、戻る時間のようだ。」
「おっと、もうそんな時間か。」
「・・・あの・・・。」
子供の怜が近づいてくる。
「怖がらせてすまなかったな。もう
いなくなるから、安心してくれ。」
「・・・違う・・・の、えっと・・・
こわいひとのこと、信じてくれて・・・
ありがとうございます・・・。」
おどおどしながらも頭を下げる。
「こらしめてくれて・・・ありがとう
ございます・・・。」
「・・・ああ。お前も勇気を出したな。」
優しく頭をなでる。
「何かつらいことがあったら、今日の
ことを思い出すんだ。きっと、
なんでも頑張れるぞ。」
「・・・う、うん!」
「ほれ、これ渡しとけ。」
ロウはUSBを怜に投げ渡す。
「おっと・・・これを持っておけ。
先ほど録音した警官の音声のコピーだ。
父親に渡すんだ。いいな。」
「わかった・・・!」
「なんだか困らせちゃったみたいで・・・
ごめんなさい。」
子供のましろは丁寧に頭を下げた。
「いいえ。・・・妹さんとは、
仲はいいですか?」
「え? はい。とっても仲がいいですよ。」
笑顔で答えた。
「そうですか・・・もしけんかしても、
すぐ仲直りしてくださいね。そうできなくて
私、とても後悔しましたから。」
「・・・? うん、わかりました。」
「えー? もう行っちゃうのか?」
子供の花梨は残念な顔をする。
「んだ。あんまり遊んであげられなくて
ごめんねえ。でもあんた・・・少しは
おらと違うところがあってほしかったべ。
なあんにも変わんねえんだすけ。おかげで
恥ずかしかったじゃ。」
花梨の顔が少し赤くなる。
「なに言ってんだぁ?」
「いんや。こっちの話だべ。故郷さ
戻ったら、うんめえ野菜作れよ。」
「任せてけろ! 姉ちゃんが遊びに
来たら、ごちそうしてやるすけ!」
「・・・ああ、落ち着いたら、それも
悪くねえな。」
「最初は不思議だったわ~。わけしり顔
だったから。」
「いえいえ、お役に立てたら嬉しいです~。
・・・やっぱりお姉さんって呼んで
いいですか~?」
あやせの顔をじっと見る。
「いいですよ。でも・・・将来は
あなたがみんなのお姉さんになるのよ。
アイダみたいに、ね。」
「アイダ・・・リーヴスさんみたいに?」
「彼女があなたのお姉さんだったとき、
アイダって呼ぶように言われたでしょう?
恥ずかしがらずに、そう呼んでよかったのよ?」
「そうだったんですかぁ? えっと・・・
ちょっと、恥ずかしかったので~・・・。」
体をくねくねとさせる。
「ええっと・・・アイダ・・・」
「そう。今度彼女に会ったら、私も
アイダって呼ぶようにするわ~。
今思うとあの人も、お姉さんしたかったのね~・・・。」
「うふふ~・・・言われちゃいました~。」
「言われた・・・? なんでしょう?」
「アイダに、お姉さんだけに伝えておいて
って言われたことがあります~。」
「え?」
あやせは耳を子供の自分に近づける。
「『時が来たら、私のところに来なさい。』」
「・・・時が・・・来たら?」
「『そして、次はちゃんとアイダって
呼んでね。』 これが本当に、アイダから
聞いた全部です~。よくわからないけど・・・
確かにお伝えしましたよ~。」
「・・・アイダが・・・このことを・・・?
私が、子供の私と出会うことを・・・
知っていた・・・・?」
表世界
魔法使いの村
「・・・よし、戻れたな。」
ロウは周りを見て、戻れたことを確認する。
「お帰りなせー。神凪、無事ですか?」
風子は怜に近づく。
「はい・・・有力な情報を得ました。
間ヶ岾に一歩近づけるかもしれません。」
「そりゃよかった。クリスマス、花見、
ガールスカウト、そして今回。これまでの
霧の嵐が、活かされますよ?」
「・・・・・。」
「海老名さん、どうされました?」
ぼーっとしていたあやせに
ましろは声をかける。
「あ、いえ・・・子供の私のことを
思い出して~。」
「ちょっと顔色悪いなぁ。あったけぇ
もん、作ってやろうか?」
「そうですね~。せっかくだし、
ごちそうになろうかしら~。」
「私もお手伝いします。」
花梨とましろは調理室に向かった。
「・・・アイダ・・・。我妻さんに
聞いたら、連絡できるかしら・・・。」