グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第258話 仮想空間へ

「ウィッチを・・・討伐します。

 力を貸してください。」

 

心は丁寧に頭を下げる。

 

「力を貸すのはいいよ。僕も仮想現実には

 興味がある。けど・・・前にダイヴを

 見たから、納得できかねるな。ウィッチは

 君を仮想空間内に閉じ込めようとしたんだろ?」

 

「ええ!? アリなのそういうの!?

 意識と肉体が分離しちゃうのか!?」

 

漫画や映画で見たような光景を危惧する。

 

「・・・あなたたちを呼ぶ前に

 仮想空間内に入ってみたわ。

 結論から言うと、通常そんな動きは

 しないと考えられる。」

 

「通常ってとこが引っかかるな・・・。」

 

「あなたたちを騙すつもりはないわ。

 すべて話す・・・。でも準備が

 必要だから、天が話すわ。双美さん、

 こっちに来て頂戴。」

 

「・・・質問があれば、いつでも聞いてください。」

 

「・・・なあ、ロウ。」

 

ひそひそとロウに話しかける。

 

「どうした?」

 

「あれが二重人格ってヤツ?」

 

望は心の二重人格を見たのは

初めてだったようだ。

 

「ホントに全然違っちゃうんだな・・・。」

 

「ったく・・・こっちにも準備は

 必要だってのに・・・。」

 

ぶつくさ言いながらも、

天は説明を始める。

 

「単刀直入に言うわよ。例えば仮想空間内で

 頭が吹っ飛んだ場合・・・アンタたちは

 死ぬ可能性があるわ。」

 

「なな! なんだよ、それ! やっぱり

 現実とリンクしてるんじゃんか!」

 

最悪のイメージが頭の中に浮かぶ。

 

「黙って聞きなさい。前提として、アンタの

 言うようなリンクはしてないわ。頭を

 吹っ飛ばされたことで電気ショックが

 流れるわけじゃない。想像力が、微弱な

 電気信号を脳に流すのよ。」

 

「・・・思い込みか。」

 

「なるほど・・・・。」

 

この説明でロウと鳴子は納得する。

 

「そう。仮想空間内は驚くほど現実的よ。

 アンタたちの脳がそこを現実だと

 認識すればするほど、ダメージを受けたときの

 現実感も増すってわけ。」

 

「うぅ~、で、でも話聞いた限りだと、

 ウィッチって仮想空間上だと無敵なんだろ?

 そんな奴にどうやって勝てばいいんだよ!」

 

不安の一つは消えるが、

新たな不安があった。

 

「それに、相手が仮想空間を熟知している

 ってことは倒すのはおろか、見つけるのも

 面倒だぞ。」

 

「そうなると、僕らは延々と鬼ごっこを

 することになりかねない。リスクが大きすぎないかい?」

 

「本来の目的は、ウィッチ本体の居場所を

 知ることよ。少し前からウィッチが派手な動きを

 始めた。そしてそれを、双美がかろうじて

 止めてきた。でも、これ以上は危険よ。」

 

結希と話す心をちらっと見る。

 

「長期戦になる前に、ここでウィッチの

 居場所を突き止めて、本体を捕らえる。

 そのための、アンタたちよ。」

 

「・・・か、勝たなくてもいいってことか?」

 

「勝つに越したことはないわよ。でも

 仮想空間内で頑張っても仕方ないわ。

 あっちは仮想空間を熟知している。

 きっと、殺しても死なないから。」

 

「危険があるのは俺らだけか。

 フェアもくそもねえな。」

 

「だが、双美君なら対抗できるわけだし、

 生き延びるだけなら何とかなるだろう。」

 

「・・・うぅ・・・仮想空間・・・でも

 ヤバイ・・・でも仮想空間・・・」

 

落ち着いているロウと鳴子の横で

仮想空間への憧れと恐怖で望が

葛藤していた。

 

「私が外からアンタたちをサポートするわ。

 と言っても、ログを監視するだけだから、

 大したことはできないけど。」

 

「連絡はどうやってやるんだ?」

 

「ダイヴ中もアンタたちの体はここに

 あって、音も聞いてるの。現実のことを

 忘れなければ、普通に会話できるわよ。」

 

「・・・なるほど。仕組みがだいぶ

 飲み込めてきたぞ・・・。」

 

「体がここにあるってことは・・・

 中でどんなことしても疲れないってことか・・・?」

 

仮想空間内の自分を想像する。

その顔は少しにやけていた。

 

「・・・・・よし、ボクも行くぞ。」

 

 

 

 

 

<ロウたち、仮想空間へ>

 

 

 

 

電脳空間

 

「・・・・・・! 来たわね。

 数は・・・そう、一人じゃないのね。

 お友達がたくさんいるのね。心ちゃん。」

 

裏世界の心、ウィッチは不敵な笑みを見せる。

 

「・・・・楽しみ。どんな顔をしてくれるのか

 楽しみよ。」

 

 

 

 

 

「・・・う、うおぉ・・・。」

 

望は辺りの光景に目をキラキラさせる。

 

「どうなってんだここ! すごいぞ!

 バーチャルパークなんてメじゃないぞ!」

 

「ゲーム以外であんなはしゃいでんの

 見たことねえな・・・。」

 

「・・・心躍る空間だ。よく見ると、

 僕らの体は実体じゃない。考えように

 よっては自由自在だ。」

 

「夢のようだな・・・。しかし、こんなに

 広いとどこにいるかわからないぞ。」

 

周りを見るが、他の人の気配はない。

 

「遊佐さん。ウィッチが最後に、あなたの

 電子の妖精に引っかかった場所・・・

 どうやら、アメリカのサーバーのようだわ。」

 

「アメリカの? それはまたどうして。」

 

「わからない。でもこの空間なら、距離は

 さほど問題じゃないわ。ただ、ウィッチは

 セキュリティが厳しく、重要な場所に

 入り込むと考えられる。」

 

「奴には、セキュリティはあってないような

 もんだからな。」

 

「だけど、僕たちには脅威になる、か。」

 

「注意しましょう。この空間では、

 ウィッチはコズミックシューターより強い。」

 

この事実に全員は危機感を覚える。

 

「こっちにも同じくらい強い双美君が

 いる。そこは心配してないよ。」

 

「・・・そういや、魔法はどうなってるんだ?」

 

「それは私が説明します。」

 

心も仮想空間に入ってくる。

 

「皆さんの魔法は、私の魔法をフィルタに

 して、この世界のルールに則ったもの・・・。

 プログラムのようなものに変換します。

 そして・・・」

 

「私の作ったダミーにダメージが与えられるのよ。」

 

「・・・!!」

 

ロウたちの前に、突如ウィッチが現れる。

 

「ようこそ、私の作った仮想空間へ。

 命知らずのあなたたちを歓迎するわ。

 遊んでいってね。」

 

「ウィッチ!」

 

「・・・ウィッチ?」

 

向こうはそう呼ばれていないため、首をかしげる。

 

「ああ、そうね。名前が同じだものね。

 でも失礼な呼び方。私の名前は双美心よ。」

 

「姿を現すなんて、いい度胸ですね・・・。

 捕らえられるとは思わないんですか?」

 

「私が? 冗談言わないで。捕らえられるのは

 あなたよ。心ちゃん。」

 

心を指さし、にやりと笑う。

 

「ずっと一緒に遊びましょう・・・ここは

 私たちだけの空間。連れてきたお友達は

 ・・・・・邪魔ね。」

 

「何を!」

 

「宍戸結希、楯野望、遊佐鳴子。覚えてるわよ。

 あっちで何度も邪魔された・・・嫌な

 思い出ばかり。」

 

3人の顔をにらみつける。

 

「せっかくだから、あなたたちとも少しだけ

 遊んであげる。」

 

そう言って、パソコンを操作する。

 

「さあ・・・私の魔法で生み出した、

 ウィルスデータを相手に何ができるか

 見せてもらうわ。」

 

ウィッチの姿が徐々に消えていく。

 

「ウィッチ! 待ちなさい!」

 

「ちょっと待て! ウィッチみたいなのが

 いっぱい来てるぞ!」

 

望の言葉通り、紫色の

ウィッチの姿をしたウィルスが向かってきていた。

 

「こんな時にお前が行っちゃったら、

 ボクたちどうするんだよ!」

 

「・・・! 遊佐さん、電子の妖精で

 追跡してください! まずは、この

 ウィルスを排除しましょう・・・!

 そして、その後は、ウィッチを・・・!」

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