グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

271 / 337
第261話 表と裏の心

「あなたは、生かして捕らえます。」

 

「・・・そう、本当に、いい友達を

 持ったわね。・・・反吐が出そうよ。」

 

ウィッチは心を鋭い目で睨みつける。

 

「私たちを進化させた霧を、排除しようと

 するなんて。」

 

「共生派の意見は結構です。一切

 興味はありません。あなたはもう

 戦う魔力はないはずです。」

 

心の言う通り、ウィッチは

疲れの色を見せていた。

 

「一緒に戦う仲間も、ロウさんもいない

 あなたには・・・もう、戦う力は、

 残ってないはずなんです!」

 

「・・・どこで間違えたのかしらね。

 実崎の件を吹き飛ばす大事件と、

 あなたをこの世界の住人にすること。

 うまく行けば、両方ともできたのに。」

 

自嘲気味に少し笑う。

 

「それもこれも・・・相田ロウ。

 『切れ端』でありながら、殲滅派で

 いる裏切り者。」

 

徐々に怒りを含ませる。

 

「・・・切れ端とは、何ですか。」

 

「『魔物と人類を繋ぐ』人間。彼は人類で

 あり、魔物。」

 

「・・・魔物?」

 

「あら、なぜ彼が始祖十家に狙われたか、

 知らないの? 聞いてみなさい。そして、

 安易に私を救うなんて言わないで。」

 

心が差し伸べた救いの手を

ウィッチはあっさり払う。

 

「私はあなたたち殲滅派とは、絶対に手を

 取り合わないわ。間ヶ岾の目的が

 達成されるまで・・・私とあなたの

 二人きりになるまで・・・!」

 

「・・・どうして、そんな風になって

 しまったんですか・・・。裏世界の

 私は、優しい子でした・・・。」

 

裏世界の子供の自分を思い出す。

屈託のない笑顔を浮かべていた。

 

「・・・わかりました。あなたを生かして

 おくと、みんなが危険だというなら・・・。

 今ここで、あなたを殺します・・・!」

 

「・・・できるの? あなたに?

 人を殺すことができるの?」

 

「します・・・! ・・・・!?

 なっ・・・どうして、今・・・

 目覚めないで・・・! 今は・・・!

 ・・・・・・ふぇ?」

 

ウィッチの前で、表の心の人格が

出てしまう。

 

「あれ? あなた・・・どど、どなた

 でしょう!? あああ、あの! ここは

 わたしの作った仮想空間なのですが・・・。」

 

「そう、あなたが・・・。やっぱりあなたが、

 双美心を守っていたのね。」

 

 

 

 

 

 

「・・・ロウ君。もうすぐ鍵が開く。

 魔力譲渡をやめずにそのまま聞いて。

 仮説を立ててみたの。」

 

「? 仮説?」

 

ROOMによって、壁向こうの

心に魔力を送り続ける。

 

「霧の嵐で過去に行ったときに会った、

 子供の双美さん、覚えてる?」

 

「・・・ああ、よく覚えてる。」

 

「・・・どちらかというと、冷静なほうの

 双美さんに似ていると思わなかった?」

 

「・・・そういやそうだな。あれが

 のちに気弱になるとはどうも

 思えねえな・・・。」

 

子供の心を思い出す。

 

「私たちは、すぐに謝る双美さんが

 主人格で、もう一人が副人格・・・

 そう思っていた。」

 

「まさか、本当は逆・・・?」

 

「ええ。主人格である双美心を守るために、

 代わりに、全てを守る副人格・・・

 心ちゃんが生まれたのかもしれない。」

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

「? ・・・ここは・・・。

 ・・・・!?」

 

その頃、扉の向こうでは

あることが起こっていた。

 

「こ、心ちゃん!?」

 

「ひぇぇ! わたしがもう一人いますぅ!」

 

表の人格の心と裏の人格の心が

それぞれ、目の前にいた。

 

「ど、どうして・・・! まさか、

 ロウさんの魔力で・・・?」

 

「・・・あなたのストレスが溜まったから、

 副人格の彼女が出てきたのよ。」

 

「副人格・・・!? そんなはずありません!

 私は心ちゃんを守るために生まれた!

 だから・・・副人格は私! 心ちゃんは

 私が出ているときのことを覚えてないじゃない!」

 

目の前の現実に、裏の心は

激しく動揺する。

 

「自分で調べなさい。解離性同一性障害と

 解離性健忘は同じじゃないわ。それに自分に

 ストレスが溜まっているときは、それが

 解消されたか・・・心ちゃんが謝ってくれたかを

 覚えてなきゃいけないでしょう?」

 

「・・・そんな・・・騙されませんよ・・・!」

 

「別に信じなくたっていいわよ。それより・・・

 もう鍵が開く。時間が無いの。さようなら。」

 

表の心にウィッチの魔法が襲い掛かる。

 

「や、やめて! 心ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

「よし、そろそろ開くな。」

 

バァン!!

 

扉が開いた直後、

魔法の激しい音が鳴り響いた。

 

「!? な、なんだ!?」

 

ロウたちは急いで中に入る。

そこには、息を切らした裏の心と

ボロボロのウィッチが横になっていた。

 

「うっ・・・。」

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

「ロウ君、双美さんが魔力切れよ!」

 

ロウは心の魔力を回復させる。

 

「・・・あ、あなたを守るために・・・

 自分の魔力、全部一気に使ったみたいね・・・。

 おかげで、私の頭・・・砕かれちゃったわ。

 強い・・・じゃない・・・。」

 

ウィッチの意識が徐々に

弱くなっていく。

 

「だ、だめです! 喋らないでください!」

 

「あ、あなた・・・こんな面倒くさい

 性格して・・・よく、まともに生きて

 こられた・・・わね・・・。」

 

ウィッチはかすかに笑う。

 

「・・・間ヶ岾・・・失敗、しちゃった・・・。

 まが・・・やま・・・ごめん、なさ・・・・」

 

ウィッチの目は閉じ、意識がなくなった。

 

「な、何が起きてんだ・・・?

 双美が二人いるぞ! バーチャルだから!?」

 

「・・・双美さん。」

 

「は、はいぃぃ!」

 

「いえ、あなたではないほうの双美さんよ。

 自分のことを話してあげて。何が起きたか

 説明してちょうだい。」

 

心が説明する間、ロウと鳴子は

天に連絡を取っていた。

 

「如月君。こっちは終わった。後は

 ウィッチの居場所だ。こっちも多分

 すぐ戻るよ。」

 

「・・・ウィッチは、死んだのか?」

 

「おそらく、そうだろうね。あれが

 演技なら大したものさ。」

 

「わ、わたしがもう一人・・・。

 そ、そうだったんですね・・・時々

 記憶がなくなるのは・・・。」

 

表の心は裏の心に説明されている。

 

「その件では迷惑をかけました。・・・博士。

 ウィッチは、私が殺しました。ですから、

 心ちゃんに罪はありません。」

 

「・・・何を言いたいの?」

 

「心ちゃんは、もう私がいなくても

 生きていける。私は役目を終え、裏世界の

 けじめもつけました。・・・ちょうど

 今、こうして肉体を持たない状態で

 存在できています。」

 

そういって、自分の手を強く握る。

 

「ここで消えてしまえば・・・私が死ねば、

 私という人格は、消えるかもしれません。」

 

「あなた・・・! そんなことすれば・・・!」

 

「私が強く認識すれば、きっと心ちゃんの

 体にダメージはない。私は心ちゃんを

 守るために生まれてきました。ですから、

 自信があります。」

 

「あ、あああ、あの!」

 

「気にしないで。ウィッチが言ったことは

 あり得ません。あなたが主人格。私が

 消えればはっきりする。」

 

穏やかな笑みを浮かべる。

 

「会ったばかりですけど・・・さようなら。

 ・・・応援、してますよ。」

 

「話を聞いてくださいぃ!」

 

表の心、そして、話を聞いていた

ロウが腕をつかんで止める。

 

「・・・ろ、ロウさん・・・心ちゃん・・・。

 ・・・離してください。」

 

「まだ、表のほうの意見聞いてねえだろ。

 それに、死のうとしてるやつ止めねえ

 やつがいるか。」

 

「ま、まだ全然納得できてないんです!

 あなたが消えちゃう理由もわかりません!

 理解が悪くてすみません! でも

 それって間違ってますぅ!」

 

「ただ、間借りしていた私が消えるだけの

 ことです。ですから・・・」

 

「すみませんすみません、離せません~!」

 

つかむ力が強くなる。

 

「いなくなる必要なんてありません!

 いてほしいんです! よくわからないけど、

 いてほしいんです~!」

 

「・・・・・私は・・・・」

 

ふいに裏の心の姿が消える。

 

「・・・?」

 

「あれ!? こ、心さん!?」

 

「・・・消えたんじゃない。あなたの

 中に戻っただけ。・・・それより、

 脱出しましょう。ウィッチが消えて、

 この世界も崩壊するわ。これで・・・

 一番の敵を、倒した。」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。