グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
魔導化学研究所
血相を変えた間ヶ岾が
大きな足音をさせながら、
周りを見る。
「・・・・。」
「・・・ここに、双美さんがいるのか?」
間ヶ岾は何も答えず、奥に進んでいく。
「・・・答える余裕もないなんて・・・。」
「・・・・・・!」
間ヶ岾が見つけたのは、
意識なく横たわっていたウィッチ
・・・裏世界の双美心だった。
「・・・やはりここにいたのか・・・。科研は
かつて、君の家だったからな。君が一番
初めに壊した場所でもある・・・ゲンを
担いだのかい。」
意識がない心を優しく抱える。
「・・・ふ、双美さん・・・。」
「・・・私は、君に命令しない。
だから・・・安らかに眠れ。
君の仇は、私が討とう。」
間ヶ岾の目は激しい怒りに燃えていた。
学園
噴水前
「あ、いたいた! ロウ~!」
目を輝かせて、夏海がロウに駆け寄る。
「なんだ。」
「あんたのシャツ、貸して!」
キラキラした目でわけのわからない
提案をされ、ロウは少し固まる。
「俺のシャツ・・・? 何に使う気・・・
いや、どうせくだらねーことだろ。」
「やだなー。変なことに使わないって。
あんたって、学園の女子にやたら
モテてるじゃない?」
「何の話だ。」
「まだ自覚ないの・・・とにかく!
それって、体質じゃなくて、あんたが
女子を惹きつける何かを発してるんじゃない!?」
ロウの来ているシャツをじーっと見る。
「『噂の転校生、ロウが振りまくフェロモンを
徹底調査!』 どう? いけてない。」
「話は終わりだな。」
すたすたと寮に戻ろうとする。
「ああ、待って、行かないでよ~! もう
ネタ切れなのよ!」
夏海はロウにしがみついて
引き留めようとする。
「しつこいぞ、離せ!」
「お願い! 協力して~! ね、ね!
迷惑かけないから! 絶対!」
「・・・・1回だけだ。後で
飯おごれよ。」
「え、あんた、すごい食べるんじゃ・・・。」
「じゃあな。」
「ああ、うそうそ! か、替えのでいいから・・・!」
また帰ろうとするロウを必死に止める。
「じゃ、じゃあ、明日ね! 絶対絶対
忘れないでね!」
翌日
掲示板前
「ほれ。」
きれいに畳まれたシャツを
雑に投げ渡す。
「ん、ありがと! じゃあこれを、
ハンガーに吊るして・・・」
吊るされたシャツを掲示板にひっかける。
「これでオッケー!」
2人は近くに隠れる。
「さーて、何人釣れるかな~。生徒会長や
絢香だったら、それだけで一面トップよ!」
「・・・・・。」
(俺は何やってんだ・・・?)
数時間後
一人の生徒がシャツを
少し見て、そのまま何もせず行ってしまう。
「ああ! また無視された! どうして!?」
「俺が知るか。」
「やっぱり、本体が発するにおいでないと
ダメなのかしら?」
「・・・あ。」
「なに、どしたの?」
ここでロウがあることに気づいた。
「あれ、洗ったばっかのやつだ。」
「えぇえ!?」
「お前が替えのでいいっつったんだろ。」
「そりゃ、言ったけど~! 洗い立て
だったら洗剤の匂いしかしないじゃない!」
頭を抱えた夏海は、ロウのシャツを
じっと見る。
「こうなったら・・・あんた、今着てる
シャツ脱ぎなさい。」
「はあ? なんでここで!」
「いいじゃない! あそこに替えがあるんだから!
脱ぎたてほやほやなら、きっと結果が
変わるはず!」
「付き合いきれねえ。『ROOM』。
『シャンブルズ』。」
掲示板にかかったシャツを回収し、
夏海をかわし、姿を消した。
「ああ! ちょっと、どこ行ったの!?
ロウ~!」
この大声がきっかけで、風紀委員に
捕まるのはまた別のお話。
廊下
「ったく・・・・・んっ。」
呆れながら歩いていると、
生徒と肩がぶつかる。
「ああ、悪いな。」
「・・・いえ、こちらこそ・・・・
・・・あなたですか。」
イヴは軽くため息をつく。
「人の顔見てげんなりしてんじゃねえよ。
悪かったって言ったろ。」
「・・・ええ、では。」
イヴは少しふらついた足取りで
教室に向かっていく。
「・・・あいつも変わんねえな・・・。
つか、ふらついてんじゃねえか・・・。」
数日後
『ひっく、ひっく・・・お姉ちゃん、
あたしもうこんな家いやだ・・・。」
『そんなこと言ったって、家から
出ても生きていけないでしょう?』
『お姉ちゃんはいいよ! 勉強が
できるんだから! なんで、なんであたし
ばっかり仲間外れなの? あたしは家族じゃないの?』
『・・・それは・・・。』
『・・・なんであたしばっかり、ひとりぼっちに
するの・・・。』
『ひとりぼっちじゃないわ。だから泣かないで
ノエル・・・。私が・・・私がずっと一緒に
いるから・・・。』
「・・・! ノ、エ・・・・・・夢?」
目覚めたイヴは頭を押さえる。
「また、こんな夢を・・・いつの間に眠って
しまったのかしら。勉強しなきゃ。
遅れを取り戻さないと・・・。」
『やだ、いやだ! 【お姉ちゃん】!
うそでしょ? なんで!? どうして!?』
『【あたし】より、魔法が優秀だったんでしょう?
だからエリートになるんだって、言ってた
でしょう!? なんで・・・なんであなたが・・・。』
『死ぬのは【私】のはずだった! こんなことなら、
入れ替わるんじゃなかった・・・こんなことなら
・・・あんなにひどいことを言うんじゃなかった。
こんなことなら・・・もっと・・・あなたに・・・。』
『ノエル・・・!! ・・・・・っ、あああぁぁ・・・
うああぁぁぁぁ・・・・!!』
「・・・うわあああ!」
飛び起きたノエルはかなり汗をかいていた。
「はあ・・・はあ・・・また見ちゃった・・・。
お姉ちゃんがあたしで、あたしが・・・」
夢の光景が思い出される。
「もう、いやだよ、こんなの・・・
あたし、どうしたらいいの・・・?」
ピリリリ!
「・・・あ、お母さん。」
電話の相手はノエルの母親だった。
「うん、大丈夫。当日は予定通り行くから。
・・・じゃあ、汐ファンでね。
・・・・はあ・・・。」