グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「お姉ちゃんとは・・・えっと、まだ
会ってない・・・。」
ノエルもまた、母から電話が来ていた。
「連絡してるんだけど、既読つかなくて・・・
あはは・・・。・・・・はい、わかりました。
・・・うん、合流します。はい・・・。」
電話を切る。
「・・・はぁー・・・。」
「今のだれー?」
明鈴はノエルのデバイスを覗き込む。
「・・・お母さんだよ。今日、お父さんの
仕事で遅くなるって。」
「お母さん? ノエルのお母さん、怖いの?」
「え!? な、なんで!?」
思わぬ質問だったのか、
ノエルは慌てた。
「電話口の声が緊張してるからな。
俺でもわかる。」
「うぐっ・・・やっぱり、わかっちゃうよね。
その、会うのをためらうっていうか、
怖いっていうか・・・。」
「んー・・・ホントは仲良くしたい?」
「うぐぐ・・・明鈴ちゃん、ズバズバ
くるなぁ・・・。そりゃ、仲良くできたらって
思うよ。」
ため息をつき、ベンチに座る。
「学校に上がる前は、家族みんな仲良かったん
だけど・・・姉妹で成績に差がつきはじめたら
なんとなく気まずくなってきちゃってさ。」
少し言いにくそうにしながら、頬をかく。
「うち、親戚もみんなエリートコースだから
そういうのもあって・・・。あたし、勉強
できないし落ちこぼれだから・・・
多分、今も煙たがられてると思う。」
「じゃあ、なんで今日会うことになったの?」
「・・・わかんない。急に会おうって
連絡が来て・・・。」
「嫌いだったら、きっと会おうとも
思わないのだ。ノエル、家族がいるなら、
会えるうちにちゃんと話したほうがいいよ。」
「・・・できる、かな・・・仲直り。
お姉ちゃんとも。」
「きっとできるよ。家族だもん。」
その言葉を聞いた途端、ノエルは
涙を流した。
「大丈夫アル。ボクも、ロウもついてるから。
ね、ロウ。」
「ああ。まっ、俺は親のそういうことは
さっぱりわからんがな。」
「・・・ありがとう。・・・明鈴ちゃん・・・
お兄さん・・・・。」
『うふふ・・・お母さんたら、あたしをすっかり
お姉ちゃんだと思い込んで!』
『そうね・・・こんなに入れ替わっても、案外
気づかれないものなのね。』
『いつもお姉ちゃんと一緒だから、マネ
するのなんて簡単~♪ ねえ、またやろうよ!
入れ替わるの、すっごく楽しい!』
『でも・・・あんまりやると、見つかった時に
怒られるわ。』
『あたしはどうせいつも怒られてるもん。
お姉ちゃんと違って。』
『そういう問題じゃないでしょ。』
『・・・お姉ちゃんはいいよ。普段からあんなに
優しくされてるんだもん。たまにはあたしだって、
かわいがられたいよ!』
『・・・じゃあ・・・私の代わりに、毎日
勉強する? 毎日、お父さんとお母さんの
いうことを聞ける?』
『もー、それができないから、お願いしてるんじゃん!』
『じゃあ、だめよ。私になりたいんだったら、
勉強しなきゃ。お母さんもお父さんも、冬樹は
エリートだからって、よく言って・・・』
『・・・うるさいなぁ! お姉ちゃんにはどうせ
あたしの気持ちなんかわからないよ!』
『・・・あなたにだって、私の気持ちは
わからないでしょう・・・。期待に
押しつぶされるよりいいじゃない。』
救護室
「・・・・・ここは・・・・?」
頭を抱えながら、イヴはゆっくりと
起き上がる。
「また、あの子の夢・・・。しっかりしなきゃ。
おかしいわ、私・・・。ずっと一人で
頑張ってきたじゃない。今更・・・・。
・・・ノエル・・・。」
「さて・・・そろそろ仕事に戻ると
するか。」
デバイスで時刻を確認する。
「ありがとう、お兄さん。」
「イヴから連絡はあったか?」
「ううん・・・でも、園内にいるはず・・・。
だから、歩いて探そうと思うの。
今度は、勇気を出して、話してみる。」
決意を口にし、手を強く握る。
「あの夢を、絶対繰り返さないように・・・。」
「いたいた、ノエルー!」
明鈴が何かを抱え、駆け寄ってくる。
「みんなにあげようと思って、もってきた
物があるのだ! はい! ロウに1つ、
ノエルには・・・2つ。」
そう言って、明鈴はりんごを手渡す。
「これは?」
「ボクの祖国では、クリスマスにリンゴを
プレゼントするのだ。ノエルにはイヴの分も
渡したからな! 願掛けアル!」
「明鈴ちゃん、ありがとう! あたし、
お姉ちゃんを探してくる!」
ノエルは笑顔で駆け出していく。
「がんばれ! ノエル!」
その頃
「ったく、おっせーな・・・何やってんだ?」
メアリーは苛立ちから貧乏ゆすりを
何度もする。
「・・・ん?」
救護室に運ばれたはずのイヴが
ふらふらしながら出てくる。
「あのヤロー、救護室で寝てたんじゃ
なかったのかよ。真っ青な顔しやがって、
ったく・・・。」
「・・・・・!」
イヴの足がもつれ、壁に寄り掛かる。
「・・・・・おい!」
さすがのメアリーも心配になり、
駆け寄る。
「・・・す、すみません。大丈夫です・・・。
・・・!? メアリー・ウィリアムズ・・・。」
壁を支えに、立ち上がる。
「大丈夫じゃねーだろ。一人で来たのか?
連れは?」
「・・・いえ、その・・・。」
「救護室で寝てろ。学園に連絡して、
保健委員に迎えに来させる。」
「あ、あの、連絡は、やめてください・・・・
ただの睡眠不足ですから。」
ふらっとしながら歩いていこうとする。
「どこ行くつもりだよ。そんなフラフラで
動き回るつもりか? 具合が悪いんなら
帰れ。アタイらの仕事が増える。」
「・・・すみませんが、これからどうしても
外せない用事があるので。それまでは、適当に
時間を潰します。あなたたちに迷惑は
かけませんから、放っておいてもらって結構です。」
そう言うと、イヴは人ごみの中に
入っていく。
「・・・チッ、生意気な口ききやがって。」
「何不機嫌な面してんだ?」
「あ、おい! ロウ! テメー、どこで
油売ってやがったんだ。」
「いろいろあってな。んで、なんかあったのか?」
「あっちに、フユキの姉のほうがいるから
ぶっ倒れねーか見張っとけ。」
「・・・なに?」
メアリーが指したのは、ノエルが
いた方向とは逆だった。
「ちょうどいいからいいけどよ・・・
持ち場があるだろ。」
「アタイ一人でカバーできる。なんか問題
起こしたら、風紀委員のヤツらがうるせーぞ。」
「確かにな・・・ところで、イヴの
様子はどうだった?」
「なんか知らねーが、思いつめた顔だったな。」
「ったく・・・わかった。こっちは
頼んだぞ。」
ロウはイヴが歩いたほうに向かう。
「ハァ・・・今日は楽な現場だと
思ったのによ。打ち上げ派手にやんねーと
割に合わねえぜ、こりゃ。」