グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・ご苦労様でした。」
そう言った薫子は、絢香に頭を下げる。
「いえ、あたしも・・・その・・・
役に立てるならって思ってやったので。」
間ヶ岾の心の声を聞いた絢香は
少し言いにくそうにしながら、
その内容を話す。
「・・・霧の切れ端・・・って、
言ってました。ロウ君が、霧の切れ端じゃ
ないかって。」
「・・・霧の、切れ端? それはなんだ?
間ヶ岾の本拠地については何も
聞こえなかったのか?」
聖奈は絢香に少し慌てた様子で尋ねた。
「・・・その言葉だけではわかりませんでした。
・・・でも・・・みんなの知ってることが
繋がるんです。霧の切れ端と、ロウ君が
ムサシになること・・・。」
顔が徐々に険しくなる。
「人と魔物を繋ぐもの・・・ロウ君は
共生派にとって、間ヶ岾にとって、
無くてはならない、神のように崇めるべき立場なんです。」
「ま、待て! 皇! 急に話がわからなく
なってきたぞ! 神のように崇めるべき・・・
どういうことだ!?」
「人類が魔物になること・・・ムサシのような
強い魔物になることは・・・間ヶ岾にとって、
進化の最終到達点なんです。」
「最終到達点・・・共生派の主張は、霧は
人類を進化させ魔法使いにした、ですが・・・。」
薫子と聖奈は驚きを隠せない。
「その先は・・・魔物に、なること・・・
なんですか?」
「はい。そして実崎副総監が捕まった瞬間に、
間ヶ岾は物凄い勢いで、ロウ君を拉致する
計画を組み立て始めました。間ヶ岾の心の声は
とても強かった。きっと、学園に攻め入ってきます。」
「・・・・・。」
「・・・学園に、攻めてくる・・・。馬鹿な。
もうヤツの周りに人材はいないんだぞ。いくら
間ヶ岾でも、逃げることしかできないはずだ。」
強力な味方だったウィッチも失って
しまっている。
「攻めてくるにしたって、ヤツ自身は
一般人なんだぞ? ほかのテロリストたちも
動かせない。操った魔物だが・・・ヤツは魔物が
仲間であるかのように喧伝している。それなのに
学園を襲わせるわけがない。どう考えても悪手だ。」
「・・・それなら、いいんですが・・・。
霧の切れ端という言葉が彼の頭に浮かんだ瞬間、
他の考えが消えました。彼にとっては、それほど
までに強い言葉なんだって思います。」
絢香はゆっくりと頭を下げる。
「・・・ロウ君を・・・守ってください。」
浅梨の部屋
「忙しいのはわかりますよ、そりゃ。」
風子は話があり、ある人物のもとを
訪れていた。
「品川が襲われ、ウィッチが死に、裏世界へ
行かなければならないんですから。ですが、
こっちだって深刻な問題なんですよ。
わかります? 何か聞いてません?」
「いやぁ、何も聞いてないね・・・ってか
何の話?」
我妻梅は軽く首をかしげる。
「卒業ですよ。生徒会長が卒業したら、次の
生徒会長を決めなければならないでしょ。
生天目つかさ、遊佐鳴子、雪白ましろ・・・
抜けられたら困るひとたちが抜けちゃうんですよ。」
「そりゃ、時間停止の魔法が切れれば仕方ない
ねえ・・・。」
来年度以降の戦力低下を風子は危惧していた。
「でもアレでしょ? 裏世界は虎ちゃんから
あなたに代替わりしたから・・・きっと
こっちでもあなたを指名すると思うよ?」
「それじゃ困るんですよね。予定では年度末
までに霧の護り手を壊滅・・・後始末に
追われてる段階のはずだったんですよ。」
「ずいぶん自信があるね。誰も手だし
できなかったテロリストだよ?」
「そのテロリストが、ここまで弱ってるんですよ。
むしろ今、潰しとかねーと、ゴキブリみてーに
復活してきます。そんな忙しいときに、
生徒会長って言われても、無理無理の無理ですよ。」
「ワガママだなあ。で、私になにかして
ほしいんでしょ? そのために部屋まで
来てるんだから。」
「卒業をなかったことにできませんかね。」
それを聞いた瞬間、梅の顔が険しくなる。
「・・・いやー、制度にテコ入れるのは
難しいと思うよ。それに卒業しないってことは
留年でしょ? 彼女たちの将来を考えると
やめたほうがいいと思うなー。」
「今年、卒業しないのは合理的理由があります。
第8次侵攻がありますからね。」
大量の魔物が攻め込む悍ましい
光景が脳裏に浮かぶ。
「学園を守るために、歴代で最もカリスマ性の
高い武田虎千代が必要なんですよ。」
「・・・まあ・・・私も虎ちゃんに言ったんだよね。」
「え?」
「だけど、今年の卒業生はもう有名に
なっちゃったんだよね。虎ちゃんはもとより
つかさちゃんも引く手あまた。遊佐さんは
・・・就職する気ないみたいだけど、雪白さんも
国軍が狙いをつけてるって言うし・・・。」
「第8次侵攻を乗り切るためですよ。」
風子の目が鋭くなる。
「・・・わかった、秘策を授けよう。ただし、
オフレコね。」
???
「・・・・グリモアの連中め、忌々しい・・・。
どこまでも邪魔してくれるじゃないか。」
間ヶ岾は怒りからか、いつになく
苛立ちを隠せていない。
「・・・間ヶ岾・・・。あなたのこれまでの犯罪が
明るみになっている。あなたの立場が危うく
なるから、双美さんは一人で戦い・・・そして
亡くなった。」
「グリモアの学園生が殺したのだ。その相手と、
まだ対話をしろというのかね。」
光男を強く睨みつける。
「前にも言っただろう。もともと彼女らと私に、
和解の余地などないのだ。共生派が主流と
なるために、殲滅派の先鋒として動く
彼女らは邪魔なのだよ。」
「戦ったら負けるということはわかっているだろう!?」
間ヶ岾の言い分に、光男は声を荒げる。
「それなのに、なぜそこまで自信満々に
振舞うんだ! 虚勢じゃないか! 罪を
償ってくれ! あなたの影響力はとても
大きいんだ。」
「・・・・・。」
「この数か月で、共生思想を理解してくれる人は
爆発的に増えた。あなたが本気を出せば、
言葉で主流を変えることも可能だ!」
「・・・出ていきたまえ。」
「・・・!」
驚きで目を大きく開く。
「君を人質にでもしようと思ったが・・・
側にいる間、わめき続けられたら頭が
どうにかなってしまいそうだ。あとは
私一人でいい。神宮寺樹のいるJGJに
帰るなり好きにしたまえ。」
「・・・・テロを・・・テロを起こすつもりか?」