グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第268話 裏世界の大垣峰

「・・・テロを起こすつもりか?」

 

「・・・・。」

 

光男の質問に対し、間ヶ岾は

目を閉じ、沈黙する。

 

「まさかここにきて、これまで築いてきた

 ことを台無しにするつもりか!? あなたに

 とって真の共生とは、行き詰ったら凶行に

 走る程度のものだったのか!」

 

「出ていきたまえ!」

 

顔が険しくなり、声を荒げる。

 

「・・・もしあなたが更なる罪を犯そうとする

 なら、今度は許さない・・・!」

 

間ヶ岾を強く睨みつける。

 

「ライフストリームは巻き込ませない。すべてを

 話して、霧の護り手とは縁を切る! ・・・あなたは

 せめて、双美さんのことを忘れないでください。」

 

そう言い残すと、光男は間ヶ岾の

もとから出て行った。

 

「・・・・・道はなくなったか・・・? 双美君、

 なぜ私に何も言わず、グリモアと戦った・・・?

 ・・・この映像データを送ってきたのはなぜだ?」

 

間ヶ岾が開いたパソコンには、

ある映像と音声が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

『・・・魔物はここまで来ない。地上が壊滅しても、

 我々は研究を続ける。』

 

『デーヴィー所長。検体Aの様子に変化は見られません。』

 

『わかりました。私は外に行き、少しでも魔物を

 倒しましょう。ここが安全だとしても、文明が崩壊

 してしまえば、我々が単独で生きることはできない。

 武田虎千代と検体Aの経過をログにとって。

 人類の希望となるはずの二人だから。』

 

・・・ドォン・・・!

 

『・・・今の音は・・・?』

 

『外の戦闘音ではないですか?』

 

『いえ・・・もっと近い・・・・・・

 検体Aの部屋よ! 急行!』

 

『所長! Aに異変が! 体が魔物に変化しつつ

 あります!』

 

『魔物に!? どういうこと!?』

 

『わかりません! 何の前触れもなく・・・・え?

 きゃああ!!』

 

『ぼ、膨張している!』

 

『まさか、これが・・・彼の体の一部・・・?

 大きすぎる! 他の検体を避難させて!』

 

『し、しかし・・・』

 

『急いで! ジェイソン、この記録を見つけたら

 誰かに見せて! もし人類に甚大な被害が

 出たのなら・・・この魔物は・・・・

 人間が変化したものよ!』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・答え合わせというわけか。

 マーヤー・デーヴィーが学園生と戦うことに

 なったのは、この映像が原因だな。」

 

間ヶ岾はにやりと笑う。

 

「しかし、双美君・・・なぜこれを隠した。

 私の唱えてきたことが、正しかったことの

 証明ではないか。相田ロウは、人類と魔物を

 繋ぐ架け橋・・・霧の切れ端で、間違いない。」

 

徐々に間ヶ岾の体が震えだす。

 

「なぜ・・・なぜ、私ではないのだ・・・!

 霧の魔物は、なぜ私を選ばない!

 ・・・・・・・んん? なんだ?」

 

怒りに燃えていた間ヶ岾だったが、

映像を注意深く見た。

 

「今の声は・・・なんだ? む、まだ

 ファイルがあるな・・・。

 ・・・・・・・ふふ・・・。」

 

間ヶ岾は不気味な笑みを浮かべる。

 

「これは・・・いいな・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

裏世界

 

大垣峰

 

グリモアは10回目の

裏世界探索のため、大垣峰に来ていた。

 

「・・・なんだここは。本当に大垣峰か?」

 

紫色の空が広がり、地面には

無数の裂け目があった。

あまりの光景に、虎千代は驚く。

 

「表の大垣峰も十分以上に禍々しいが・・・

 これはまるで・・・」

 

「地獄だな。」

 

「・・・お前は・・・。」

 

後ろから声をかけたのは、

白黒の迷彩服に身を包んだ裏世界の

虎千代だった。

 

「よく来たな・・・会えてうれしいぞ。」

 

「アタシもだ。今日はよろしく頼む。」

 

二人の虎千代は固い握手を交わす。

 

「・・・確認させてくれ。あなたは

 戦える・・・のか?」

 

「ふふ・・・子供がそんなことを気にするな。

 任せておけ。」

 

「そういうわけにはいかないんだ。」

 

「ん?」

 

「アタシたちの表世界に、ここまで霧に

 蝕まれた場所はない。どんな魔物が出るか

 わからないんだ。正確な戦力を把握させてほしい。」

 

「・・・なるほど。」

 

頷きながら、笑みを浮かべる。

 

「アタシより長く生徒会長を務めているだけの

 ことはある。細かいところまで気が利くじゃないか。」

 

「・・・話を逸らさないでくれ。大事なことだ。」

 

「悪かった。そういうつもりじゃなかったんだ。だが

 見ればわかるだろ? こうしてしっかり立って、

 お前と話をしている。ここの魔物は強いが、

 それでもアタシとつかさの敵ではない。」

 

「・・・体に霧が入り込んで10年以上だぞ?」

 

「不安なのはわかるが、まあ見ていろ。魔物が

 現れたらすぐにわかるさ。」

 

 

 

 

 

 

「「・・・・・・。」」

 

二人の虎千代のすぐ近くでは、

二人のつかさが互いの姿を見ていた。

 

「貴様・・・南半球でなにをしていた。今日まで

 生きていたということは、本懐は遂げられなかったようだが。」

 

「・・・本懐? なんだそれは。」

 

「強大な敵と、命尽きるまで戦うことだ。それで

 死ぬことこそ、私の望みだろう?」

 

「・・・ククク・・・ハハハ・・・!」

 

表のつかさの言葉を聞き、

裏のつかさは豪快に笑う。

 

「残念だが、10年も経てば人は変わる。今の

 私は死ぬわけにはいかない。だから生きている。」

 

「貴様は、本当に私なのか。いつからそこまで

 軟弱になった。」

 

つかさは裏の自分を睨みつける。

 

「すぐにわかる・・・本当に、すぐにな。」

 

にやりと笑う。

 

「・・・貴様、何を隠している?」

 

「知ったら羨ましがるからな。わかってからの

 お楽しみだ。そろそろ出発だろう。私は先に行くぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・久しぶりだな。」

 

「ああ、よく来てくれた。」

 

こちらでは、2人の聖奈が会っていた。

 

「これで本当に、私の役割は終わりだな。」

 

「・・・障壁の魔法で、しばらくは大丈夫。」

 

穏やかに笑う裏の聖奈のもとに

裏のさらがやってくる。

 

「でもゲートの近くは霧も濃い。保証なんて

 ないのと一緒よ。」

 

「・・・役目は終わったというなら、これ以上

 進む必要はないだろう。休んでいろ。」

 

「フフ・・・そうもいかない。私の役割は

 終わったが、頼まれた仕事がある。水瀬の

 役割を、私が代わりに果たす。」

 

「副会長の役割?」

 

「ああ。あの人の最期を見届けることだ。」

 

横目に虎千代を見る。

 

「・・・教えろ。今、そっちの元生徒会は

 どういう状況なんだ・・・!」

 

「出発だ! 今日中にゲートまで向かうぞ!」

 

裏の虎千代の声が響く。

 

「戦闘はアタシとつかさに任せろ! グリモアの

 生徒は警戒を頼む!」

 

「ふ、二人だけで戦うのか!?」

 

「こっちは自由にやれってことか?」

 

「いざとなれば両方の助太刀をする。

 とにかく・・・まずはゲートに、全員で

 たどり着かねば。」

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