グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・大垣峰がここまで禍々しく
なるとは。いったい何があったんだ。」
大垣峰の変わり果てた姿に
虎千代はいまだ慣れない。
「ただ時間が経っただけだ。特級危険区域は
結界の魔法で覆われている。結界の作用で
外に漏れる霧は少なくなるが、代わりに内部に留まる。」
「霧の濃度が高いのか。しかし、浸食が
ここまで進むなんて・・・!」
「世界中の特級危険区域がこんな状態だ。
インドのゲートもな。」
「そういえば・・・どうして最初にインドの
ゲートを閉じたんだ? 日本からインドに
向かうのも簡単じゃないだろう。」
「・・・待て。」
話をしている途中、裏の虎千代は
気配を感じ取る。
「その辺は休憩中に話そう。とりあえず、
向かってくるヤツらを倒すぞ。」
「・・・な、なんだあの数は!」
巨大な魔物の群れが向かってきていた。
「気をつけろ。一体一体がタイコンデロガ級だ。
ひとまずは自分たちの身の安全を確保しておけ。
つかさ! 小手調べだ!」
「ふん。あれだけの魔物で小手調べだと。」
軽くため息をつく。
「2年前に比べて随分と弱ったようだな。」
「・・・いいだろう。どちらが多く倒すか、
勝負するぞ。まさか弱ったアタシに
負けるわけがないよな?」
「今から負けた時の言い訳をするのか?」
二人は魔物の群れの前に立ちはだかる。
「お、おい! アタシも・・・」
「邪魔だ。さがっていろ。」
「なに!?」
「邪魔だと言った。私と虎千代の勝負だ。
部外者などに、くれてやるものか・・・!」
裏のつかさはにやりと笑う。
「悪いな。今回のクエストは、アタシとつかさに
とって特別なんだ。思う存分、戦わせてくれ。」
「あれだけのタイコンデロガだぞ! 二人で
戦うなんて・・・」
「・・・待て。」
加勢しようとする虎千代をつかさは止める。
「まずは連中の強さを見てやろう。」
「そんな悠長なことをしていられる状況か!」
「貴様も気になるはずだ。あの二人の強さが
どれだけなのか・・・。半端な強さでは
話にならん。それに・・・ヤツらは自信満々のようだぞ。」
二人は、魔物の群れに突入する。
「はああああ!!」
「ふはははは! もっとだ! もっと私を楽しませろ!」
二人の拳によって、次々と魔物が
吹き飛んでいく。
「おいおい、なんだよあれ。」
「会長と生天目の、あの強さはどうしたことだ!」
ロウと聖奈は目の前の光景に驚きを隠せない。
「・・・あれが、霧に侵された代償。体を
蝕まれる代わりに、驚異的な力を得られるの。」
「それは知っている! だが、二人の強さは
ただ事ではないぞ!」
「私と一緒にするな。もともとの素養が段違いだ。
体内の霧が濃いほど、力は飛躍的に上がる。
だがその代償として・・・味わうのは、地獄の
苦しみだ。」
「その割には元気そうだがな。」
「あの人の精神力で耐えているんだ。本来なら
立っていられないはずだ。」
その間にも、魔物は次々と霧散していく。
「・・・会長はわかった。だが生天目はなぜ、
同じくらい強いんだ?」
「・・・生天目さんが武田さんと同等の
強さを持つなら・・・理由は1つでしょう。」
「・・・・・・。」
つかさは二人の戦闘をじっと見ている。
「霧に侵されている。虎千代だけでない。
こちらの私も、霧に体を侵されている。」
その事実に気づくと、にやりと笑う。
「そうか、強くなるにはあのような方法も
あるわけだな。・・・だが、なぜだ。
魔物との戦いか? それとも・・・わざとか?」
「つかさ! アタシたちも加勢するぞ!
裏のアタシをこれ以上戦わせてはだめだ!」
「・・・貴様は、自分が同じ立場だったとしたら
それを許すか?」
「今回の目的はゲートを閉じることだ! 戦いの
欲求を満たすことじゃない!」
「これで終わりだとわかっていてもか? 強さを
喜びとし、鍛錬に明け暮れ、死を前にし・・・
命を燃やし尽くすことのできる機会を
得たというのに、譲ることができるのか?」
虎千代は拳を握りしめる。
「・・・まだ、死なせはしない! 表に
連れて帰れば、延命は可能だ!」
「やれやれ。自分だからなのか、他人だから
なのか知らんが・・・貴様もおせっかいな
ものだ。連中の気持ちは十分に理解できて
いるだろうに。」
ため息をつきながらも、つかさは
にやりと笑う。
「・・・だがな、実は私も同じ考えだ。」
「なら・・・。」
「ああ、魔物を横取りしてやろう。
タイコンデロガ級の魔物がうじゃうじゃいる。
表の大垣峰より危険な地だ。我慢できると思うか?」
「・・・ふっ。お前はいつもそれだな。理由は
何でもいい。あの二人の負担を軽減できる
なら・・・やるぞ。アタシたちの力を見せてやる。」
「・・・がっ!」
裏の虎千代の動きが急に止まる。
「グ・・・ウ・・・グゥ・・・ま、
まだだ・・・まだ・・・」
その横を魔法による攻撃が
通っていく。
「今の魔法は・・・アタシの・・・。」
「武田虎千代! お前が思う存分戦いたいのは
理解した! 同じ虎千代として、その気持ちを
尊重してやりたいが・・・進攻に支障が
出ると判断した! 魔物数体、こちらで受ける!」
二人の虎千代が並び立つ。
「馬鹿な! それだけの理由で下がらせると
思ったのか! 霧の力は自分でも制御が難しい。
前線にいればいつ暴走するかわからん!
お前たちを巻き添えにしないよう、下がらせたんだ!」
「ではつかさとの共闘を望んだのはなぜだ。
一人では辛いと思ったんだろう。」
「つかさはアタシの力が暴走しても対処
できる! お前たちと力の差が歴然だ!
戦いにおいて信頼できるのはつかさだけだ!」
「・・・なら見ていろ。アタシたちも、修羅場を
潜り抜けてきた。力はある。ここで戦うだけの
力を持っていることをわからせる! つかさ!
この二人より多く、魔物を倒すぞ!」
「・・・だそうだ。悪いが横から取るぞ。」
「余計なことを・・・。」
裏のつかさの顔が険しくなる。
「それが嫌なら、力ずくで止めるんだな。所詮
私も虎千代も、闘争に飢えているという点では
同じだ。いくらでも相手してやるぞ。魔物より
貴様らのほうが楽しそうだ。」
「ククク・・・その様子だと、どうやら私が
ここにいる意味をわかっているようだな。
本命に入る前にケチがついては、後悔したまま
死にゆくことになるか。」
そう言うと、手をポキポキと鳴らす。
「だが条件がある。誤って私の攻撃が当たって
死んでも、文句を言うなよ。」
「貴様こそ注意しておけ。貴様の若かったころと
私を同等と考えているなら・・・誤って
私の攻撃が当たった時、死ぬぞ。」