グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第270話 ワガママ

「ロウ! うちの会長たちが戦っているのは

 どういうことだ!?」

 

予定外の事態に聖奈は慌てる。

 

「知るかよ。ま、あいつらにも

 思うところがあるんだろ。」

 

「くそっ。あんなに全力で戦っては、

 ゲートまでたどり着くのも・・・。」

 

「なんなの、あの二人。」

 

「・・・第7次侵攻の後、いろいろあった。

 その中で、生天目は我妻梅に師事し、会長は

 強くなった生天目を相手に鍛えた。」

 

「我妻・・・。」

 

「そういえば、こっちの始祖十家は

 敵なんだっけか。」

 

「敵・・・その言い方は合っていない。」

 

裏のさらは強くこぶしを握り締める。

 

「私たちにもよくわからなかったの。ただ、

 私たちには敵が必要だった。だから味方に

 ならなかった人たちに怒りをぶつけなければ

 ならなかった。」

 

「・・・・。」

 

「そして、一人の始祖十家が霧の護り手に

 与した。今も彼は、宇宙ステーションにいるはずよ。」

 

「彼?」

 

「ドイツの始祖十家。アルベルト・イェーリング。」

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

「・・・随分、時間が経ったな。しかし、

 ここじゃ昼か夜かもわからねえな。」

 

ロウはデバイスで時刻を確認する。

空模様は探索開始時と何も変わらない。

 

「4人に知らせよう。何時間も戦い通しだ。

 さすがに休まなければ、体がもたない。」

 

「私が行ってくるわ。あなたは休んでて。」

 

「・・・それに、聞きたい話もある。」

 

「水瀬のことか。心配するな。

 彼女は死んでいない。」

 

裏の聖奈は穏やかな笑みを見せる。

 

「なら、なぜここにいない? とても不自然な

 ことじゃないか?」

 

「・・・常に側にいるのが献身じゃない。

 水瀬はあの人のために、命を捨てた。

 アンゴラのゲートを閉じに行ったのだ。」

 

「・・・な、なんだと・・・!? 一人でか!?

 アンゴラはアフリカ大陸じゃないか!」

 

「ロカと合流している。ゲートまで

 たどり着ける可能性は高い。」

 

「・・・止めはした。」

 

戦っていた裏の虎千代が

ロウたちのもとにやってくる。

 

「薫子は、アタシと離れることを自分で決めた。

 10年も付き添い、世話をしてくれた。

 最後は自由にさせてやりたかった。それが、

 命を捨てることであってもな。」

 

「・・・そんな決意をしなければならないほど

 なのか・・・。こちらの世界はそれほどまでに・・・!」

 

「霧の魔物に負けるとはそういうことだ。お前たちは

 負けるな。そのために、ゲートを封印するところを

 見せるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ・・・。」

 

疲れからかつかさはその場に座る。

 

「どうした、もう力尽きたか。」

 

「・・・それも、霧の影響か。」

 

「普通は違う。霧の汚染が進行した場合、

 苦痛でまず体を動かすことができん。私も

 虎千代も、我慢しているにすぎん。その痛みに

 比べれば、疲れや傷などなんでもない。それだけの話だ。」

 

「・・・ククク。霧で力を得る代償は大きいか・・・。」

 

つかさはにやりと笑う。

 

「絶対に真似しようとするな。貴様は当時の私より

 強い。そのまま鍛錬を重ねろ。霧を体内に

 入れたら、絶対に後悔するぞ。」

 

「・・・他人の指図は受けん。が・・・貴様は

 他人ではない。考えておこう。・・・そろそろ

 話せ。」

 

「何をだ。」

 

「ここに来た真の目的だ。出発前から

 はぐらかしているが・・・貴様は、

 虎千代を殺しに来たんだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なぜ、今日だったんだ。会計・・・

 聖奈からはそう聞いたと言っていた。

 今日でなければだめだと。」

 

「全てアタシの都合さ。今回はつかさに同行

 してほしかった。それに、今より遅れると・・・

 アタシがもたん。見ろ。」

 

髪を軽く上げると、紫色に変色し、

腕も紫色になっていた。

 

「・・・!」

 

「気を抜くとすぐに暴れだそうとする。発作も

 ある。代わりに、この魔物になりかけている

 状態はな、強いんだ。アタシはその力を

 うまく使っているんだ。」

 

「・・・大人のつかさも、体に霧が

 入っている。同行を頼んだのは、魔物に

 なる前に殺してもらうためか?」

 

「・・・殺してもらう? フフフ・・・・

 ハハハ!」

 

虎千代の言葉に裏の虎千代は

大きな笑い声をあげる。

 

「そんな理由で呼んだと思ってるのか!

 見当違いだな!」

 

「・・・なに?」

 

「アタシは学園生時代、生徒会長という

 立場だった。その立場上、学園の強者と

 なかなか戦う機会がないのはお前も同じだな?」

 

「あ、ああ・・・。第7次侵攻前の・・・

 ロウが来る前の学園は・・・今よりも

 ずっと、各組織の対立が強かったからな。」

 

以前の学園の様子を頭に浮かべる。

 

「生徒会は学園にとって最後の手段だから、

 なかなかクエストにも行けなかった。そして

 たまに行ったクエストで、アタシは霧の

 侵入を許してしまった。」

 

悔しそうに歯を食いしばる。

 

「それから十年・・・ただ苦しい中、それでも

 生きてきたんだ。薫子や聖奈、そして

 つかさがな。霧が体に入ったアタシは、

 ヤツにとって垂涎の相手だ。」

 

少し離れたところにいる

裏のつかさを見る。

 

「そしてヤツは、アタシが全力で戦える

 数少ない相手だ。どうせ死ぬなら、つかさと

 本気で戦いたかった。アタシもつかさと

 同じ、バトルジャンキーだったということだ。」

 

「・・・本気の戦いとは、試合のことじゃないな。」

 

「ああ。結果的には、さっきお前が言ったように

 なるかもしれん。つかさがアタシを殺すかも

 しれんし、アタシがつかさを殺すかもしれん。

 どちらにせよ・・・死ぬまでやりあう。

 それがアタシの、最期のワガママだ。」

 

 

 

 

 

<移動中>

 

 

 

 

しばらく進むと、

黒色のゲートが確認できた。

 

「・・・ゲートが見えたな・・・。」

 

「ふん。この場所はともかく、ゲート事態は

 普通だな。これをどうやって閉じるのか・・・

 見せてもらおうか。」

 

「・・・つかさ。ゲートを閉じた後、大人の

 アタシたちが何をするのか知っているか?」

 

「知っている・・・が、なぜ私にそれを聞く。

 まさか、止めるつもりか?」

 

「いや・・・違う。なあ、つかさ。表に

 帰ったら、一度対抗戦でも組むか。」

 

虎千代は穏やかな笑みを浮かべる。

 

「いきなり何の話だ。」

 

「いや・・・お前とはいつでも戦えると

 思っていたんだが・・・どうやら、その考えで

 いると、後悔しそうだからな。」

 

「・・・何を考えているのか知らんが・・・

 ようやく、わかったか。」

 

虎千代の言葉に、つかさは

嬉しそうににやりと笑った。

 

「・・・ふぅ・・・。」

 

大人の虎千代はゲートに近づく。

 

「とりあえずここまでくれば・・・ほとんど

 成功したようなものだ。聖奈、準備を始める。

 手順を間違えないようにな。」

 

「はっ。お任せください。」

 

「・・・その目で大丈夫か?」

 

「それは今更でしょう。人口視覚で、しっかり

 見えています。準備が整うまで休んでください。」

 

「・・・ああ。手間をかけさせるな。」

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