グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「仲月、そしてあちらの学園生諸君。
聞いてくれ。」
裏の虎千代は学園生たちに
向き合う。
「聖奈が準備をしている間、ゲートの
閉じ方を説明する。」
「・・・・・。」
「説明、といっても、おかしいことは何もない。
魔法を使って封印するんだ。今、聖奈が
行っているのは魔法陣の作成。これで
魔法を補助する。」
巨大な魔法陣が描かれている。
「そして、ゲートから噴き出す全ての霧を
アタシが吸収する。」
「・・・!? なんだと!?」
信じられないような方法が語られ、
虎千代は困惑する。
「アンドリュー・ロカが調べた結果だ。
噴き出す霧には上限がある。つまり、
ゲートの霧を絞りつくしてしまえば・・・
ゲートは消える。」
「ま、待て! そんな簡単に・・・」
「そうだ。そんな簡単な話ではない。
知っての通り、ゲートからは物凄い量の
霧が吹きだしているが・・・大垣峰の
ゲートは、何十年も存在している。
それだけ、霧の量が多いということだ。」
「・・・それを、全て吸収すると・・・?」
「百聞は一見に如かず、だったか・・・。
見ていろ。『霧を体内に吸収する魔法』だ。」
裏の虎千代はゲートに向かって
手をかざす。
「・・・できたな?」
「はい。・・・虎千代・・・いえ、会長。
水無月会長を喪った私たちに道を
示してくれて、感謝しています。
・・・私たちでは、水無月会長を支えるには、
力不足でした・・・。」
「・・・まさか、第8次侵攻が来るとは誰も
思わなかった。あれは仕方のないことだ。
世界中の誰にも、お前たちを非難すること
などできないさ。アタシのいなくなった後は、
あちらの学園生に協力してくれ。」
「・・・はい。」
涙をこらえながら頷く。
「・・・さらばだ、結城聖奈会計。」
「これまで、ありがとうございました。
・・・失礼します。」
裏の虎千代から離れる。
「・・・では、始めるか・・・!」
魔法を発動すると、霧がどんどん
裏の虎千代に吸収されていく。
「ぐぅ・・・! ガァ・・・アァ・・・!!」
裏の虎千代の体が少しずつ
魔物の体に変化しようとしている。
「会長・・・。」
「・・・まずいな・・・。」
ロウは何かを予感し、少し前に出る。
「む・・・ロウ。それ以上は近づくな。」
「だが・・・あのままならおそらく・・・
失敗するぞ。どう見てもキャパを超えてるって
顔になってるぞ。」
「・・・虎千代め・・・。」
裏のつかさは裏の虎千代に近づく。
「もう余裕がないのなら、先に言えばいいものを。」
「・・・失敗・・・? グゥ・・・
流れ込んでくる・・・。」
体がぐらつき始める。
「霧がアタシを侵してくる・・・恐ろしいぞ。
だが・・・もう引き返せん・・・。この魔法は
途中では止められん。ゲートには、消えてもらう・・・!」
さらに霧を吸収していく。
「そして、人類の脅威からコノ身を守ル
タメ・・・僅カナトキヲ、安息ノトキヲ、
イクマデノトキヲ・・・!」
「・・・・・。」
「ナゼクルシミヲ・・・ギセイヲ・・・ソコマデ
キラウ・・・ノカ・・・タダ・・・イキタイ
・・・だけだというのに!」
「虎千代!」
霧に飲まれかけていた意識をなんとか
取り戻す。
「! あ、アタシは・・・なにを・・・。」
「意識の錯乱が起きていた。貴様にこれ以上
霧は吸わせん。私の体にはまだ空きがある。
引き受けよう。」
「・・・つかさ・・・フフ・・・。悪いな。
手伝ってもらって。」
「闘争を始める前に、貴様に死んでもらっては
困る。・・・手を乗せればいいな?」
「ああ。来い、つかさ。」
言われた通りに、裏のつかさは
手を乗せる。
「お前となら、どんな敵でも恐ろしくないぞ。」
このまま二人は数時間、
ゲートから放出される霧をずっと
吸収し続けた。
数時間後
「・・・グッ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
「・・・・・。」
大量の霧を吸い込み、疲労から
裏の虎千代は倒れこむ。
「虎千代。もう時間がない。すぐに始めるぞ。」
座り込んだ裏のつかさはすぐに立ち上がる。
「・・・イイ・・・だろウ・・・。確カニ、
アタシには時間がナイようだな。」
裏の虎千代は何とか立ち上がる。
二人は先ほどから一転、殺気をたて、
互いを睨む。
「・・・何時間吸い続けたんだ・・・?
あんな量の霧を体に取り込んだらもう・・・。」
「会長!」
「か、薫子!?」
後ろからついてきていた薫子が
虎千代に駆け寄る。
「追いついていたのか!」
「あれは・・・ああ、あれは・・・あの姿は・・・!」
「・・・! 見届けるぞ、薫子。アタシたちが
絶対にたどり着いてはならない・・・未来だ・・・!」
「・・・つかさ・・・最後の相手がお前で、
ヨカッタ・・・!」
「ふん! ずっと私との戦いを避けておきながら
それか!」
二人は容赦ない攻撃を次々と繰り出す。
「だが、ああ、そうだな! 最後の相手が貴様で
・・・うれしいぞ! 来い虎千代! 私を
殺すために来い! 心臓を抉るために腕を振れ!」
「最後の一振りまで油断するナヨ、つかさ・・・!」
(至福の時だ。地獄の中で、最後の最後に
至福を得た。友よ・・・・・感謝する。)
「・・・・・・。」
戦いを終えた裏のつかさは空を見上げていた。
「去れ。ここにはもう、誰も必要ない。」
「・・・・・・・アタシは・・・・
見届けたぞ・・・!」
「私が魔物になる前に、去れ。」
「私が殺してやってもいいぞ。」
「ククク・・・それも一興だが、あいにく、
もう貴様程度の力では死ねん体だ。
自分の力でなければな。」
「・・・そうか。」
「・・・私は幸せだ。闘いに生き、もっとも楽しい
相手との死闘で、命を閉じることができる。」
先ほどの戦いを思い出し、笑みを浮かべる。
「貴様も、後悔するな。」
「ああ・・・わかった。」
つかさは裏のつかさに背を向ける。
「さらばだ。」
ロウたち学園生は、大垣峰から
表世界に帰っていった。
「・・・・・。」
裏のつかさは仰向けに倒れこむ。
「・・・虎千代・・・まだ、逃がさんぞ・・・。
あの世でもう一戦だ・・・。」
<ロウたち、移動中>
表世界
学園
帰ってきたロウたちをチトセが
迎える。
「・・・あ、ロウ君。おかえりなさい。」
「ん、ああ・・・。」
「・・・・・?」
全員が暗い表情のまま、
帰ってきた。
「・・・・・みんな。おかえりなさい。」