グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
第272話 袂
学園
学園長室
「あれ? 風子ちゃんだ。学園長室に来る
なんて、めずらしいねー。」
「えーまー、普段はあまり用がありませんしねー。」
「え、それって・・・・じゃあじゃあ、今日は
ネネに用があるってこと!?」
寧々は目をキラキラさせる。
「さいです。きっと学園長も考えてたことだと
思うんですけどねー。」
「えー、なんだろなんだろー。楽しいことかなー。」
「武田虎千代の卒業に関してです。」
「・・・・・そつぎょう?」
初めて聞いたかのような反応をする。
「はい。学園長がどこまでご存知か知りませんが。
今年の時点で時間停止の魔法に無理がきている
・・・とゆーのが、朱鷺坂チトセと東雲アイラの
見解でしてね。今年は年度が進む可能性が
あるんですよ。そしたら、武田虎千代は卒業しちゃうんですよね。」
「・・・・えー!」
「彼女だけじゃありません。学園にとって重要な
戦力がごっそり・・・嫌でしょ?」
「いや!」
首をぶんぶんと振る。
「じゃあ、今から対策立てておきませんとね。
ちっと耳貸してくだせー。」
風子は寧々の耳に顔を近づける。
「・・・ふんふん・・・ふんふん・・・。
・・・・・それって・・・できるの?」
風子の言葉を聞いた寧々は
首をかしげる。
「学園長ならできます。っていうか、学園長にしか
できねーでしょ。年度が替わった場合、
第8次侵攻の可能性も高まります。」
「うん! わかった! じゃあネネに任せといて!
理事長にお話ししてくる!」
「よろしくおねげーしますよ。」
寧々は学園長室を飛び出していった。
「・・・ウチは学園を守るために、やれること
全部やりますよ。」
校門前
「あ、あ、あの・・・今日はよろしく
お願いしましゅ!」
萌木は緊張気味に頭を下げる。
「ああ、よろしくな。しかし、お前から
クエストの誘いが来るとは思わなかった。」
「わたし、少し思うところがありまして・・・
クエストを請けてみようって思って・・・。」
「思うところ?」
「・・・えっと・・・霧の護り手との戦いが、
始まるかもしれないじゃないですか・・・
共生派との戦いが・・・。」
「向こうの出方次第だけどな。」
事実、霧の護り手の動きはここしばらく
静かだった。
「もちろん、魔物や間ヶ岾は倒さないと
いけませんが・・・ちひろちゃん、ずっと
悩んでて・・・。なにか簡単にでも、
手がかりが欲しいんです。」
「手がかりね・・・。」
「あ、ロウさんはいつも通りで大丈夫ですよ!
あくまで、わたしがそれを目標にしている、
ということなので。」
「言われなくてもそのつもりだったがな。
なら・・・行くか。」
「は、はい!」
<ロウ、萌木、移動中>
「今日の魔物・・・そこまで強くない
はずですが・・・。」
「その辺は油断してねえよ。それ、来たぞ。
『ROOM』。」
数体の魔物が二人の前に立ちふさがる。
「い、いきましゅ・・・!」
萌木が魔法を唱えると、トランプの
カードに手足が生え、武器を持ち、
魔物に攻撃していく。
「『シャンブルズ』!」
魔物の背後に移動させ、
トランプの兵隊が魔物を倒した。
「ど、どうでした? 今、召喚魔法で
呼び出したのは、トランプの兵隊さんで・・・。」
「ああ、不思議の国のアリスに出てくるやつか。」
「は、はい! 召喚魔法は適性のある人が
いなくて・・・人命救助の役に立つんですが、
なので、レスキューには重宝されてて・・・。」
「なるほど・・・。」
ピピピピ!
「・・・ん?」
ロウのデバイスが鳴る。
「なんでしょう?」
「・・・・。」
『近いうちに、また・・・』
「・・・・?」
短い文章のメールだった。
「・・・ただの迷惑メールだ。とっとと
クエスト終わらせるぞ。」
「は、はい・・・!」
<ロウ、萌木、移動中>
「あの・・・ろ、ロウさんって、将来
どうしたいとかって、考えたことありますか?」
「将来ね・・・。」
頭の中に浮かんだ考えを
瞬時に振り払う。
「・・・ロウさん?」
「・・・いや、まだ決まってねえな。
てか、なんでんなこと聞いたんだ?」
「最近、いろいろ将来に悩んじゃって・・・
そしたら、妙に焦っちゃって・・・。」
「そうか・・・まあ、その時周りが
どうなってるかわからないからな。
俺は、その時考える。」
「そ、そうなんですか・・・。
・・・・あ、魔物、来ます!」
「『ROOM』!」
青色のドームを張る。
「えい!」
槍を持ったトランプ兵が現れる。
「『タクト』。」
魔物のトランプ兵への攻撃を
魔物の同士討ちにさせる。
その隙に、トランプ兵が攻撃し、
魔物が霧散していく。
「お疲れ様です。これで、クエスト完了ですね。」
「結構早く終わったな。」
「・・・やっぱり、ロウさんと戦うのが
一番なんでしょうか・・・。」
「なんか言ったか?」
「いい、いえ! な、なんでもないです!
か、帰って、報告しましょう!」
???
「・・・・・。」
光男は間ヶ岾と対峙していた。
「もう、ライフストリームは霧の護り手を
離れた。」
「ではなぜここに来た。やることが山積みなんだがね。
あまり長く相手をしていられるわけではない。」
「僕は自首する。」
「好きにしたまえ。ただし霧の護り手は
犯罪などしていないだろう?」
ため息をつきながら、光男に
背を向ける。
「どういう罪で自首するというのだね。」
「霧の護り手がしたことを、正直に話す。
ここで僕たちの正史は終わりだ。今回の騒動で
多くの人に共生思想というものが芽生えた。
これまでのように、消えていくだけじゃない、
確かな強さを感じた。」
背を向ける間ヶ岾を強く睨む。
「僕の罪はあなたを止められなかったことだ。
その方法も思いつかなかった。」
「なるほど・・・確かに無能は罪だな。」
「その罪を償った後は、少しはマシに
なっていると思う。・・・あなたも来てくれ。
証拠がなければ罪はないという者は、
罰を受けずとも、人は離れる。」
「もはや君とは袂を分かったのだ。これ以上
一緒にいることは害悪でしかない。君が
この場所を殲滅派に提供しないとも
限らん。さっさと行きたまえ。」
出口を指さす。
「・・・繰り返すが、あなたは共生派に
必要な人材なんだ。悪行を数えたら
きりがない。だけどこの数か月のあなたは・・・
未来を、見せてくれたんだ。」
「君が勝手に見た未来に、私を巻き込まないで
くれたまえ。私の理想は真の共生だ。
生ぬるい仲良しこよしとは違う。
立ち去りたまえ。」
「・・・さようなら、間ヶ岾。できれば
また生きて会いたい。その時は、僕の
活動に協力してくれ。暴力は許さないが、
あなたの力はいつでも必要だ。」
そう言い残し、光男は部屋を出ていった。