グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
疲労から風子は座り込んだ。
「委員長! 大丈夫ですか!?」
怜が駆け寄る。
「えーまー・・・魔力を使いすぎただけです。
さすがにムサシは止められませんね・・・。
しかし・・・氷川・・・」
「・・・委員長・・・すみません・・・。」
紗妃は暗い顔をして、目を伏せる。
「いーえ・・・あそこまで成長して
しまったら、仕方ありません・・・。成り行き
ですが、ウチらはムサシを相手にしたことに
なります・・・しんど・・・。」
風子の息が荒くなる。
「氷川・・・ムサシの前に飛び出したのは
勇気がありましたね。とりあえず・・・
生徒会に聞きたいことが山ほどありますが・・・」
疲れから座る虎千代をちらっと見る。
「学園の復興は生徒会が指揮を執ります。
まだ忙しいですよ。あー・・・もうダメです・・・。」
一気に地面に倒れこんだ。
「い、委員長!」
結希の研究室
「・・・宇宙・・・。」
「・・・行くの?」
「絶対罠だぞ。アイツが親切心で教えてくれる
わけない。」
間ヶ岾の言葉を否定するように
望は激しく首を横に振る。
「それでも、行かなければならないわ。
すぐに交渉に行きましょう。双美心が
破壊しようとし、間ヶ岾が示唆した・・・NASAへ。」
「・・・・・。」
ロウは先ほど自分が倒した
魔物がいたところまで戻っていた。
「骸、か・・・・。」
倒した魔物が倒れていた場所には
黒ずんだ遺体が横たわっていた。
「なんで、お前がここにいる・・・
・・・・俊・・・。」
その遺体は、以前ライ魔法師団に所属し
ロウを殺そうとした、俊だった。
「間ヶ岾にいいように利用されたのか・・・
それとも・・・・・天羽、大地・・・!」
数週間後
生徒会室
「・・・来たか。」
虎千代の前には風子、エレン、メアリーが
集まっていた。
「さあ、聞かせてもらおうか。間ヶ岾の
言葉について。」
「いっときますけど、テキトーな返事は
おすすめしませんよ。」
「わかっている・・・今のところ、
本当に限られたメンバーしか知らないことだ。」
虎千代は少しため息をつき
ゆっくりと口を開いた。
「裏世界の第8次侵攻で現れたムサシは・・・
・・・・・・・・ロウが、変化したものだ・・・。」
「・・・・いつから知ってた。マーヤー
デーヴィーの一件だな?」
「そうだ。デーヴィーがロウの命を
狙った理由がそれだ。」
「半年以上も前じゃねえか・・・クソが!」
苛立ちから地面を強く蹴る。
「言いたいことは山ほどあるが、まずは
隠していた理由を聞きたい。理由に
よっては、納得できるかもしれん。」
「理由によっては撃つかもしれねえがな。」
「・・・単純に、お前たちの役割による。」
三人から一瞬だけ目を逸らす。
「精鋭部隊は学園の先頭に立ち、真っ先に魔物と
戦う。風紀委員は学園内に危険があれば、
それを排除する・・・。その役割は私情に
勝る。ロウのことを知ったら・・・なんらかの
判断をしなければならない。デーヴィーのように・・・。」
「・・・・・。」
「・・・テメェ・・・!」
壁をガンと叩き、虎千代を睨みつける。
「ふぅ・・・いや、見くびられたもんですね。
お望み通りに判断しましょーか。
風紀委員として・・・学園内にムサシが
いるのは容認できませんね。」
「ロウは学園生だ。生徒会長として、アタシは
ヤツを守る。」
「・・・なるほど。」
エレンは軽くため息をつく。
「少なくともロウの件で、生徒会と風紀委員は
対立する。私たちも執行部からクエストが
発令されればそれに従う。だからあえて
知らせなかったということだな。」
「・・・何を言うかと思ったら・・・
一番情けねえ理由だな。・・・チッ
白けちまった。帰る。」
そう言って、メアリーは生徒会室を
出て行った。
「・・・幻滅されたかな。」
「軍隊ではよくあることだ。だがグリモアは
完全な軍隊ではない。全ての情報が共有
されると、いつの間にか信じていた
私達の甘さもある。だが・・・」
「・・・・・。」
「水無月も先ほどの『判断』を本心から
言ったわけではないだろう。お前の
危惧するようなことは、起こらなかった。」
「今、学園は静かです。もう間ヶ岾の宣言から
半月は経ってますが・・・『相田ロウを
どうする』といった声は、不思議なほど
聞こえてきません。」
「・・・そうか・・・。」
虎千代は天井を見上げ、ほっと
胸をなでおろす。
「ただ、誰もが何かしらの答えを待っているのは
確かでしょ。心情的には皆さん、彼の
味方をしたい。」
窓の外の学園生の姿が風子の
目に映る。
「ですがこの学園にとって、ムサシは
特別な魔物であるのも事実。全員が表に
出さないだけで、混乱しているし、迷って
いるんです。このままだと、ストレスで
爆発しちゃいますよ。」
「ロウは学園生だ。それは何があっても
変わらない。アタシはデーヴィーの時、
立場に縛られてロウを助けられなかった。
あの時とような後悔は、もうしたくない!」
「・・・・・。」
目を閉じて聞いていたエレンは
ゆっくりと目を開ける。
「よし。では学園はこれから・・・ロウを
全面的にバックアップする。その判断で
間違いないな。」
「少なくとも生徒会はそうだ。そして
お前たちにも協力を要請する。アタシたちには
ロウが必要だ。」
「先日、執行部から精鋭部隊に切れ端の
調査クエストが発令された。足並みを
そろえるなら、共有しておく。」
「・・・そうか。頼んだ。」
「・・・ま、彼がいなくなったら、
ぼーどーが起きちゃいそーですしね。」
風子の中では以前、ロウが
いなくなったときのことを思い出す。
「なんとかなるでしょ。きっと。」
「現在、ロウのムサシ化を防ぐために、
歓談部が動いてくれている。事情は
話していないが、ネテスハイムや伊賀忍者にも
協力してもらっている。使えるコネは全部
使うつもりだ。全生徒が知った今・・・
アタシは、何も隠してはならないんだろうな。」