グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第286話 怪文書と変わる魔物

学園

 

「・・・ちっ。」

 

ロウはデバイスでジェイス・カルマンの

怪文書に目を通していた。

 

「おはようございます、ロウさん。」

 

「・・・ああ。おはよう。」

 

紗妃がやってきたため、デバイスをしまう。

 

「何か見てたんですか?」

 

「大したもんじゃねえよ。今日はお前と

 クエストだったな。・・・それと、虎千代から

 話があったはずだが・・・」

 

「・・・ええ、聞いています。私も

 賛成です。というより、会長が排斥すると

 言ったなら反対するつもりでした。」

 

「・・・・・。」

 

ロウは驚いた様子で紗妃を見る。

 

「な、なんですか?」

 

「お前がそんなこと言うと思わなくてな・・・。」

 

「と、当然です。正しい魔法使いであるために

 仲間を・・・ロウさんを、見捨てることなど

 してはいけませんから。」

 

「・・・そうか。そうか・・・。」

 

穏やかな笑みを浮かべた。

 

「とはいえ、魔物との戦いがまだ続くのも

 事実です! 簡単なクエストで緊張感を

 保ちましょう。」

 

「ま、そうさせてもらうか。行くぞ。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

学園

 

歓談部部室

 

「ジェイス・カルマンは真実を知る者!

 我と同じだ!」

 

「あまり大きな声で言うでない。ヨタ話を

 本当のことのように書いとるんじゃろ?」

 

テンションの高いミナを恋が窘める。

 

「しかもテロリストのノーマルマンズと

 繋がりがあるという・・・。」

 

「霧の魔物は某国が作り出した陰謀なのだ!」

 

「と、ヨタ話を信じるもの好きもいる。

 迷惑な輩じゃ。」

 

深いため息をつく。

 

「ですが、ぶちょーの話を聞く限りでは、

 始祖十家も宍戸先輩も・・・その

 ジェイス・カルマンの文書を大慌てで

 確認したらしいッスね。」

 

「今も確認中よ。」

 

「その秘密文書、我も見る!」

 

「ネット上にあるものは、情報拡散を

 防ぐため全て削除したという話よ。

 そうよね、双美さん。」

 

「ひゃいぃ! ですがわたしなんかの技術では

 きっともう・・・・・・そもそも、

 ネット上にあげられたデータを完全に

 削除することは不可能です。」

 

そう言うと、心はポケットから

USBメモリを取り出した。

 

「これにもその文書が入っています。

 念のためコピーしました。」

 

「よくやった、ダブルマインド! 我に

 見せるのだ!」

 

「副部長。これが終わったら、私は

 出かけるわ。」

 

「ん? おお、そうか。・・・どこにじゃ?」

 

 

 

 

 

結希の研究室

 

結希、鳴子はジェイス・カルマンの

文書を改めて確認していた。

 

『霧の切れ端について:ジェイス・カルマン』

 

『・・・魔物とコミュニケーションが可能な

 ものを霧の切れ端という。我が盟友、

 間ヶ岾昭三が生み出した言葉であるが・・・

 彼が魔物を従えていた光景を見れば、それが

 正しいと認めざるをえない。・・・そして、

 霧の切れ端は一人ではない。ここでは名前を

 明かさないが・・・私は、その人物の

 情報を得ている。』

 

文書を見終え、結希はため息をつく。

 

「・・・今のところ、ロウ君の名前は

 出ていない。けれど・・・間ヶ岾が

 言っていたことと同じ内容になっているわ。

 人間が・・・特定の魔法使いが、ムサシに

 変化すると。」

 

「つまり、ただの妄想じゃないってことだ。」

 

「あなたは、この作家についてどの程度の

 知識がある?」

 

「ジェイス・カルマンは覆面作家だ。

 メディアに露出したことはない。偽名を

 使っていて、一説には出版社の共同

 ペンネームだと言われていた。」

 

「・・・こんな文書が出てきたということは、

 その説は外れだったということね。」

 

「そうなる。しかも間ヶ岾のことを盟友と

 呼んでいる。カルマンと繋がりのある

 ノーマルマンズは魔法使い排斥主義だよ?」

 

訳が分からないという感じで笑う鳴子。

 

「ノーマルマンズは霧の魔物を、某大国の

 生物兵器だと主張している。霧が人類の

 進化を促すという共生派とは相容れないんだ。

 共生派の間ヶ岾と仲良しだったなんて、

 予想しろという方が難しいね。」

 

「カルマンが誰かという見当もついていないの?」

 

「さっぱりだよ。件の文書がアップロードされた

 場所もヒントにならない。」

 

「覆面作家でも、一人では本を出すことは

 できない。本当にわからない?」

 

「期待に応えられればいいんだけど、生憎

 力不足でね。時間さえかければわかるかも

 しれないけど、これから調べるんじゃあね・・・。」

 

「霧の護り手について、NASAやいろいろな

 組織の中で不信感が募っているわ。エルベシア・

 マッタが奔走していたのも、始祖十家が

 人々に疑われたから。霧の切れ端に関連した

 事柄を、何かしら隠していること。」

 

眼鏡をくいっと上げる。

 

「ジェイス・カルマンの『魔法使いの誰かが

 ムサシに変化する』という文章・・・」

 

画面のその文章を指でなぞる。

 

「魔法使いの頂点である始祖十家なら、元々

 知っていたんじゃないか。論文を読んだ人が

 そう考えるのは容易に想像できるもの。

 私達はそのタイミングでNASAに訪れた。

 ・・・こちらの要求が通らなくて当然ね。

 魔法使いもまた、疑われている。」

 

「始祖十家も大変だね。身に覚えのないことで

 糾弾されて。」

 

「・・・実際の所、何を考えているのか

 わからないのが始祖十家よ。・・・裏世界では

 いなくなっている理由だってわからないままよ。」

 

 

 

 

 

 

 

地下鉄工事現場

 

「『シャンブルズ』!」

 

魔物の位置を紗妃が魔法を

撃ちやすい場所に移動させる。

 

「ありがとうございます! はぁ!」

 

紗妃の魔法が直撃し、

一部の魔物は霧散した。

しかし、残りは奥へと退散していく。

 

「んんん・・・やはりしぶといです。

 もう並みの魔物なら全部霧散しているはず・・・。」

 

「魔物が強くなってきてるってことか?」

 

「おそらく・・・。しかし、一度クエストを

 請けて魔物と戦闘が始まったなら・・・

 倒して、無事に帰ることを考えなければ。」

 

「・・・なら、善は急げだな。奥に行くぞ。」

 

「はい!」

 

 

 

<ロウ、紗妃、移動中>

 

 

 

進んだ先で魔物の姿を確認する。

ロウは鞘を投げ、刀を抜く。

 

「『ROOM』。『シャンブルズ』!」

 

青色のドームを張り、

魔物の近くの小石と紗妃の位置を

入れ替える。

 

「やぁ!」

 

紗妃の魔法が直撃する。

1体が霧散するが、もう1体が

紗妃を攻撃しようとする。

すると、今度はロウと紗妃の位置が

入れ替わる。

 

「『カウンターショック』!」

 

いきなり電撃を浴びせられた

魔物はよろよろと後ろに下がる。

 

「『シャンブルズ』!」

 

再びロウと紗妃の位置を入れ替える。

 

「はあぁ!」

 

紗妃によるとどめを受け、魔物は霧散した。

 

「・・・今度こそ倒しましたね。霧散を

 確認しました。」

 

「しっかし、随分としぶとかったな。」

 

「ええ。詳細に報告した方がいいと思います。」

 

「やっぱりそうか。」

 

放り投げていた鞘を回収する。

 

「はい。気になりますね。これから魔物の

 撲滅に向けて動き出します。その第一歩で

 ・・・もしくは大事なところで

 躓かないよう・・・あらゆることに注意せねば

 なりませんから。」

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