グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
街
ゲームセンター
「うおりゃあああ!」
凄まじいスピードで純は
ボタンを連打している。
「ふふーん・・・。・・・・・。」
相手を倒し、満足した顔を
していたが、それはすぐに暗くなる。
「はあ・・・。」
「いやー、また腕をあげたっすねー。こりゃ
もうちょっと強キャラ使わないと・・・。」
対戦していた自由が純に声をかける。
なぜか、自由はスーツを着ていた。
「・・・元気ないっすね?」
「・・・・・というか、あんた、なんで
男装してんの?」
「えっ。今更すぎません? 朝から一緒でしたよ?」
「そうだったか・・・なー・・・。
で、なんで男装してんの?」
「正確には男装ではないんですが・・・前に
着たことがありまして・・・。思い返したら
イケてるなと!」
ジャケットをひらひらとさせ、
ネクタイをキュッと締める。
「ふーん・・・。」
「ちょ! ふーんて! ふーんて!」
「・・・あ、なんだっけ?」
「かー! 才能ある! 鳴海氏ボケの
才能あります! いっそ自分と組んで
元モデルの漫才師とゆー斬新な経歴を・・・」
表情の変わらない純を見て、
自由は言葉を止める。
「・・・・・えーと・・・なんか、
悩み事あります?」
「・・・ふぅ。ごめんね、付き合ってもらってるのに
上の空で。」
「いえ、自分は別に・・・ま、ちょっと
心配ですけど。」
「・・・例えばさ。」
「はいはい。」
重かった口をゆっくりと開ける。
「自分が信じてた相手が、ものすっごい
秘密を隠してて・・・それが、知ったら
心臓止まるような秘密でさ。」
「・・・ふむふむ。」
「それを知っちゃったときって、どうすれば
いいのかな?」
「心臓止まりました?」
「止まりかけた。」
「んじゃ、心臓が止まるほどの秘密じゃ
なかったってことですね。」
「・・・えーと・・・。」
あっけらかんと言い切る自由に
呆然とする。
「・・・参ったな・・・。もうちょっと
難しい話なんだけど・・・。」
「どんな秘密なんです?」
「そりゃあ言えないよ。軽々しく喋れる
ようなことじゃないし。」
「じゃあ、もう決まりでしょ。その人のことが
嫌になったなら・・・その秘密、ベラベラ
喋ってますって。」
「・・・・・・そうかな・・・。」
その頃、絢香は街中を
変装してぶらぶらとあてもなく歩いていた。
「・・・最初に会ったのって、いつだったかな・・・。」
純との最初の出会いを頭の中で
思い出す。
「最初に会ったときは、まだ魔法使いじゃ
なかったんだよね、純ちゃん。ふふ・・・
最初はちょっと冷たい印象だったなぁ・・・。
・・・・・・・。」
立ち止まり、ゆっくり上を向く。
「・・・ごめんね・・・・。」
小さな声でつぶやく。
「ずっと黙ってて、ごめんね・・・。」
「誰に謝ってんのさ。」
「ひゃあ!?」
まさか純がいると思わず、
声を掛けられ、驚いて体が飛び上がった。
「一人で謝ってると、不審者にしか見えないよ。」
「・・・あ・・・じゅ、純ちゃん・・・・・。」
絢香は目を合わせられず、そらしてしまう。
「ねえ・・・何考えてるか、聞こえる?」
「あ・・・う・・・うん・・・。」
「そっか。じゃあ、言ってみて。」
「え・・・? で、でも・・・」
「いいから。」
「・・・・・・ラーメン、食べたいって・・・。」
「・・・ぷっ・・・あははは! あたり!」
険しい表情が一気に崩れた。
「行こう、絢香。」
「・・・い、いいの?」
「正直言うと、慣れるまでは大変だと思う。
ドキッとしちゃうかもね。でも、そこは
頑張るよ。だって絢香、今まで頑張って
きたじゃん。あたしさ、よく頭の中で
グチグチ考えてたでしょ。ごめんね。」
「う、ううん! 全然そんなこと・・・」
「そういうのでお互い様ってこと。
その魔法で、いろいろ教えてよ。
例えば・・・白藤の頭の中とか。」
「ええええ!?」
「なんだ、ケンカしてたんすね。珍しい・・・。」
以前の感じを取り戻し、歩いていく
二人を自由は近くで見ていた。
「しかしあれ・・・目立つなー・・・。」
学園
宍戸結希の研究室
ピピピピピ!
「・・・ん?」
机の上のデバイスが鳴り響く。
「これは・・・結希ー! ゆーきー!」
天はデバイスを手に取り、結希を探す。
「結希・・・あ、そっか。いないんだったわ。
デバイス置いたまま・・・ったく。
もしもし、如月天よ。」
『・・・天。懐かしいわね。』
「こっちの結希とは毎日顔を合わせてるけどね。』
電話したのは裏世界の結希だった。
『念のために渡したエナジーシェルが
役に立って、よかったわ。』
「新しいのを作ったら、返しに行くわよ・・・。
そっちの私との思い出の品でしょ。」
『物は使ってこそ意味がある。スペアでも
いいから、あなたが持っていて。天も
そうした方が合理的だと言うでしょう。』
「合理的かどうかじゃないんだけど・・・。
それでどうしたの? 結希は今・・・・・
手が離せないわ。」
『そちらは慌ただしいようね。仲月さんが
追い返されたと言ってたわよ。』
「時間停止の魔法と、ジェイス・カルマンの件よ。」
ため息をつき、髪を掻く。
『ジェイス・カルマン? 懐かしい名前ね。』
「そうよ。影も形もなかったくせに、今更
出てきて世間をかきまわしてるの。」
『今更? でもあなたたち、彼を排除したの
でしょう? そう聞いたわよ。』
「何の話よ。こっちは今もアイツの正体が
わからなくて困ってんのよ。」
ここでふと、天は気づいた。
「・・・博士。もしかして、正体知ってるの?」
『・・・これまで、話題になる機会も
なかったでしょうし・・・仕方ないわね。
ジェイス・カルマンは間ヶ岾昭三よ。』
「・・・・・・はあぁ?」
数分後
「博士。皇さんの情報解析が終わりまし・・・」
「・・・・・・!」
心はイラついた様子を見せる天に
思わず言葉を止める。
「・・・・・ひょえ? あ、あれ、
心さん・・・?」
「・・・あの男・・・死んでまでちょっかい
出してきて・・・切れ端のことを知っていて
当たり前じゃない!」
机をバンと大きくたたく。
「き、切れ端・・・? あ、お、お忙しいところ
すみません~!」
「ん? ああ、いたの・・・。ねえ、
間ヶ岾の声、全部拾ったのよね?」
「は、はい・・・。おそらく、たぶん、きっと
全部だと・・・。」
「間ヶ岾とジェイス・カルマンが同一人物だっていう
情報はあった?」
「・・・・へ?」
思わぬ質問に上ずった声が出る心。
「ひえぇ!? どどど、どうしてそれを?
わたし、凄い秘密を知ったと思って
持ってきたのに・・・もうご存知だった
なんて・・・役立たずですぅ~!」
「いいのよ。私もさっき、偶然知っただけ。
・・・じゃあ、本当なのね。共生派と
魔法使い排斥主義者が同一人物だったなんて・・・。」
イラつきを表すように、机を何度も
コンコンと叩く。
「しかも死んでる人間に振り回される
なんて・・・きぃぃ!」
「死せる孔明、生ける仲達を走らす・・・ですね。」
「馬鹿にしてるの? ・・・って言っても
まんまその故事の通りになってるわね・・・
はぁ・・・。死んだ後に不意打ちでこんな
暴露するなんて・・・どこまで邪魔したがる
のよ、アイツ・・・。」