グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第290話 怪しむ梓

「それで? なんでち・・・間宮は

 ここにいないんだ?」

 

「ああ・・・同じパーティだったんだけど

 途中ではぐれたんだ。そういう時は互いに

 連絡を取ったうえで、一旦本部に戻るように

 なってる。」

 

律は辺りを見回す。

 

「だからあたしたちも、本部に行きながら

 千佳を探す。途中で見つかるかもしれねえしな・・・。」

 

「デバイスで連絡は?」

 

「いや、壊れちまった。戦車に踏まれても

 平気だって話なのに、肝心な時に・・・。」

 

「なら、間宮を探しながら他の連中も

 探すか。合流している可能性もある。

 ・・・・・?」

 

ロウは一瞬、走り去る人影を見る。

 

(気のせいか・・・?)

 

 

 

<ロウ、律、移動中>

 

 

 

「・・・・・。」

 

律は慌てた様子で周りを見る。

 

「何も聞こえねえ・・・なんでだ?」

 

「爆発音や銃声の一つもしないな。」

 

「まさか、もう・・・国軍が、全滅しちまったのか・・・?」

 

その時だった。

 

「!!」

 

ロウは自分の背後にいる気配に

気づいた。瞬時に刀を抜き、その人物が

持っていたクナイとガキンと音を立てて交わった。

 

「随分なことしてくるな・・・服部梓。」

 

「・・・あなた、誰ですか?」

 

ロウを襲ったのは、梓だった。

 

(あっちとは、戦闘服が違うな・・・。

 これも表と裏の違いの一つか。)

 

「こんな時に、偽学園生を見つけるとは

 思いませんでした。」

 

「待て。俺に敵意はない。」

 

「そ、そうなんだ! そいつは・・・」

 

「音無。まさかとは思いますが・・・あなた、

 テロリストと通じてるんです?」

 

「聞く耳くらい持て・・・っての!」

 

「二人とも動かないように。」

 

一度距離を取り、クナイを構えるが・・・

 

「・・・時間が無いので、手短に話してください。」

 

律の様子を見て、クナイを引いた。

 

 

 

 

<律、説明中>

 

 

 

 

「それで、そいつが魔力を回復してくれた

 おかげで、逃げてこれたんだ!」

 

「・・・・・。」

 

律の説明を聞くも、梓は怪しむ目でロウを見る。

 

「あなた、もう一度音無の魔力を回復させる

 ことはできますか?」

 

「ほらよ。」

 

梓の言う通りに、律の魔力を回復させる。

 

「・・・よくわかりませんね。では、自分・・・

 私の魔力を回復させてみてください。」

 

「これでどうだ?」

 

「!? 今のは・・・。」

 

魔力の回復を直に感じ、驚く。

 

「な? だろ? なんでこんなことできるのか

 わからねーけどさ・・・アタシは助かった。

 魔力がないままだと、あそこで死んでたからな。」

 

「・・・・・確かに魔力が回復しています。

 ・・・こんな魔法、聞いたことがない。」

 

すると、ロウを鋭い目で睨み、

クナイを構える。

 

「・・・あなたを、拘束します。」

 

「こ・・・ちょ、ちょっと待てよ!」

 

「やっぱこうなるか。」

 

ロウも刀を構える。

 

「自分が判断を下せることじゃありません。

 会長の前で、洗いざらい話してもらいます。

 あなたのその後は会長に決めてもらいます。」

 

「・・・・・仕方ねえ。ここではそうしといてやる。

 それと・・・デバイスを貸してくれ。」

 

「デバイス? 何に使うんですか?」

 

「そ、そうだ! 服部、あたしのデバイス

 壊れちまったんだよ! 千佳に連絡とって

 くれねーか!? はぐれてたんだ!」

 

「わかりました。ですが時間がありません。

 この辺りに味方はいませんし、魔物が

 自分らを囲みつつあります。」

 

周りの魔物の気配を探る。

 

「・・・じゃあ、国軍はもう・・・。」

 

「魔法学園の戦力も、壊滅状態です。まともに

 戦える状態ではありません。迅速に

 移動を・・・それと」

 

梓は警戒するようにロウをじっと見る。

 

「怪しい動きは控えてくださいね。その時は

 すぐ無力化しますから。余計な手間を

 かけさせないでください。」

 

 

 

 

<ロウ、律、梓、移動中>

 

 

 

 

「なあ、ええと・・・」

 

律が恐る恐るロウに尋ねる。

 

「なんだ?」

 

「アンタ、もう一つの世界から来たって

 言ってたじゃん? ・・・あたしが

 いるんだろ? 千佳も、そこの服部も。」

 

梓は周囲を警戒しながら進んでいる。

 

(しかし、随分と違うもんだな。)

 

「じゃあなんで、こっちにアンタがいないんだ?」

 

「・・・・・・・さあな、わからねえ。」

 

「わかんねーって・・・まあ・・・わかんねーよな・・・。」

 

渋々納得した顔をする。

 

(今ここで言うといろいろとややこしく

 なるな・・・。)

 

「音無。無駄な話をしないようにお願いします。

 彼の正体がまだはっきりしてませんから。

 もし霧の護り手から送り込まれたのなら

 あなたを騙している可能性がある。」

 

「あたしを騙すって・・・で、でもよ。

 服部ならわかるだろ? 風紀委員だった時も

 今もさ、いつの間にかみんなの秘密知ってんだ!」

 

(その辺はあまり変わらねえな・・・・・。

 まあ、目的は違うんだろうが・・・。)

 

表と裏で人物像がかなり違う梓を

ロウは静かに見る。

 

「この男がスパイとかテロリストとか、

 わかってんじゃねーのか?」

 

「わかりません。そもそも調べる時間が

 ありませんし・・・はっきりしているのは

 学園生が出撃した時には、いなかった

 人物である・・・それだけです。」

 

「こいつの制服が違うのも、世界が違うから

 だって、ちょっと納得できるんだ。制服の

 デザインなんて、すぐ手に入るだろ?」

 

「まあ、そうだな。」

 

今までの経験からすぐに答える。

 

「外部のヤツが学園生に変装するなら、

 ちゃんとした物を作るだろ!?」

 

「もう一つの世界、なんて荒唐無稽な

 言い訳を繰り出した男ですよ。何も

 信用できませんね。」

 

「でもさ、魔力が回復したのは事実じゃん!」

 

「自分が彼を殺さないのはその一点に

 おいてです。素性が知れずとも、他人の

 魔力を増やす力がある。」

 

ちらっとロウを見る。

 

「今の自分らにとっては、喉から手が出るほど

 ほしい力・・・と。会長がそう考えるかも

 しれないので、とりあえず連れて行くんです。

 それ以降、彼がどのように扱われるかには関知しません。」

 

「そんな・・・!」

 

「・・・・・・しっ。」

 

何かの気配を感じ、声の大きさを

かなり落とす。

 

「ここで待っててください。」

 

気配を感じた方向へ走り去っていく。

 

「・・・アイツさ、前はもっとユルいヤツ

 だったんだよな。去年転校してきたんだ。

 風紀委員だった。その時は『~ッス』みたいな

 喋り方してたんだ。」

 

「こっちじゃ今でもそんな喋り方なんだがな。」

 

「そうか・・・第7次侵攻が終わって生徒会に

 入ってから、今みたいになった。・・・今

 考えると、こっちの方が本当のアイツだったのかもな。」

 

ドォーン・・・・!

 

「!?」

 

二人の近くで砲撃音が鳴り響く。

 

「な、なんだ今の・・・。」

 

「戦車が近くにいるな。行くぞ。」

 

二人が向かおうとした時だった。

 

「おーっほっほっほ!」

 

「・・・この声は・・・。」

 

「これで道は開けました! さあ、進みましょう!」

 

戦車や兵士を先導する姫の姿があった。

 

「今度は姫か・・・。」

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