グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「今度は姫か・・・。」
「どうやら、向こうから来たようです。」
先に向かっていた梓がロウたちと合流する。
梓がここまでの経緯を説明した。
「なるほど、音無さんと・・・彼がそうなのですね。」
ロウを一瞬怪しそうに見る。
「いいでしょう。私たちも撤退中です。彼を
本部まで護送しましょう。」
「・・・他の部隊は壊滅状態です。よくここまでの
戦力を維持しましたね。」
姫が率いていた兵士たちに驚く梓。
「野薔薇は国軍の長。私もまた、国軍に責任を
負うのです。戦場で兵士と出会ったなら、
完璧に務めを果たしませんと。そういうわけで
四散した国軍の兵士を集めて、即席の部隊を
作りました!」
(この辺はあまり変わってないな・・・。)
「ほかにも、生き残って動けない兵士や市民が
多くいます。彼らを救出し、軍を再建させるのが
私の使命ですから!」
「・・・・そうですか。そりゃよかった。」
「・・・り・・・律・・・?」
「千佳! よかった!」
戦車の影から千佳の姿が見えた。
「千佳、国軍と合流できたんだな!」
「・・・あ・・・・ぅ・・・・・。」
心配する律だが、千佳は元気がなく
律と目を合わせようとしない。
「おい、どうしたんだよ。もしかしてどっか
怪我してんのか?」
「・・・・ちょっと・・・ごめん・・・・・。
疲れてるから・・・休んでていいかな・・・・。」
「あ、ああ。戦車の上に座ってろよ。あたしが
側で守ってやるか・・・・・」
「い、いい! うち、一人で大丈夫だし・・・!」
そう言って、千佳は律から離れていく。
「あ、おい・・・。」
「いったん落ち着かせてやれ。いろいろ
あったんだろ。」
「あ、ああ・・・。」
「・・・間宮千佳、無事だったんですね。」
「ええ。音無さんの方こそ。」
「間宮は一人だったんですか?」
「そうです。間宮さん、会った時はひどく
怯えていました。彼女の話で、こちらも
音無さんを探していたのですが・・・・
連絡しても反応がなく、困っていた
ところでした。・・・ところで・・・」
ロウを見て、声のボリュームを落とす。
「彼は魔法使いですか? グリモアの制服を
着ていますが・・・・・。」
「今わかっているのは、彼が魔力を回復
させることができるということだけ。
それと、あの制服はグリモアのものではありません。」
「・・・・・。」
ロウの制服をじっくりと見る。
「確かに。多少異なりますね。」
「ですがミストファイバー製です。他国の
魔法学園やPMCも検討してみましたが、
合致するものはない・・・。怪しすぎるので
堅実にいくなら首を斬った方がいいんですがね。」
律と話すロウを怪しむ目で見る。
「まぎれを恐れて始末するには、あの力は
魅力的すぎます。」
「それで会長に判断を仰ぐということですか。
でしたら出発の前に、刀子と自由の魔力も
回復してもらいましょう。あの子たちも
かなり消耗しています。許可をいただけますか?」
「この際、仕方ありません。中心街を
横断するには、魔力は必要ですから。」
「ほらよ。」
ロウは刀子、自由の魔力を回復させる。
「・・・・・。」
「・・・うわ、ホントに回復してる。
なにこれ、チートじゃないっすか!」
刀子は怪しむ様子でロウを見て
自由は魔力が回復したことに喜んでいる。
「あんまり騒ぐな。魔物に見つかるだろうが。」
「・・・お主・・・何者だ。その風体で
怪しくないとは言わさんぞ。」
「もー、いいじゃないっすか、そんなこと。
本部に戻ってからで。」
「不審な者が姫殿のお側にいるのは危険だ。
こんな時だからこそ、野薔薇に恨みを
持つ何者かが・・・」
「魔物に囲まれてる中心街に、学園生を
騙ってっすか? いくらなんでもリスク高すぎでしょ。」
そう言って自由はロウを見る。
「・・・っていっても、自分もこの人のこと、
信じたわけじゃないっすけど。刀子先輩が
何かするのは怪しい動きしてからでいいでしょ。」
ドォーン・・・・・!
「!」
「ほぁ!?」
攻撃音が鳴り響く。
「ええい、またか! 行くぞ、自由!」
「ま、魔物が現れたぞー!」
「まだ先は長いっていうのに・・・。」
国軍兵士たちがいまだ減らない魔物に
恐怖する。
「皆さん! まだ諦観するような事態では
ありませんよ!」
そんな兵士たちを姫は必死に鼓舞する。
「私が先導します。あと少し、頑張って
くださいね。・・・あなたもです。」
「わかっている。」
「その力・・・全員が生き残るために
貸していただきますよ。」
<ロウたち、移動中>
「魔力をいただけますか!?」
「ああ。」
要望通り、姫の魔力を回復させる。
「恐れ入ります! では・・・我々がまだ
屈していないと思い知らせてやりましょう!」
「・・・んー。千佳のヤツ・・・どうしたんだ。」
戦闘に参加しながらも、律は
千佳のことを気にかけていた。
「ぼーっとしてると、やられるぞ。」
「あ、ああ・・・サンキュ。・・・なあ。」
「なんだ?」
「なんか千佳に避けられてる気がすんだよ。」
「避けられてる?」
「ああ。・・・なんか、会ったばっかのアンタに
頼むのも変だけどさ・・・余裕があったらで
いいから、聞いといてもらえねえ?」
「問題ねえよ。そういう頼まれごとは
慣れてる。確か、戦車の近くか・・・。
『ROOM』。『シャンブルズ』。」
ロウがいた場所に小石が数個落ち、
ロウの姿が消える。
「な、なんだ・・・? 何の魔法だ?」
ロウは戦車の近くに瞬時に移動した。
「さて、どこにいるのか・・・。
・・・・・・ん?」
一瞬、地面の揺れる感覚がする。
「・・・・気のせいか?」
「あんた、なにキョロキョロしてんの。」
千佳がロウに少し近づき、じろじろと見る。
「なんだ? じろじろと。」
「・・・うさんくさい。」
じとーっとした目でロウを見る。
「魔力を回復できるって言うけどさ、
そんなことできる人、他にいないし。
いたら世界中引っ張りだこでしょ?
なんでそれが風飛にいんのさ。」
「まあ、いろいろあってな・・・。」
「もう一つの世界なんて言って、うちらの
ことバカにしてない? こっちは命
かけてんだからさ・・・・・・・はぁ・・・。」
いろいろと言葉を吐き出し、
千佳はため息をつく。
「すっきりしたか。」
「・・・ごめん。律のこと助けてくれたのに。
うちにそんなこと言う資格、ないよね。
だって・・・・・・・・なんでもない。」
ロウから目をそらす。
「なんであんたに話さなきゃいけないの。
・・・なんか変なの。第8次侵攻の
真っ最中で死んじゃうかもしれないのに・・・
初めて会ったやつとこんな話してるなんてさ・・・。」
「よう。」
「あら、音無さん。十分休めましたか?」
「ああ。もう出発するのか?」
「そうですね。服部さんがこの近辺を
偵察中なので・・・彼女が戻り次第、ですね。」
「わかった。」
律は遠目に千佳を見る。
「・・・あのさ、ちょっと聞いていいかな。」
「どうぞ?」
「千佳なんだけど、何か言ってなかったか。」
姫はしばらく考えるが・・・。
「・・・いえ。特に何も。あなたのことを
心配していましたよ。」
「そっか・・・ちょっと様子がおかしかった
からさ。何もないならいいんだ。うん・・・。」