グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「・・・て・・・さい。・・・起きて
・・・・・さい。」
(・・・誰だ・・・?)
「起きてください。死にたいですか?」
ロウはその言葉で、ゆっくりと
目を開けた。
「ここは・・・・・」
「おはようございます。といっても、
寝ていたのは10分ほどですけど。」
ロウに声をかけていたのは梓だった。
「ここはどこだ・・・?」
「神凪神社です。他の学園生はまだ
来ていないようです。本部は先に
撤退したのに・・・。」
デバイスを取り出すが・・・。
「何があったのか・・・デバイスも
通じなくなって、嫌な雰囲気ですね。
どうやら神凪神社の周りだけ。・・・
テロリストの仕業かもしれませんね。」
「てめえ・・・!」
ロウは梓の腕を強くつかむ。
「・・・なんですかその顔。自分は
あなたの自殺を止めたんですよ。
あれを、もう一度見てください。」
梓が指さす先には、巨大なムサシの
姿があった。ムサシの周りでは攻撃音がしている。
「・・・今は、実力ある学園生たちがあれと
戦っています。しかし、あの東雲アイラの
魔法ですら、平然としています。たとえ
あなたのサポートがあったとしても、
勝てる相手ではない。」
「・・・・・。」
「今できるのは、彼女らが無事に脱出
しているのを祈るだけです。」
「・・・いいや、もう助からねえだろ・・・。
少なくとも、智花、怜、夏海はな・・・。」
「どうして、そんなことがわかるんですか。」
ロウは梓の腕をゆっくりと離した。
「南や神凪、岸田は、きっとあなたが
知っているよりも強い。最上級生として
学園を引っ張っているんです。簡単には
やられません。それより、あなた。」
梓はロウに顔を近づける。
「やはり何を知っているか、聞かせて
もらった方がいいですね。」
「・・・そんなに聞きたきゃ、聞かせてやる。
全て、教えてやる。」
<ロウ、説明中>
「・・・・・・・他の人には話さないでください。」
ロウの話を聞いた梓は顔が険しくなる。
「・・・音無も野薔薇も、この戦いで
戦死していた・・・?」
「ああ、そのはずだ。だが・・・」
ともに逃げ延びた律、姫を見る。
「しかしあの二人、ここで生きてますよ。
もう街には戻らないし・・・。」
「いや、音無はあそこで会わなきゃ
今頃どうだったか・・・。それに、
野薔薇もだ。合流したからこそ・・・ってところか。」
二人が話しているところで
律が駆け寄る。
「服部。他のパーティが撤退してきたぞ。」
「! わ、わかりました。会長は無事ですか?」
「ああ・・・なんとかな。ただ、あのバケモノと
戦ったみてーだ。」
「・・・では、南は・・・?」
「南・・・か・・・。」
律の表情が暗くなる。
それを見たロウは顔を伏せる。
「・・・死んだって、聞いた。子供助けて。
せっかく武田会長が来てくれたってのによ・・・。」
「・・・武田・・・武田虎千代ですか!?」
ドォーン・・・・・!
かなり大きな攻撃音が響く。
「今のは、ホワイトプラズマ!? ど、どうして
武田虎千代が・・・。」
「わかんねーよ・・・でも、武田会長の
おかげでみんな避難できたって。」
「・・・そうですか・・・報告、ありがとう
ございます。この男を連れて、すぐに
会長の所に行きます。待っててください。」
「ああ。わかった。」
律はロウの近くに行く。
「あのさ、アンタ・・・アンタのおかげで
あたし、生き残ることができたと思う。
はぐれた千佳とも合流できたし・・・
その、南とか、友達が死んじまったのは・・・」
声が徐々に震え始める。
「・・・悲しいんだけど・・・ほんとさ、
もう自分のことで精一杯・・・つうか・・・」
「・・・・・。」
「・・・うぅ・・・うぅぅ・・・。」
律の目から涙が溢れだす。
「・・・わり・・・だめだ・・・だめだ・・・
なんで・・・なんであたしたち、こんな目に
遭わなきゃ・・・ならねーんだよ・・・・・。」
「音無・・・・。」
「・・・自分だって泣きたいですよ。
・・・来てください。会長に会って
全て話して・・・会長を、助けてください・・・。
協力を、お願いします・・・・・。」
「・・・お前のそんな顔、ここに来て
初めて見たな。・・・・ん?」
地面が揺れるような感覚がした。
「? どうかしたんですか?」
「・・・どうやら、時間切れのようだな。
じき俺は、向こうに戻る。」
「戻る・・・って、どこにですか!
行かせませんよ!」
「どうにもならねえよ。こればっかりはな。」
「・・・多分、そうだよな。顔見たら、わかるぜ。」
「この人がいれば、まだ学園は・・・!」
梓は先のことを考え、諦めきれない。
「拘束します! 動けないようにしてしまえば
もう・・・!」
「無理なもんは無理だ! あきらめろ!
服部梓!」
「・・・!!」
拘束しようとした梓の腕の力が抜ける。
「・・・それでも・・・許しませんよ・・・!
あなたは、自分らに希望を見せたんです!
その責任を取らずに消えるなど・・・
こんなことなら・・・初めから
いなかった方が・・・どんなに・・・」
「・・・ロウだ。」
「え・・・?」
「俺の名前だ。まだ名乗ってなかったからな。」
「・・・いったい・・・」
「今はまだ責任はとれない。だが、
いずれ必ず・・・・・・」
ロウの言葉はそこで途切れた。
街
「・・・・い・・・おーい・・・・」
「・・・・ない・・・よんで・・・
いいかも・・・」
(・・・この声・・・。)
ロウはゆっくりと目を開ける。
「あ、目覚ますぜ。きっと。」
目を開けて見えたのは、律と千佳だった。
二人はロウの顔を覗き込んでいた。
「だいじょーぶか、ロウ。」
「・・・なんでこんなところで寝てるワケ?」
「好き好んでこんなところで寝るかっての・・・
霧の嵐だ。」
「え!? ウッソ、マジで!?」
「じゃあ、今まで裏世界に行ってたのか?」
「そうだ。・・・・悪いが、ちょっと手
貸してくれ。」
ロウは二人の手をつかみ、ゆっくり
立ち上がる。
「・・・ふっ。」
「? 何? どうしたの?」
「・・・いや、なんでもねえ。」
ロウは安心した笑みを浮かべた。
数日後
3月31日
学園
「・・・・すぅ・・・はぁ・・・。」
智花は緊張から何度も深呼吸を
繰り返していた。
「こんにちは。」
「あ・・・朱鷺坂さん。」
「もっと気を楽にしてもいいのよ。今年は
みんな時間が進む覚悟ができている。
元々世界中の時間を停滞させるなんて
無茶苦茶な魔法でしょ? それを
数年も保ったんだから、誇っていいわ。」
「・・・そんな。私、普通の魔法使いですよ。」
謙遜するように、首を横に振る。
「ふふ。それでいいのよ。今日は早めに
寝なさい。起きていても結果は変わらない。
なるようになるわ。」
「はい・・・ありがとうございます。」
数時間後
噴水前
「あ、ロウさん・・・。」
「よう。」
智花はビニール袋を下げた
ロウに会う。
「その、買い物、ですか?」
「まあな。智花は?」
「私は・・・眠れないので、牛乳を買って、
ホットミルクを作ろうかと。」
「・・・明日の心配か?」
「・・・はい。やっぱりちょっと、怖いですね。
何が起きるかわからなくて・・・。」
智花の表情が暗くなる。
「自分で発動した覚えもない魔法ですけど
全世界を巻き込んで・・・そんな大規模な
魔法が解除されたら、何が起きるのかって・・・。」
「・・・なら、電話でもしてこい。
いつでもな。」
「電話・・・深夜でもですか?」
「好きにしろ。」
「・・・ありがとう・・・ございます。
いつもいつも、ロウさんに頼ってばっかりですね。」
「気にするな。」
若干の照れをごまかすように首を触る。
「・・・ありがとうございます。なんだか
安心できました。ゆっくり寝られそうです。
でも・・・何かあった時は・・・電話、しますね。」
深夜
寮
智花の部屋
「・・・・・あ、夏海ちゃん、怜ちゃん・・・。」
智花はもあっとに来た
二人からのメッセージに返事をする。
「・・・ロウさんがいる・・・みんなが
いる・・・大丈夫・・・・・。」
ゆっくりと、目を閉じる。
「何が起きても、大丈夫。」
智花は静かに眠りについた。
そして・・・日付が変わり・・・
4月1日となった。