グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
第295話 ロウ、倒れる
4月1日 深夜
学園
生徒会室
「・・・・・。」
0時を回った瞬間、虎千代、アイラは
少し沈黙する。
「0時を回ったな・・・。」
「時間は、動き出したと思うか?」
「動くじゃろ。この一年、その予感が
あった。とか言って、明日の朝刊で
巻き戻っておったら恥ずかしい~!」
「・・・そうだな。全ては、朝だ。」
朝
校門前
「ふわぁ~・・・今日から新年度だ。
心機一転! 生まれ変わった気持ちで
学園生活を始めような! みんな!」
兎ノ助は新年度ということもあり
気合を入れて挨拶していた。
「はぁ・・・はぁ・・・間に合った・・・。」
智花が息を切らせながら、登校してくる。
「ん? おいおい智花、新年度初日から
ギリギリじゃねーか。っていうかお前が
ギリギリって珍しいな。」
「すみません、ちょっとコンビニに
寄ってたので・・・。」
そう言う智花の手には今日の日付の
朝刊が握られていた。
「まあ、間に合ったからいいぞ。早く
教室に行け。」
「はい・・・・・。」
教室
「怜ちゃん、夏海ちゃん! ロウさん!」
慌てた様子で智花は教室に駆け込んだ。
「ああ、智花・・・。」
「智花、これ見て、これ。」
夏海は持っていた朝刊を見せる。
「あ、私も買ってきたの。日付が
気になっていたから・・・。
・・・ロウさん・・・。」
「ああ、わかってる。」
ロウも新聞を見る。
そこの日付は4月1日。
年数は1年進んでいた。
「動き始めた・・・。時間が、
動き出した。」
生徒会室
「・・・方針は決まった。これまで以上に
ロウの魔物化の防止を急いでくれ。」
部屋にはすでに生徒会のメンバー、
アイラが集まっている。
「心得ておる。」
「薫子。宍戸たちにジェイス・カルマン対策の
指示を。早急に決着をつけるぞ。」
「はい。」
「聖奈。待たせてすまない。レジスタンスに
会おう。現状を説明し、協力を仰ぐ。」
「わかりました。」
指示を受けた薫子、聖奈は部屋を出る。
「・・・第8次侵攻が来ると、確定した
わけじゃないが・・・これからは
来ることを前提で動く。あと5か月だ。
乗り越えるぞ・・・・・全員でだ。」
放課後
寮 ロウの部屋
「とうとう来たか・・・。
・・・俺も、どこかでケリをつけないとな・・・。」
ロウの脳裏に天羽大地の顔が浮かぶ。
「・・・?」
自分の頭を押さえる。
「・・・少し、痛むか? ・・・気のせいか。」
数日後
朝
噴水前
「・・・・うっ・・・。」
ふらふらとした足取りでロウは歩いていた。
「ロウ・・・・ロウ!」
後ろで誰かが読んでいるが、
ロウは気づかない。
「ロウ。」
「!」
肩をたたかれ、振り向いた。
呼んでいたのは花梨だった。
「なしたっきゃ。おらの声、聞こえて
なかった?」
「・・・? 呼んでたか?」
「ずっと呼んでたべ。でもあんた、
フラフラ~って歩いていったすけ。
・・・あれ?」
花梨はロウの顔をじっと見る。
「なんかあんた、顔赤いべか?」
「ダーリーン!!」
二人が話しているところに
香ノ葉が猛スピードで駆け寄ってくる。
「ダーリンダーリンダーリン~!
会いたかったえ~! 急に霧の嵐に
飲まれたと思ったら、やぁっと無事に
帰ってきてくれて・・・もうウチ、想いが
募りすぎて、辛抱たまらんかったわぁ。」
「・・・・・。」
ロウの体が少しふらつく。
「でもほら、部屋に押し掛けるのは
プライバシーに関わるから・・・こう
ぐっと堪えてな。ちゃんと教室で
待ってたんよ?」
教室の窓を指さす。
「それでそれで教室からダーリンの姿
見えて、すっ飛んできたんよ!」
「・・・・ん、ああ、そうか・・・・。」
「・・・ダーリン、どうしたん? なんや
反応が薄いなぁ・・・。」
「それでね、そのおかげで幅跳びの
調子がよくって・・・」
今度は、智花とみちるが通りがかる。
「あ、ロウさん。花梨ちゃんに香ノ葉ちゃんも。」
「ロウ君、またあっち行ってたんだって?
大変だったねー。」
「おお。あんたたちは部活だべか?」
「うん。今から帰るところ。」
「走りすぎちゃってもうヘトヘトなんだ~。
倒れちゃうかも。」
「ええなあ。ウチも運動した方がええやろか・・・。」
香ノ葉は自分のおなか周りを触る。
「ダーリンに、引き締まったウチを
見てもらいたいわ~。」
「あ、あはは・・・陸上部に仮入部してみる?」
「ビシバシしごいてあげる! 夏の終わりには
引き締まるよ!」
「夏の終わり・・・長いわ~。」
「それじゃあ、私たち、部室の鍵を
返してくるから。」
「じゃあね~。」
二人は手を振り、別れていく。
「でもダーリンのため・・・ウチの将来の
ために・・・!」
「体鍛えたいなら、おらの畑作業、
手伝ってみる?」
「・・・・・。」
ロウはふらふらとした足取りで歩く。
「ん? ダーリン?」
「・・・!」
一瞬、倒れそうになるが、
香ノ葉に寄り掛かり、転ばなかった。
「わぁ!?」
「な、なしたっきゃロウ!?」
「・・・ああ、悪い。足もつれただけだ。」
教室に向かって歩こうとするが・・・
バシャーン・・・!
「だ、ダーリン!?」
今度は転んでしまい、噴水に
体を突っ込んでいた。
「ちょ、ちょっとロウ・・・。」
香ノ葉と花梨はなんとかロウを引き上げた。
花梨はロウの額に手を当てる。
「ロウ、すげえ熱だべ。立ってられねえ
くらい・・・。」
「熱!? そんな・・・ダーリンが熱!?」
香ノ葉もロウの額に手を当てる。
「うわ・・・熱いわ・・・とんでもないわ・・・。」
「・・・熱・・・? ・・・そういや
朝からやけに暑いと思ってが・・・。」
ロウの視界がぐらつく。
「・・・・・。」
(くそ・・・だめだ・・・・・。)
「だ、ダーリン・・・。」
目が閉じられ、意識が沈む。
「ダーリン! 死んじゃいやー!」
学園に香ノ葉の叫びがこだました。