グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
数時間後
寮
ロウの部屋
「あ、あれ・・・もうこんな時間?」
看病していた智花がふと外を見ると
すっかり夕暮れ時だった。
「ほんまや。全然気づかんかったわぁ。」
香ノ葉はロウの額の冷却シートを触る。
「冷却シートもぬるくなってしまっとるんよ。
バタバタしとったから・・・」
「あ、それなら私・・・」
「「取り替えようか?」」
二人は同時に手を伸ばした。
「うっ・・・あ・・・。」
「あ、あはは・・・。」
「えと、智ちゃんやる?」
「あ、ううん・・・私は飲み物取ってくるね!」
「そ、そう? おおきに・・・。」
智花は飲み物を取りに、いなくなる。
「・・・ちょっと部屋、暑くなって
きたかな。ダーリン、ちょっと窓、開けるえ?」
香ノ葉はそっと窓を開ける。
「・・・わ?」
「ひゃ!?」
風が勢いよく部屋に入ってきた。
「こ、香ノ葉ちゃん、窓開けた?」
「・・・もしかして智ちゃん、玄関のドア
開けた?」
「う、うん・・・その、空気が悪くなる前に
換気しておこうかなって・・・。
同じこと考えてた?」
「うん・・・・。」
「・・・・・。」
思わず沈黙し、雰囲気が暗くなる。
「あかん、ウチらでこんな変な空気
醸し出してたらあかん! やること
被ってるってのは、ウチらの息が
ピッタリやってことなんよ!」
「うん・・・そ、そうだよね。ちゃんとお互いに
伝えれば、困ったりしないよね。やれることを
分担して、効率よく看病しないと!」
「その、あれなんよ。ダーリンのことでは
ちょっとヒートアップしがちやけど・・・
ウチら、そのためにここにいるんやないんよ。
ダーリンのために協力せな!」
「え、ええと・・・その、私は、その・・・
じゃあお料理作る!」
「ひえ!? ま、待って待って! さすがに
それは・・・。」
慌てる智花を急いで止める。
「手始めにおかゆを作ろうと思って・・・。」
「それ手始めとかそういう問題じゃないんよ・・・!
花梨ちゃんおるし、それは花梨ちゃんに
任せた方がええって。」
「そ、そうかな・・・そうだよね・・・もし
料理が上手でも花梨ちゃんほどじゃないし・・・。」
「そうやえ。栄養も考えてくれるやろうし。な?」
「じゃあ・・・そうだ。氷枕の氷、足しておこうかな。」
「せやせや。他にもやることたくさんあるし
頼んだえ。」
「うん・・・香ノ葉ちゃん、ありがと!」
「ええんよ・・・料理作るの止めてしまって
ごめんなぁ。」
香ノ葉が申し訳なさそうな顔をする。
「そ、それはちょっと残念だけど・・・
ううん、平気。」
「ふふふっ。」
「ふふっ・・・あっ、ロウさん起きてる!」
「え? ああ、ダーリン、もしかしてずっと!?」
「・・・寝すぎてな・・・あと暑い。」
「は、はよ言ってえなあ!」
数時間後
「・・・せんぱい。」
寝ているロウの顔をジェンニが
覗き込む。
「・・・・・ぺた。」
自分の手をロウの額に当てる。
「おでこ、あつい・・・。」
「あ、ジェンニちゃん! ダメだよ、ここにいちゃ!」
「ぼくもかんびょうします。」
「ロウさん、風邪ひいてるの。うつったら
大変だから・・・ごめんね。熱が下がったら
すぐに言うから。」
「・・・ヴォイヴォイ・・・。」
残念そうにしながら、ジェンニは部屋を出る。
「・・・あかんなぁ~。」
ロウの体温を測っていた香ノ葉は
顔が暗くなる。
「香ノ葉ちゃん、どう? ロウさんの様子。」
「これ見て。」
そう言って、香ノ葉は体温計を見せる。
「・・・うそ、こんなに!?」
数値を見た智花は思わず大きな声で
驚いてしまう。
「夜は熱上がる思っとったけど、ちょっと
上がりすぎやえ・・・。」
「どうしよう・・・ゆかりちゃんに
連絡した方がいいかな。」
「お疲れ様。交代に来たよー。」
玄関のドアがゆっくりと開き、
袋を持ったみちるが入ってくる。
「どう? 熱下がった?」
智花から渡された温度計の数字を見て
みちるは驚いた。
「うわぁ・・・・・。」
「大丈夫かな・・・薬、効いてないかも・・・。」
「で、でも熱が出てるのって、体がウィルス
退治してるからなんやろ? ダーリン
戦ってるんよ。なんかサポートできんやろか。」
「・・・ん? あ、そうだ! ゆかりちゃん
推薦のサプリメント!」
袋の中のサプリメントを取り出す。
「え、なんかもらっとるん?」
「来る前に保健室に呼ばれてね。ロウ君のことは
もちろんなんだけど・・・私たちのことも
看病疲れで倒れないか心配してくれてたの。
それで・・・ビタミン剤とか、乳酸菌の
ヤツとかもらってきた!」
「ウチらの心配まで・・・保健委員の
鑑やなぁ・・・。」
「あ、それにね。サプリメント以外いも
いろいろ・・・ここに来るまでにみんなから
預かってきたの。ロウ君にって。」
袋から飲み物などがいっぱい出てくる。
「わぁ・・・スポーツドリンクに、ゼリーに
アイスに・・・たくさん。」
「ほんと、もう腕がパンパンだよ! みんな
我先にって渡してくるんだもん。」
「ありがとう。じゃあ冷蔵庫にしまって
おかないと・・・。」
「あと花梨ちゃんから伝言。おかゆを
持っていくから交代の準備しとけって。」
「交代? ウチ、まだまだ大丈夫やよ。
それにダーリンの食欲ってまだ・・・」
「私も、熱が上がったロウさんを・・・」
二人はいまだ寝ているロウを
心配そうに見る。
「そうは言うけど・・・二人ともすっごい
疲れた顔してるよ?」
「そ、それはダーリンのことが心配やから・・・」
「だめだよ。ロウ君が目覚めたときに
げっそりした二人がいたら・・・ロウ君の
ことだもん。また無理しちゃうよ。」
「う・・・それは・・・・そうかも・・・・・。
・・・わかった。バトンタッチだね。」
「香ノ葉ちゃんもいい?」
「うん・・・ダーリンに何かあったら教えてな?
絶対やよ?」
みちるの手をがしっとつかむ。
「もちろんだよ。また交代してもらわなきゃ
だから、しっかり休んでね。」