グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第298話 早い回復

翌朝

 

「うーん・・・いっぱつ・・・・じゃないもん・・・。」

 

みちるの頭がカクンと揺れる。

 

「・・・ふが? いっけない・・・

 寝ちゃってた・・・・ん?」

 

「よぉ、お目覚めか?」

 

「ロウ君! 目、覚めてたんだ。気分どう?」

 

「ああ・・・昨日よりだいぶ楽になった・・・。」

 

ロウはゆっくりと体を起こそうとする。

 

「あ、起きちゃだめだよ! まだ横に

 なってないと・・・。」

 

「おー、起きたかロウ。」

 

花梨が部屋に入ってくる。

 

「どれどれ・・・うん。昨日より顔色

 よくなってきたっきゃ。おかゆ作ったけど

 食えるか?」

 

持ってきていた鍋の蓋を開ける。

 

「わあ、おかゆにネギと卵がたっぷり・・・

 おいしそう・・・。」

 

「食べる食べる。腹が減ってしょうがねえんだよ。」

 

「た、食べれる? あの、もしあれだったら

 私が食べさせ・・・」

 

「あ、待ってけろ。ロウ、汗ぐっしょりだべ。」

 

「ん、そういえば・・・。」

 

汗で濡れた服を触る。

 

「先に着替えた方がいいねぇ。身体冷えちまうすけ。

 まず汗拭かねえと。タオルはそこに・・・」

 

「タオル、タオル・・・あった! ロウ君

 ここのタオル借りるね。」

 

「ん。」

 

みちるは積まれていたタオルをつかむ。

 

「はい、じゃあ上脱いで! それとも

 手伝ったほうがいい・・・」

 

みちるの言葉が急に止まる。

 

「・・・松島? なしたっきゃ?」

 

「ご、ごめんね! その、ちょっと・・・。」

 

「・・・ちょっと、なんだ?」

 

「ううん! やましいことなんて何もない!

 体拭くだけ!」

 

考えを振り払うように頭を

ブンブンと振る。

 

「よくわからんが・・・別に体拭くくらい

 自分でもできる。タオルくれ。」

 

「でも・・・起き上がるの辛いでしょ?」

 

「んだんだ。こったら時は、もっと周りを

 頼れ。松島がやりにくかったら、おらが

 代わるすけ。」

 

「あ、それなら二人でやろっか? その方が

 罪悪感とか減るじゃない?」

 

「罪悪感? 何言ってんだ? さっきから。

 いや、問題ねえよ。ずっと寝てたから

 少し動きたいんだよ。」

 

「じゃ、じゃあ、ここにタオルと洗面器

 置いておくね。」

 

枕の近くにタオルと洗面器をそっと置く。

 

「・・・・・。」

 

「松島、何してるべ。」

 

「え?」

 

「自分で拭くって言ってるすけ、おらたちは

 外へ出るべ。」

 

「あ! そ、そうだよね! 外に出ないとだよね!」

 

「ロウ、おらんどは部屋の外さいるすけ、

 終わったら声かけてね。」

 

花梨とみちるはロウの部屋を出た。

 

「さて・・・。」

 

ロウは脱ぐためにシャツに手をかける。

 

「辛かったら正直に言ってね。手伝うすけ。」

 

「うお!」

 

「か、花梨ちゃんダメ! 脱いでる脱いでる!」

 

 

 

 

 

 

10分後

 

ロウは再びベッドに横になり、

お粥を食べようとしていた。

 

「ロウ君、お粥熱くない? ふーふー

 しようか?」

 

「ああ、大丈夫。」

 

「喉も乾いたりしてない?」

 

「大丈夫だ。」

 

「なら、いいんだけど・・・ロウ君ってさ、

 すっごい我慢強いじゃない? だから

 こういうときでも、遠慮してるのかなって・・・。」

 

「一日寝ればどうにかなる。」

 

「どう? おかゆ、ちゃんと食えてるか?」

 

花梨は二人の近くに座る。

 

「うん、食べてる。昨日よりは楽みたいだね。

 顔色も戻ってる・・・ていうか、いつも通り

 ぐらいだし。」

 

「食欲あるなら、回復も早いすけ。薄味に

 してるすけ、物足りねえかもしれねえけど・・・

 胃を刺激してはなんねえすけな。それ食ったら

 薬飲もうねえ。」

 

「ああ、わかった。」

 

その間にもおかゆを食べていく。

 

「松島、これロウの枕元に置いといてけろ。」

 

「あ、ロウ君の服、乾いたんだね。綺麗に

 畳んでくれてる。」

 

畳まれたロウの服を受け取る。

 

「んだんだ。ひとまず上から下までの着替え。

 下着は挟んであるすけ。また汗かいたら

 これに着替えさせるべ。」

 

「し、下着!? ごほっ、げほっ・・・」

 

「なしたっきゃ、急にむせて・・・。」

 

「・・・花梨ちゃんって、すっごいね・・・。」

 

「そう? ちょっとお節介なだけだよぉ。」

 

「ううん、そんなことないよ。私だったら

 その・・・・・」

 

みちるの顔が少し赤くなる。

 

「・・・こういうの、恥ずかしくて

 できないなって・・・。」

 

「おらだって恥ずかしいけどよ、誰かが

 やらねばなんねえっきゃ? 周りが助けて

 やれば、その分本人は休むことに集中

 できるすけ。」

 

「・・・ま、ありがたいことだ。あとおかわり。」

 

「・・・確かに元気すぎるべな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

保健室

 

「ゆかりちゃん、ビタミン剤あるー?

 ・・・うわあ、保健室満員だ。」

 

みちるの言う通り、保健室は

人であふれていた。

 

「あ、みちるちゃん。ちょっと待っててね。

 急に体調不良の子が増えちゃって・・・

 去年までとはくらべものにならないわね。」

 

「ふーん・・・やっぱ季節の変わり目だからかなぁ。」

 

「それもあるだろうけど・・・ニュースで

 やってたの。風邪とかインフルエンザの

 件数・・・全国的に増えてるみたい。

 学園だけの話じゃないのよね。」

 

「それってもしかして・・・・・ま、

 またなんか起こってたりするのかな?」

 

「・・・うーん。考えすぎるのはあまり

 よくないんだけど・・・年度が進んだとか

 ・・・ありそうじゃない?」

 

「え? じゃあロウ君が倒れたことも?」

 

「ご、ごめん。あくまで私の推測だから、

 強い根拠はないのよ。ロウ君の場合は

 疲労だって、お医者様も言ってたし。」

 

「・・・そ、だね。今まで倒れなかったのが

 不思議だったもん。」

 

忙しそうなロウの姿が浮かび、

うんうんと頷く。

 

「そうそう。私、心配するのが仕事だから。

 あまり真に受けないでね。ええと・・・

 ビタミン剤だっけ?」

 

「うん。昨日もらった分、飲み切っちゃったから。」

 

「一度に渡せなくてごめんね。こういう

 状況だから予備が少なくて。お医者様から

 処方された薬は飲めてる?」

 

「ばっちりだよ。というかもう普段通り

 って感じで・・・。」

 

寝起きで鍋いっぱいのお粥を

食べきったロウに心の中で少し呆れる。

 

「よかった・・・じゃあ、あとは栄養だね。

 ひとまず一日分渡しておくから。」

 

「ありがと!」

 

「本当なら私も看病したいところだけど・・・

 この状態じゃ保健室を離れられなくて。」

 

人であふれる保健室を見回して

ため息をつく。

 

「だから私の分もロウ君のこと、よろしくね。」

 

「・・・わかった。任せといて!」

 

サプリメントを受け取り、

みちるは保健室を出た。

 

「・・・私達が、支えなくちゃ!」

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