グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
数日後
学園
校門前
「ロウ、アンタって、もう体調は
万全なわけ?」
「ああ。別に問題はねえよ。
んで、何の用だ?」
「決まってるでしょ? クエストよ!
クエスト! すぐ準備して!」
ロウの体調を確認した途端、
天はクエストへと急かす。
「クエスト? 許可は?」
「ちゃんと取ってるわよ。ほら、
執行部権限で。」
デバイスをロウにぐっと近づける。
「ならいいが、なんでそんなに急ぐんだ?」
「フッフッフ。実はデウス・エクスが
一歩完成に近づいたのよ。だから
データ採取を兼ねて実射しに行くってわけ。」
「その割には、見た目はあまり変わってないな。」
「・・・べ、別に外見は変わってないわよ。
デザインには影響してないから。
クエスト中にじーっくり説明してあげるから
おとなしく聞いてなさい。」
屋上
ロウの様子をアイラが上から
覗き込んでいた。
「少年め。平気な顔をしておるが・・・
本当に異常はないのか?」
近くにいたゆかりに尋ねる。
「医学的にはね。ただ、倒れたのは
見過ごせないわ。精神的も体力的にも
もしかしたら・・・っていう心配は
あるわよ。ロウ君自身、いろいろあったし・・・。」
ロウの様子を見てため息をつく。
「ただ厄介なのが、今、如月さんと
出て行ったように・・・ロウ君にとって
クエスト自体が気分転換になって
いそうなことなのよね。」
「ワーカホリックか、どうにもならん問題から
逃げるためか・・・ムサシ化の問題は
少年一人ではどうにもならんゆえな。
今はせいぜいストレスから逃げてもらうとしよう。」
「・・・大丈夫? 進展してる?」
「どうにかなったわ。人がムサシになる
瞬間を記した資料がな。」
「ホント!?」
「嘘ついてどうする。まあ今、分析して
おるところじゃ。問題は遠からず解決する。
それまで、少年には元気でいてもらわんとな。」
「そうね・・・まあ・・・一度倒れたから、
無茶はしないと思うけど・・・私も
気にかけておくわね。」
生徒会室
「また集まってもらってすまないな。やっと
諸々の手続きが終わった。」
虎千代、つかさ、鳴子、ましろは
今後の説明のため、再び集まっていた。
「すでに全校生徒に通達済みだが、
グリモアは今後、正式に卒業生の軍隊を
持つ。それにあたって、詳しい制度の説明をする。」
「説明役が貴様で大丈夫なのか?」
「む、言うじゃないか。アタシも成長して
いるんだぞ? 薫子から台本を預かっている。
心配するな。」
取り出した台本をぺちぺちと叩く。
「とりあえず、僕たちの所属は執行部に
なるってことでいいのかい?」
「ああ、その通りだ。だが生徒会長を続ける
アタシは生徒会所属のままだ。生徒の代表である
生徒会長が執行部所属だと、生徒自治に
支障が出るからな。そういうわけで、少し
微妙な立場になるが・・・そこは調整していく。」
「学園生の間はクエストを請けていましたが・・・
これから、どうなるのですか?」
ましろは少し不安げに尋ねる。
「精鋭部隊と同じだ。通常のクエストより
難易度の高いものを優先する。それ以外は
これまでと変わらない。制服もそのまま
着用してもらう。部活動も所属して
もらっていい。」
「ああ、そうそう。報道部の部長は夏海に
引き継いだから。これから、緊急で
放送設備を使う際は、夏海に言ってくれ。」
「わかった。他に、委員会は脱退となるが
このメンツでは関係ないな。まあ、後は・・・
執行部所属になったから、執行部の
施設には入り放題だ。念のため、伝えておく。」
「・・・・・へえ。」
鳴子は思わずニヤリと笑う。
「興味ないな。説明は終わったなら、
私は行く。」
気だるそうな顔をしながら
つかさは部屋を出る。
「なにせ初めてのことだ。これから
疑問も出てくるだろう。その時は
何でも聞いてくれ。確認する。」
「・・・まあ、クエスト回数が増える
くらいかな。イメージとしては。
面倒なことにならず、ほっとしたよ。」
「料理部に残ることができると聞いて
安心しました。」
「よし・・・じゃあ、次の予定が
あるから、アタシも出る。」
卒業生に大きな変化がみられる中、
数日前、また別の変化が起きていた。
数日前
結希の研究室
「・・・数人の生徒に関して、総魔力量の
上昇が見られる。訓練で増える平均値を
はるかに上回っているわ。」
「魔法使いじゃない私の魔力量も上がってる。」
表示されたデータに結希と天は
目を大きく開いて驚く。
「時間が停滞していた成長分が
一気に反映された可能性は?」
「十分あり得るわ。でも、検証する時間は
ない。今月は中国に行く。そして
来月は・・・できれば、宇宙に行きたい。」
「そうは言っても、NASAは無理だったんでしょ?
ジェイス・カルマンの文書が間ヶ岾による
ものだったって言っても・・・また交渉を
始めて、そんなすぐに行けるわけないじゃない。」
「まだルートはある。NASAの中にも
協力してくれる人材はいるわ。宇宙開発に
意欲的なのは、アメリカだけじゃない。」
天は結希の意図に気づく。
「・・・まさか、清ロ魔法学園で?」
「マッタと我妻梅、ジェンニ・コッコ、
コズミック・シューター・・・それと
李さん、雀さんから周万姫・・・事情を
知る始祖十家がこんなにいる。」
関わりのある始祖十家の名を挙げていく。
「なら、マッタより国政に深く関わっている
ロシアのイエヴレフ姉妹。このルートから
ロシアと交渉できるわ。」
「・・・ここまでやって、なにもありません
でしたじゃ済まないわよ。」
「その時は、責任を取る覚悟はできているわ。」
「やめてよ。アンタがいなくなったら、
どれだけの仕事が私に来ると思ってんの。」
「安心して。私は確信している。今の状況で
宇宙に行って、何も成果がないなんて
考えられない。・・・何かがあるはず。
今後の情勢を変えうる何かが。もう、
私達が足を踏み入れていない場所は宇宙だけよ。」
「地球上にも、他にあると思うけどね。
南半球の大半とか。」
「今は南半球より、宇宙。」
間髪いれずに結希は言い切る。
「・・・ったく、こうなったらテコでも
動かないんだから。」
呆れからため息をつく。
「ああもう、好きにしなさいよ。その間
こっちはなんとかしとくから。総魔力量に
ついて、他の地域の魔法使いがどう変化
したのか調べるわ。グリモアだけじゃなかったら
安心でしょ?」
「・・・ありがとう。」
「ったく。せっかく、デウス・エクスの開発が
進んだってのに・・・言っとくけど、
デウス・エクスの実地実験は最優先でやるからね。」
「ええ。かまわない。お願いね。」