グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第302話 中国へ

カフェ

 

「はぁ・・・やる気出なーい・・・・・。」

 

「お前なー・・・。」

 

千佳と律は飲み物に手を付けず、

テーブルに顔を伏せていた。

 

「・・・・・・あたしもでねー!

 あんなこと聞いたらよー・・・。」

 

律は深くため息をつく。

 

「しかも戻ってきたあと、ロウのヤツが

 ぶっ倒れるし・・・アイツ、大丈夫

 だよな?」

 

「もう元気になってるし、大丈夫だと

 思うけど・・・。」

 

「お待たせしました。いやー、季節の

 ケーキは時間かかりますねえ。」

 

トレーにケーキを乗せ、ほくほく顔で

ゆえ子が席に着く。

 

「先生、席で待っててもよかったのに。」

 

「楽しみで待ちきれなかったのです。」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それで、裏世界の第8次侵攻で

 お二人が生き残ったと。」

 

二人はロウから聞いた話を

ゆえ子に話した。

 

「ロウはそう言ってる。」

 

「うちってさ、第8次侵攻だと

 死んじゃってんだよね。」

 

「え、マジ?」

 

「んでさ、律とロウと一緒に逃げて

 生き残った・・・ってんなら万歳

 だけど・・・ロウの話だけだと、その後

 どうなったかってわかんないから。」

 

「っていうか、霧の嵐で行ったってことは

 もう一生わかんねーんだよな。」

 

「それは興味深いですね。」

 

ぐいっと、ゆえ子は顔を近づける。

 

「興味深いってどういうこと?」

 

「SF用語でパラレルワールドというものが

 あります。例えば、ゆえが今食べている

 このケーキ・・・。」

 

ケーキをちょんちょんと指さす。

 

「これを全部食べるか、残して食べるか

 という選択があるとします。」

 

「ふんふん。」

 

「そして食べた場合、ゆえはいつも通りに

 過ごすのですが・・・もしケーキを

 残した場合、摂取しなかった分の栄養が

 欠乏し、餓死します。」

 

「いや、それはねーだろ。」

 

「そうですね。さすがにゆえも、そこまで

 貧弱ではありません。と、誇張しましたが

 食べた場合と食べなかった場合で未来は

 変わります。その時、もう一つの選択を

 していた世界がどこかにあるかもしれません。

 それが、パラレルワールドです。」

 

ゆえ子の説明に千佳は顔をしかめる。

 

「・・・なんか難しくない? そのもう一つの

 世界って、どうやったら見られるの?」

 

「見ることができないので、誰も証明

 できませんでした。しかしこの世界には

 ゲートが存在します。ゆえ達はすでに

 『第8次侵攻で魔物に敗北した世界』を

 知っているのですよ。」

 

「・・・その、あたし達が死んでる世界の

 過去で、あたし達が生き残った・・・・・。」

 

「・・・やば、うち熱出てきたかも。

 理解するので精一杯だわ・・・。」

 

「・・・あたしが生き残ってる世界か・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

学園

 

噴水前

 

「・・・・・卒業年度になっちゃった・・・。」

 

不安な顔をして、智花は

ベンチに座り込んでいた。

 

「学園生活も、あと一年かぁ・・・。なんか、

 変な感じ。っていっても、私の魔法

 なんだけど・・・ホントに、私の魔法

 だったのかな・・・・・。」

 

頭を押さえ、顔がうつむく。

 

「望んだら、もう一度、時間停止の魔法

 使えるのかな・・・。」

 

「使えるわよ~。」

 

いつの間にか智花の近くにいた

あやせが声をかける。

 

「・・・え、海老名さん?」

 

「こんにちは~。」

 

「はい・・・えっと・・・。」

 

「中国行きの準備はできた?」

 

「あ、はい。後は足りないものを購買で

 買うだけですね。」

 

急にあやせがいたことに驚いたため、

しどろもどろに返事する。

 

「そう。わたしはまだぜ~んぜん。急いで

 やらなくちゃ。・・・・・。」

 

あやせは智花の目をじっと見る。

 

「アイダからあなたへ、伝言があるわ。」

 

「え? アイダって・・・。」

 

「始祖十家のアイダ・リーヴス。

 『過去を見て、未来を見て、そして今を見て。

 その上であなたが一番どうしたいのかを

 決めて。きっとそれが一番正しいから。』」

 

「・・・始祖十家のリーヴスさんが、

 私に・・・?」

 

「アイダはグリモアのことをよく知ってるのよ。

 ・・・あなたたちのことを。ずっと見てきた

 みたいね。」

 

「見てきたって・・・どうしてですか?」

 

「それはわたしにも教えてくれないの。」

 

あやせは寂しげに首を横に振る。

 

「でも、わたしは昔、アイダと少しだけ

 一緒に暮らしたことがあるの。わたしは

 アイダのことを信頼している。だから

 この言葉もきっとあなたの助けになると思うわ。」

 

「・・・よく、わかりませんけど・・・

 もしかしてそれって、私が子供・・・」

 

「ほれ、もう忘れ物はないな?」

 

「ないー!」

 

二人が話しているところに、ミナと恋が

通りがかる。

 

「そう言って、すっぽり抜けとるんじゃから

 もう一度確認するぞ。」

 

「我がないっていってるのに!」

 

ミナはふと、あやせと智花を見て

立ち止まる。

 

「・・・・・・・あれ? そういえば・・・

 卒業してたっけ?」

 

「なーにをぐずぐずしとる。行くぞ。」

 

「はーい・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

10日後

 

中国 上海

 

「うーん・・・・・。」

 

小蓮は誰かを探すように

キョロキョロする。

 

「しゃおれーん、なにしてるのだー?」

 

小蓮の様子が気になり、

明鈴が駆け寄る。

 

「万姫がいると思ったのだガ、まだ到着

 してないみたいネ。」

 

「万姫が? どうして? 学園にいるんじゃないの?」

 

「来る前にちょっと言っておいたのヨ。

 万姫なら来るはず・・・。」

 

「・・・・・。」

 

二人の様子を物陰から見つめる

女性の姿があった。

 

「ぐぎぎ・・・小蓮め、ワタシを挑発する

 なんていい度胸なのネ。かくなるうえは

 ヤツらが気づいてないうちに開門殺法で・・・」

 

「万姫。モイ。」

 

「どへぁっ!?」

 

隠れていた女性、万姫は

後ろからジェンニに声を掛けられ、

驚いて飛び上がる。

 

「ジェ、ジェンニ!? アナタも来てたのカ!?」

 

「せんぱい、万姫です。」

 

手を引いて、ロウを連れてくる。

 

「なんで始祖十家がそんなとこに・・・」

 

「しー、しー・・・小蓮たちに気づかれる

 じゃないカ。とりあえず、ヤツらに

 見つからないところに行くネ。

 生徒会長はどこヨ?」

 

「・・・まあ、それならこっちだ。」

 

 

 

 

<ロウたち、移動中>

 

 

 

「初めまして、周万姫。」

 

「タケダトラチヨ。よく来てくれたナ。」

 

対面した虎千代と万姫は

握手を交わす。

 

「・・・始祖十家はみんな、日本語が

 堪能なんだな。」

 

「なかなかダロ? ワタシたちはよく梅の

 家に集まるからナ。」

 

「ん? じゃあ、日本にはよく来ているのか。」

 

「よく、というほどでもないネ。まあ、

 そのあたりはおいおい話すとするネ。」

 

「浅梨のいえ、ヤパニのことばじゃないと

 だめです。・・・あれ? 浅梨が呼んでる。」

 

手を振っている浅梨を見て、

ジェンニは駆け出していく。

 

「ジェンニ! アナタ、一通り観光したら

 学園まで来るのヨ!」

 

「キュッラー。」

 

「・・・そういうことで、アナタを含めた

 何人かは、早速、我が学園までお越し

 願いたいのヨ。」

 

「ああ、わかった。・・・そうだ。北海道の

 ことについて、礼を言わせてくれ。あの

 魔法が無ければ、苦しい戦いになっていただろう。」

 

虎千代は丁寧に頭を下げる。

 

「気にする必要ないネ。あれでワタシは恩を

 売ったのヨ。ちゃあんと小蓮に借りを

 帰してもらうネ。」

 

「・・・そ、そうか?」

 

「それより、そちらの学園生は戦う準備は

 できているカ?」

 

「戦う準備?」

 

発言の意図がわからず、首をかしげる。

 

「そうヨ。アナタ達が日本から出ると、

 行先を魔物が襲うネ。上海も襲われるかも

 しれないカラ、しっかり準備しておいてネ。」

 

「・・・はは、手厳しいな。」

 

「冗談ではないネ。本気で言っている。

 我々はリアリストだヨ。ハワイ、ロンドン、

 ニュージーランド、オキナワ・・・

 警戒するには十分な回数ヨ。そのために

 街に軍を展開しているネ。」

 

横目で警戒態勢が整う街を見る。

 

「・・・そこまで警戒するなら、なぜ

 アタシたちを受け入れたんだ?」

 

「もちろん、アナタ達と仲良くなるのは

 それだけのメリットがあるカラ。

 リスクを負うだけのメリットが。」

 

万姫はにやりと笑う。

 

「けれど安心してネ。魔物なんて来なければ

 それが一番なのは間違いないヨ。たとえ

 来たとしても、追い散らすくらいの備えは

 している・・・それを伝えておきたかったのヨ。」

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