グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
討伐完了翌日の夜
上海市内
「いや~よかったな。これだけ魔物が
襲ってきて、街がほとんど壊されなかったなんて。」
被害の少ない街の様子を見て
兎ノ助はしみじみと言う。
「おそらくはロウ君のおかげ。魔物が
彼を狙って、周りの人間や建造物への
興味を失ったから・・・。」
今回の原因を結希は冷静に分析する。
「・・・でも理由がわからないわ。
やはり彼が・・・」
「ドクター。」
分析する結希に万姫が声をかける。
「・・・万姫。初めまして。」
「ニイハオ。小蓮からこちらの条件は
聞いてるカ?」
「ええ。随分・・・考えざるを得なかったわ。」
「そりゃそうヨ。宇宙開発は我が学園が
中心となる一大プロジェクトだヨ。」
「・・・そうなの? 学園が主導しているの?」
「中国とロシア、もとは仲悪かったネ。
その二国を結び付けたのが魔法学園。」
「・・・じゃあ、実質的な交渉相手は
・・・あなたたち、魔法使い・・・。」
結希の顔が険しくなる。
「その通り。エルベシアから聞いた限り、
強気な交渉が持ち味のようだケレド・・・
金と設備と人を使う以上、これは商売の話。
おいしい話を期待してるネ。」
「・・・回収したデータを渡すのは
いいけれど、最初に調査するのは私達よ。
そこは譲れない。」
「では代わりに何を差し出すか、考えて
おくことネ。」
そう言い残して、万姫は去っていった。
「・・・万姫は金勘定にうるさく、また
清ロ魔法学園を代表するという自負が
ある。そのプライドを突くか、彼女の
想定を上回る利を提示するか・・・。」
結希は万姫の背中をじっと見る。
「こっちだってマッタから、あなたのことは
聞いてるのよ。交渉はこちら優位に
進めさせてもらうわ。」
「あーあー。」
兎ノ助は首を振って、耳をふさぐ。
「・・・何をしているの?」
「俺は何も聞いてないからな! お前ら
俺の前で秘密っぽい話しすぎ!
もっと秘密の場所でやれよな!」
「秘密の場所とは、どこのこと?」
「知らん!」
数日後
戦いを終えた生徒たちが
続々と集まっていた。
「みんなー。魔物とたたかって、
おつかれさまでしたー。」
壇上にいる寧々がみんなを労う。
「それでね、いったんあの・・・
なんだっけ・・・。」
「掃討終了の通達、です。」
薫子が寧々に耳元で囁く。
「そーとーしゅーりょーしたので、
えーっと・・・いったん、お休みでーす!
遊びにいっていい日!」
「今回の共同作戦で得た信頼を失わない
よう・・・学園生として、節度ある
行動を心がけてください。以上、解散。」
「わーい! ネネ、上海タワーにいくー!」
話を終えると、寧々はさっさと壇上から降りた。
「・・・あ、生天目。アンタさん、どこ
行くんですか。」
なぜだか殺気立つつかさに風子は
声をかける。
「周万姫はどこだ。」
「・・・探してどーするんです?」
「知らんのなら用はない。」
そういうとすぐに風子の前から
いなくなった。
「おーおー・・・国際問題にならねーよーに
してくだせーよ。」
「ったく、あいつも相変わらずというか
なんというか・・・。」
「ああ、ロウさん。討伐お疲れ様です。
今日はのんびり街歩きですか?」
「ああ、その予定だ。」
「けっこーですね。あ、でも気を付けて
ください。その先の道は・・・」
「あ! ロウ!」
ロウを見つけた月詠が駆け寄ってくる。
「アンタ今日はどうすんの?」
「ま、適当にその辺ぶらつくかと
思ってな。」
「ふふん。どうせ忙しくて名所の下調べ
なんかしてないでしょ。どーしてもって
言うなら、ツクのプランに便乗させて
あげてもいいわよ。」
「あーっと、アンタさんたち、その先に
行くなら注意してくださいね。」
風子は目の前の道を指さす。
「・・・え? なんで?」
「いえね、貸衣装屋があるんですよ。
観光客向けの。チャイナドレスや武将の
衣装を借りられるよーでして・・・」
「へえ、面白そうじゃない! 焔と浅梨にも
着せたいわ。」
わくわくさせながら月詠は
貸衣装屋に向かう。
「店の前で白藤が張ってますよ・・・
って、教えようとしたんですけど・・・。」
「あいつもよくやるな。」
「通りすがりの生徒に着せ替えして
遊んでるらしーです。・・・実は、
ウチも衣装予約しておいたんですよね。」
「珍しいな。そういうのに乗るなんて。」
「三国志が好きでしてね。」
「・・・ロウさん、ここにいらっしゃいましたか。」
何か企んでいるような笑みを
浮かべながら、沙那がやってくる。
「沙那か。どうした?」
「この先で衣装が借りられるので、初音様が
ロウさんも連れていけ、と。」
「お前もかよ。」
「いかがでしょうか? 差し支えなければ、是非。」
「・・・なんか貸衣装屋、混みそーですね。
そしたら、ウチは客足が落ち着くまで
生天目の様子を見てきます。」
つかさが通った場所を確認する。
「周万姫を探してたんで、ちょっかい
出さねーか確認しないといけません。」
「生天目さんが、ですか? それは・・・
少し心配ですね。」
「まあ、あいつも今やらかすとも
思えないけどな。」
「いちおーですよ。またあとで。ロウさん
着替えたら見せてくださいねー。」
「「・・・・・。」」
「・・・え、俺も?」
「・・・では、ロウさんはだれの衣装に
いたしますか?」