グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第30話 ドーナツの誇り

風飛市 街

 

「うーん・・・入るべきか入らざるべきか・・・・。

 でも夢の百円均一・・・これを逃したら・・・。」

 

ドーナツ屋の前で

1人うんうんとうなっていた。

 

「どうかしたのか? ブルームフィールド。」

 

「え・・・? !?

 ろ、ロウ君!」

 

驚きで飛びのく。

 

驚きすぎだろ・・・・。

 

「は、恥ずかしいところを・・・・。

 お、お買い物か何かですか?」

 

「いや、ゲーセンで景品を取りつくしてな。」

 

大きな紙袋を抱えている。

 

「そ、そうなんですか・・・・。」

 

「で、何してたんだ?」

 

「その・・・寄り道をするつもりは

 なかったんですけど・・・・。

 ここのドーナツ屋、いつも歓談部の

 みんなで来るんです。」

 

目の前の店を指さす。

 

「へえ・・・。」

 

「それで、今日、いつもより安くなるんです。

 安いのでいっぱい食べたいんですが、

 甘いものをたくさんは・・・・。」

 

じーっとロウを見つめる。

 

「どうした?」

 

「もしかして、ドーナツお好きですか?

 10個くらい食べられたり・・・。」

 

急にロウの手をがっちりと

つかむ。

 

「あ! ご、ごめんなさい・・・。」

 

「別に気にしてない。」

 

「あ、で、でしたら、その・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

ドーナツ屋 店内

 

「これと、これと・・・あ、新しいの

 出てるんだ。復刻も・・・定番も・・・。」

 

ずいぶん食うな・・・。

 

「変わり種も捨てがたいなぁ・・・

 あ、何か食べたいものはりますか?

 誘ったのは私なので、ごちそうしますよ。」

 

「あんまりドーナツ食べないんだよ。

 まあ、ブラックコーヒー2杯ぐらいで。」

 

「そうですか・・・・。あの、もしかして

 甘いものあんまりお好きでは・・・。」

 

「いや、別に問題ない。

 それに・・・・ずいぶん買ったしな。」

 

トレイの上は

ドーナツでいっぱいになっている。

 

「あ、あははは・・・。」

 

 

 

<ロウ、エミリア席に移動>

 

 

 

 

「うぅ・・・こんなにたくさん・・・。

 止めてくれれば・・・。」

 

「なんか言ったか?」

 

「え? いや、なんでもないです!」

 

少し顔を赤くする。

 

「き、気を取り直して食べましょう!」

 

「ああそうだな。」

 

そう言って近くにあった

チョコレートのドーナツを

手に取ろうとする。

 

「!! ああ、だめ、だめです!!」

 

急に慌て始める。

 

「何がだ?」

 

気にせずドーナツを

口に入れようとする。

 

「とにかく待ってください!

 一番最初はプレーンから!そのために

 二つ買ったのに!」

 

「あ、ああ・・・。」

 

迫力に押され、手に取った

ドーナツを元に戻し、

プレーンを手に取る。

 

「お、大声あげてごめんなさい・・・。

 でもこれは譲れないから。

 ブルームフィールドの誇りにかけて

 ドーナツはプレーンから!」

 

ブルームフィールドの誇りの

印象変わったな・・・。

 

「にしてもなんで最初は

 プレーンなんだ?」

 

「だってだって、ほかのものからだと

 口の中に味が残るでしょう?」

 

「まあそうだな。」

 

「はじめならなおさらプレーンを食べるべきなのよ!」

 

「悪かったよ。とはいえブラックコーヒー飲んだから

 口の中に甘いのがほしくなったんだよ。」

 

「そ、そうだったの・・・。」

 

「そういや、今敬語じゃないな。」

 

「う~ん・・・・まあいいや。

 日本の敬語って難しいし。」

 

少し開き直る。

 

「こういったらなんだけど、私みたいな

 異邦人は敬語くらいがいいのよ。」

 

「そういうもんか。」

 

「そうなのよ、小さいころからね、社交界って

 言うのかな。大人世界みたいなの。」

 

「あああれか。」

 

「? 知ってるの?」

 

「んまあいろいろあってな。」

 

「とにかく、そこで身につけた

 いわば処世術なのよ。」

 

「なるほど。」

 

ブラックコーヒーを一口含む。

 

「あ、ごめんね? 愚痴みたいになっちゃって。」

 

「気にするな。」

 

「・・・ふぅ、というわけで。」

 

「?」

 

「もう、ロウ君には敬語、やめるね?

 面倒くさいし、・・・デートもしたし。」

 

「最後なんて言った?」

 

「え? ううん、気にしないで?

 これからは本音でってことで。

 改めてよろしくね。」

 

にっこりとほほ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園 校門前

 

ほかにも用事があるという

エミリアと別れ、ロウは

寮に戻ろうとしていた。

 

「おーい!」

 

「ん?」

 

「見ぃつけた! もう、やっと

 見つけたわぁ~。」

 

「?」

 

青い髪の生徒が

ロウの腕に抱き着く。

 

「うち、あの日からあんさんの

 こと、ずっと探してたんよ?」

 

この京都弁どこかで

聞いたような・・・・。

 

「・・・・ああ、あの時のか。」

 

「!! 覚えていてくれたん!?

 なぁなぁ、今から時間空いとったり

 せえへん?」

 

「空いてないわけじゃないが・・・

 荷物を置いてきてからでいいか?」

 

「うんうん! ええで!」

 

 

 

 

 

<ロウ、荷物を置きに>

 

 

 

 

「さて、じゃあ行くとするか。」

 

「よ~し、行くで~!」

 

 

 

<ロウ、香ノ葉、移動中>

 

 

 

 

喫茶店

 

ロウの前に

ブラックコーヒーが置かれる。

すぐに手に取り、口に含む。

 

「どや? うちが愛をこめておごった

 コーヒー、おいしい?」

 

「ん・・・ああ、まあな。」

 

「そかそか。それならめっちゃ

 うれしいわ~!」

 

コーヒーを飲むロウを

じっと見つめる。

 

「どうした?」

 

「んふふ~、あんさん、見れば見るほど

 かっこええなぁ~。」

 

「あんまり言われたことはないな。」

 

というか言われる環境でも

なかったしな。

 

「え~? うそやろ?」

 

「本当だよ。」

 

コーヒーを一気に飲み干す。

 

「まーあれや、会うたばかりやけど、

 うちはあんさんと、仲良うしたいと

 思うてるんよ。」

 

香ノ葉はロウの隣に座り

腕に抱き着く。

 

「せやから、これからもよろしゅうな?」

 

「ああ。」

 

「・・・できれば、末永く、な?」

 

「なんか言ったか?」

 

「んもう、ダーリンのいけず!」

 

思い切り背中をたたく。

 

「いって・・・。」

 

ダーリン?

 

「あっ、ロウさん!」

 

「ん・・・? ああ、南か。」

 

たまたま来ていた

智花がロウに声をかける。

 

「偶然です・・・ね・・・。」

 

香ノ葉の姿を確認すると

少し言葉が詰まる。

 

「? どうした?」

 

「え・・・あの・・・・し、

 失礼しました!!」

 

勢いよく出て行った。

 

「?」

 

「智ちゃん?」

 

(あの反応・・・まさか・・・。)

 

若干香ノ葉の表情が険しくなったが

ロウは一切気づかなかった。

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